荒野へ の商品レビュー
アラスカの荒野の中で、一人で冒険生活をしていた若者の遺体が見つかった。そこに興味を持った筆者が、この若者がどのような人生を歩んできて、何を考えてアラスカの大自然の中に飛び込んでいったのかをさぐってゆこうというドキュメンタリー。日記を読み解き、若者がアラスカに行く前に出合った人た...
アラスカの荒野の中で、一人で冒険生活をしていた若者の遺体が見つかった。そこに興味を持った筆者が、この若者がどのような人生を歩んできて、何を考えてアラスカの大自然の中に飛び込んでいったのかをさぐってゆこうというドキュメンタリー。日記を読み解き、若者がアラスカに行く前に出合った人たちに話を聞いて、若者の姿を思い起こしてゆく。過去に似たような冒険に飛び込んだ人たちのエピソードを交えたり、またあるいは筆者自身の冒険の体験についても語ったりしてゆく。おそらく世間が勝手に騒いだだけではない、もっといろいろな背景があってのことだったのだろうということが、地道な取材と考察によって書かれてゆく。
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たまたま衝動買いした原書で読みなおしている。 こちらの訳書もずっと手元に置いてあったので、たまに参照しながら。わかりやすい訳だとおもうのだが、いくつか誤訳も見つけた。プロの誤訳をみつけてすこし得意になったところもあるし、せっかくなのでメモを残しておく。 第八章 アラスカ p....
たまたま衝動買いした原書で読みなおしている。 こちらの訳書もずっと手元に置いてあったので、たまに参照しながら。わかりやすい訳だとおもうのだが、いくつか誤訳も見つけた。プロの誤訳をみつけてすこし得意になったところもあるし、せっかくなのでメモを残しておく。 第八章 アラスカ p.105「〜ベトナム人獣医がいた。」 原文はthe Vietnam vet。vetは確かに獣医の短縮形として使われることが多いが、ここではveteranのほうが自然。よってベトナム復員兵。 第十一章 チェサピーク・ビーチ p.162「どんな親ともうまくいかなかっただろうと思う。両親の考え方とことごとく衝突していたからね。」 原文は"I think he would have been unhappy with any parents; he had trouble with the whole idea of parents."。なおideaはイタリックになっている。「どんな親とも」と、このイタリックがポイントになる。うまい訳文がひねり出せないが「どんな親ともうまくいかなかっただろうと思う。親という概念自体をまったく受け付けなかったからね。」とでもすべきか。 第十五章 スティキーン氷冠 p.209「北壁にだけは登らせないという山の意志、その断固とした山の意志は認めざるをえなかった。」 山を擬人化していてさほど違和感もない訳文だが、原文は"I was forced to acknowledge that volition alone, however powerful, was not going to get me up the north wall."。いくら強くても意志の力だけでは北壁は登れない、という意味だと思うのだが。aloneやhoweverを無視している。直前の文節でthe Thumb(山の名前)が主語になっているのに引っ張られたか。 第十七章 スタンピード・トレイル p.255「今夜は、蚊がひどく多くて、もちろん、バスは避難所にもならなかったが、私はフェアバンクス142番バスのなかで寝る気にはなれなかった。そして、ぐっすりと眠りこんでしまい、ほかのふたりがなにをしていたのかも覚えていない。」 原文は"Although the mosquitoes are thick tonight and the bus would no doubt offer some refuge, I decide not to bed down inside Fairbanks 142. Nor, I note before sinking into a dreamless sleep, do the others."。こうだと思う。「今夜は、蚊がひどく多くて、まちがいなくバスは避難所になったはずだが、私はフェアバンクス142番バスのなかでは寝ないことにした。そして、ぐっすりと眠りこむ前に気づいたのだが、ほかのふたりもバスの中には入っていかなかった。」
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1992年9月のはじめアラスカの荒野に打ち捨てられたバスの中でクリス・マッカンドレスという若者が死体で発見される。死因は餓死だった。彼は裕福な家庭に育ち、優秀な成績で大学を卒業している。また彼はアラスカに入る際、十分とは言い難い装備で入っていった。彼はなぜすべてを投げ捨て、荒野に...
1992年9月のはじめアラスカの荒野に打ち捨てられたバスの中でクリス・マッカンドレスという若者が死体で発見される。死因は餓死だった。彼は裕福な家庭に育ち、優秀な成績で大学を卒業している。また彼はアラスカに入る際、十分とは言い難い装備で入っていった。彼はなぜすべてを投げ捨て、荒野に分け入ったのか、多くの関係者の取材と著者の登山経験、また荒野で命を落とした他の事例を示しながら、若者の内面を探るノンフィクション。若者は決して自殺ではなかったという主張、荒野へのあこがれと死因の予測は読んでいて面白かった。この若者を嫌いにはなれない、むしろ愛しく感じてしまう。
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ろくに装備も食物も持たずにアラスカの荒野へ単身分け入り、4カ月後に恐らく食中毒がもとで餓死した青年を描いたノンフィクション。 何ともショッキングな事件(事故)で、ニュースを聞いた人の評価は批判的、著者の筆も心なしか陰影に満ちているが、直前に接した人の話や日記から推察された本人の...
ろくに装備も食物も持たずにアラスカの荒野へ単身分け入り、4カ月後に恐らく食中毒がもとで餓死した青年を描いたノンフィクション。 何ともショッキングな事件(事故)で、ニュースを聞いた人の評価は批判的、著者の筆も心なしか陰影に満ちているが、直前に接した人の話や日記から推察された本人の姿は妙にハッピーに見える。 この本は、「なぜ人は荒野や冒険を目指すのか?」を考えさせてくれる。危険な山や崖を目指す人、食うや食わずで芸術を志す人、ケガをおしてまで記録にこだわる人などを、他人はバカだなあとか理解できないよ、やめろよと言いがちだが、もとよりそこには他人の典範や理屈などの入り込む隙はない。行動をただ批判したり、ましてその心の中を詮索したり干渉したりするのはお門違いなのである。 本人がそうしたければ、それでいいのだ。 で、彼は荒野にジャック・ロンドンなどを持ち込み、読んでいたという。こんど読んでみよう。
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裕福な家庭に育ち知性も分別も備えた若者が、独りでアラスカの荒野に徒歩で分け入り、四ヶ月後に餓死した、という事件についての話。と、ひと言でまとめてしまうとただの変な奴の話のようですが、個人的にはとても共感しました。著者も登山家ですのでこの餓死した若者と同じようなマインドを持っている...
裕福な家庭に育ち知性も分別も備えた若者が、独りでアラスカの荒野に徒歩で分け入り、四ヶ月後に餓死した、という事件についての話。と、ひと言でまとめてしまうとただの変な奴の話のようですが、個人的にはとても共感しました。著者も登山家ですのでこの餓死した若者と同じようなマインドを持っているようで、それ故、話に深みが出ています。冒険野郎を普遍的に語ってやろうという本です。
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人間の社会が心底イヤになり、大自然の中へ飛び込んで行く人は、一定の割合で存在しているのだと思う。ただし、自然は甘くないのです。荒野で生きるためには、それまで人間が培ってきた知識と技能をマスターしなきゃダメなんです。それでも生き残れるかは半々くらいでしょうか・・。それが自然の本当の...
人間の社会が心底イヤになり、大自然の中へ飛び込んで行く人は、一定の割合で存在しているのだと思う。ただし、自然は甘くないのです。荒野で生きるためには、それまで人間が培ってきた知識と技能をマスターしなきゃダメなんです。それでも生き残れるかは半々くらいでしょうか・・。それが自然の本当の姿なんだ。
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図書館で。 この若者のとった行動に対する自分の意見としては作中にあった、耳の痛い批判が一番近いかなぁ。家族には同情するけれども当事者に同情しない。うん、まさにコレだなぁ。クリスは悪い人というよりはむしろ善人ではあるのだろうけれども(もしくは善になりたい人と言った方が良いのか)実際...
図書館で。 この若者のとった行動に対する自分の意見としては作中にあった、耳の痛い批判が一番近いかなぁ。家族には同情するけれども当事者に同情しない。うん、まさにコレだなぁ。クリスは悪い人というよりはむしろ善人ではあるのだろうけれども(もしくは善になりたい人と言った方が良いのか)実際に彼が行ったことは家族に心配をかけ、各地にゴミをまき散らし、放浪しただけだもんなぁ。 若い時の万能感とか、今の文明社会は間違っているという強烈な正義感とか、我こそが世界を変える一人であるという使命感は…共感出来ないにせよ、わからなくはないですが。ただ、単身南アフリカに乗りこんで為政者を倒すって…ランボーでもあるまいに。映画や漫画じゃないんだから悪い(と思っている)奴を倒してハッピーエンドって訳にもいかないだろうと思うぐらいは自分は醒めているのかもしれない。ナルホド、理想は大きいけれども精神的には結構幼稚な感じは今で言うと中二病拗らせてるとでも言った方が良いのか。 作中、彼は軽率だったし、結果として死んでしまったけれども愚かでは無かった、と再三強調されていますが愚かではなかったかもしれないけれども賢くも無かったな…と思います。特に人の意見に耳を傾けなかった点とかが。 そりゃ、大昔は地図などなく、手探り状態で開墾や開発は進んだのだろうけれども少なくとも彼らは単独ではなかっただろうし、万全の備えを持っていたハズ。 縄文時代の狩猟民族が出来たんだから自分にもできるはずだというのは文明人の驕りだろうなぁと思う。彼らだって蓄えはしていたし、一人では無理だから集団で暮らしてたんじゃなかろうか?そう思うんですがなんだか履き違えている所はありますよねぇ。 作者は自分も若い頃ヤンチャした経験があるからか非常にクリスや同じように亡くなった若者に同情的ですが、個人的には彼らは自分を過信しすぎていたのだろうなぁと少し冷めた目で見てしまいます。さらに先人に学ぶという謙虚さも足りないから遅かれ早かれ…と思う所はあります。こういう人は良いメンターというか、尊敬できる人と出会えれば変わるような気もしますが…変な組織に洗脳されるとテロリストにもなりかねないからそこは難しいか。(そう言えば傭兵になりたいとかで日本を飛び出した人も居ましたね…) 後、自分が冒険家の話を読んでモヤっとするのは彼らが自然をぞんざいに扱っている感が感じられる所でしょうか。そりゃ生きるか死ぬかの際にゴミを綺麗に片して…なんて言ってられないのはわかりますが、きちんと自分の持ち込んだゴミを持って帰る冒険家ってどれだけいるんだろう?昔アルピニストの野口さんの講演でエベレストがゴミだらけで愕然とした、というのを聞いていてびっくりしましたが、それを聞くと冒険気取りで山野を荒らすヨソモノに、定住している人が辛口で批判するのもすごくわかる気がする。冒険家にとってはそこは手つかずの荒野かもしれませんが、定住者にとっては狩猟や生活の場であったりする訳ですから。 冒険家全員がそうでは無いでしょうが、結局彼らは人がしない事、出来ない事を俺はやったんだぜ、だから俺は人とは違うんだ、自然人なんだ、なんて文明社会に戻ってきて大きな顔をしたいだけのような気がするんですよね。いくら自然が呼んでるだの、自分は文明社会には適合しないだの言ったところでその捨てたい文明社会に戻らざるをえず、生活の基盤はその社会が担っているのであれば、それは結局は文明社会の一員って事なんですよね。 変に利口で行動力のある人って大変だなぁ…と思いました。
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アラスカの荒野で亡くなった若者マッカンドレスは、決して冒険家ではなかったと思う。冒険家は往々にして「死ぬような思いをしなかった冒険は面白くないし、死ぬかもしれないと思わない冒険に意味はない。」と思っているのだから。それじゃあ、どうして恵まれた環境を棄てて、ひとり彷徨い死に至ったのだろうか。両親の偽善的な生き方への反抗とか神聖なものへの憧れがあったようだ。最後はどうも野生の食べ物摂取による毒素による事故死であったと推測されている。豊富な経験と知識があれば死は免れたかもしれない。
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アメリカ人にとってのアラスカは、日本人にとってのパワースポット見たいなものなのだろうか。 身一つで荒野に赴くことを、若気の至りの過ぎたこと、と断罪するのも覇気の無い世の中に仕向けている片棒を担いでいるようで乗り気がしないし、純粋な精神的自立を目指した求道者、なんて礼賛するのも腑...
アメリカ人にとってのアラスカは、日本人にとってのパワースポット見たいなものなのだろうか。 身一つで荒野に赴くことを、若気の至りの過ぎたこと、と断罪するのも覇気の無い世の中に仕向けている片棒を担いでいるようで乗り気がしないし、純粋な精神的自立を目指した求道者、なんて礼賛するのも腑に落ちない。 冒険は無事に生きて帰ってくれば成功、ということが良くわかる一冊。 …大人の対応なコメントですみません。 もう中年だから仕方ないの。
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映画『イントゥ・ザ・ワイルド』を観た後に読んだ。無謀ともいえる冒険で命を落としたクリスには批判も多い。理屈ではわかるけど、心情的にはクリスに共感するところも多く、胸が痛い。
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