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日々の泡 の商品レビュー

3.8

77件のお客様レビュー

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2016/02/16
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

読み始めと読み終わりでは全然印象が違う小説。 最初はシュールだなあ、なんて笑いながら読んでいた。 けれども、現実と非現実が絡み合い混じりあうように紡がれる文章が、どんどん笑えなくなってくる。 シュールというよりサイケデリック。 好き勝手に生きているように見えて、生きていくための手段を全くもたない登場人物たち。 奔放に生きるというよりも、緩やかに死んでいくかのように。 自覚のない自傷。 彼らが痛ましくてしょうがない。 自分を生かすことすらままならないクロエ。 クロエを支えたいのに、気持ちばかりでなんの力もないコラン。 ふたりの生は、どんどん小さく儚くなっている。 しかしそれよりも、シック。 彼は自分が破滅に向かっているのを知っていながら、自分の力では止められない。 だからアリーズから離れようとするのだが、それに対してアリーズの取った行動。 シックとアリーズの、気持ちのかけ違いが哀しい。 警察が踏み込んできたとき、シックの心の一部は解放されたんではないだろうか。 現実と非現実の入れ替わりが、よい意味で引っかかる。 咀嚼するのに時間のかかる文章だ。 そして、私が読んだこの本は、訳が古い。 それがまあ、いい意味で味になっている部分もあるのだけれど、やっぱりこれはちょっと古すぎるような気がするので、これから読もうと思っている人は早川書房や光文社古典新訳文庫で出ている新しい訳『うたかたの日々』の方で読んだ方がいいかもしれません。 新訳読んでないから断言はできないけど。 この本の訳の古さって、例えば “電気オーヴンの指針は、七面鳥の焙り焼きにあわせてあり、『ほぼよろし』と『ちょうどよろし』とのあいだを揺れ動いているところだった。もうそろそろ取り出す時間だ。ニコラが緑色のボタンを押した。知覚接触子が始動して、ひっかかりもせずにすべりだすと、その瞬間に指針は『ちょうどよろし』に到達した。” 1970年って、こんな言葉使ってました?古すぎません? 知覚接触子って、センサーってことだよね。1970年にはない言葉だったのか。 ちなみにデューク・エリントンのレコードをかけるのは“電蓄” 古くない? さすがにステレオとかレコードプレーヤーって言ってませんでしたか? いろんな意味で面白かった。

Posted byブクログ

2015/09/23

ハツカネズミは太陽の光線とダンスを踊り、 空気中には恋が流れている。 黄色と紫で彩られた婚礼の花嫁は、 やがて胸に大輪の蓮の華を宿して病に臥せる。 一歩踏み出せばたちまち花畑が足元に広がるかのように、 ボリス・ヴィアンの筆は彼だけの世界を描き出す。

Posted byブクログ

2015/07/25

読みながら、自分の加齢をひしひしと感じた。昔読んだ時は描写の美しさと、コランとクロエ可哀想!みたいなピュアな感想しかなかったのに、今読むと「お金が無いって本当にツラいよな〜」みたいな感想になってしまう(恋愛部分はさして……。アリーズの肩を持ちたい)。 果たして労働は尊いのか卑し...

読みながら、自分の加齢をひしひしと感じた。昔読んだ時は描写の美しさと、コランとクロエ可哀想!みたいなピュアな感想しかなかったのに、今読むと「お金が無いって本当にツラいよな〜」みたいな感想になってしまう(恋愛部分はさして……。アリーズの肩を持ちたい)。 果たして労働は尊いのか卑しいのか。金が無いと人間的文化的な生活は出来ないという絶望感。俺をすりこぎにしちまった奴!そいつはだれだ!だれなんだ!hey you !(from ヘイ・ユー・ブルース) 昔も今も、イケメン料理人のニコラが好き。

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2015/03/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

なぜか村上龍の「だいじょうぶマイフレンド」を思い出しました。テンポ感が似ているのかな? 森永チョイスってまだ発売されているんでしょうか?? あれ、アイスクリーム挟んで冷やしておくと、めっちゃ美味しいんだよね~

Posted byブクログ

2015/02/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

◆ほんとうに大切なものは、かわいい少女そのものと、彼女との恋愛だけなのに…。生まれたままが一番素敵なのに…。この「なのに…」がとてもつらい。美しく儚く苦しい物語。シャンパンの泡のようなJazzと諧謔に酔いしれながら静かに世界に失望していく。 ◆曾根元吉訳(1970)。ハヤカワepi文庫・伊東守男訳(1979)と読み比べ。◆最初はハヤカワ伊東訳より硬く古めかしい訳に思えたが、読んでいくうちに気にならなくなる。ハヤカワ版に比べて言葉遊びを拾っている率も少ないが、その分、見え隠れする時代の思潮・空気感がより鮮明に訳出されているように思われた。 ◆ハヤカワ版小川洋子の解説よりも正統派の解説で、読解の役に立ち、ありがたかった。

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2015/01/20

影絵のような本 恋愛とジャズ以外のものは消え失せたっていい、醜いんだから と断言した作家、ボリス・ヴィアン。 この言葉通り、この作品の中では人々が醜く残酷でコランとクロエ、ニコラとイジス 愛する人がいる彼らだけが美しかった。 また、労働をしてボロボロになっていくコランを...

影絵のような本 恋愛とジャズ以外のものは消え失せたっていい、醜いんだから と断言した作家、ボリス・ヴィアン。 この言葉通り、この作品の中では人々が醜く残酷でコランとクロエ、ニコラとイジス 愛する人がいる彼らだけが美しかった。 また、労働をしてボロボロになっていくコランを通して、彼がどれほど労働を否定しているかがよく伝わる。全く効率の悪い、誰がやってもかわらない、すり減らすだけの行為。

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2013/12/08

頭の中が色んな絵でいっぱいになった。家が丸くなるのとか、小さくなって行くのはとても微笑ましくて悲しかった。いい作品

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2013/10/26

容姿端麗、有り余る資産、そつのない社交性。 コランの優雅な愛と凋落の日々。 シュールで戯画的な描写。 美しくもあり、残酷でもあります。そして滑稽なのです。 美しい悲痛な愛の物語の裏に、持たざる者の鬱屈を、シニカルな視線を感じます。 愛を失い貧乏になったコランは無邪気に問います。 ...

容姿端麗、有り余る資産、そつのない社交性。 コランの優雅な愛と凋落の日々。 シュールで戯画的な描写。 美しくもあり、残酷でもあります。そして滑稽なのです。 美しい悲痛な愛の物語の裏に、持たざる者の鬱屈を、シニカルな視線を感じます。 愛を失い貧乏になったコランは無邪気に問います。 何も悪いことをしていないのになぜ?と。 でも彼が恵まれた生活を享受できていた理由も何も無いのです。

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2014/03/02

日々の泡 / ボリス・ヴィアン 読了 2013/09/30 #本 いつか読もうと買っていたこの本、ムードインディゴというこれを元にした映画が公開されるということで、やっと読んでみた。 全てが夢の中のような、訳者がいう、〈まともに受け取られまい〉とした作風なのだろう。 肺の中に...

日々の泡 / ボリス・ヴィアン 読了 2013/09/30 #本 いつか読もうと買っていたこの本、ムードインディゴというこれを元にした映画が公開されるということで、やっと読んでみた。 全てが夢の中のような、訳者がいう、〈まともに受け取られまい〉とした作風なのだろう。 肺の中に睡蓮が咲く病気になってしまったクロエと、その病気を治すには多くの花がいることになり、そのためにお金がなくなり、酷い仕事につかなければならないコラン… 多くの夢のような話の中で、例えば、カクテルピアノ 半リットルのためのピアノをスリーコーラス弾くと、虹色に輝く液体をたたえたグラスが取り出され、弾いたブルースの味がする… 全てが夢のようだが、死ぬ人の数も多く、また貧乏になって死んでしまうクロエの葬儀は悲しい。

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2014/01/07

最初のうちは真面目に読んでいたので、時折挿し込まれる不可解な表現に戸惑った。 が、この独特な非現実性を理解すると、それを楽しめるようになった。 豊かなリリシズムと、優しさと、残虐性の潜む大人のファンタジー。 愛する人を失いたくなくて気も狂いそうなのに、それ以外の人間をあっけなく殺...

最初のうちは真面目に読んでいたので、時折挿し込まれる不可解な表現に戸惑った。 が、この独特な非現実性を理解すると、それを楽しめるようになった。 豊かなリリシズムと、優しさと、残虐性の潜む大人のファンタジー。 愛する人を失いたくなくて気も狂いそうなのに、それ以外の人間をあっけなく殺してしまうのだ。

Posted byブクログ