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鴎外の三男坊 の商品レビュー

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2015/03/02

◆森鴎外の末子である類氏はどのような人物だったのか、気になったので読んでみました。類氏自身による自伝ともいうべき『鴎(鷗)外の子供たち (http://booklog.jp/item/1/4480030395)』を踏まえながら、書簡や小説も取り上げることで『子供たち』では描かれて...

◆森鴎外の末子である類氏はどのような人物だったのか、気になったので読んでみました。類氏自身による自伝ともいうべき『鴎(鷗)外の子供たち (http://booklog.jp/item/1/4480030395)』を踏まえながら、書簡や小説も取り上げることで『子供たち』では描かれていない部分が明らかになっています。 ◆『鴎外の子供たち』に重なる時代を茉莉さんなどの視点からも描きつつ、『子供たち』よりも後の晩年の姿まで書いています。『子供たち』では飄々としてしているように感じられた部分も、この本を読むと違った印象を抱かざるを得ません。 ◆たとえば、杏奴さんとの海外渡航中の記録は『子供たち』にはあまりないのですが、この本では類さんの喜びや興奮(そして細かな筆致!)がどれほどであったかがよく分かります。母志げが「見たことがないよ」と言った顔、歓喜に満ち溢れた影の無い顔。類さんへの重圧がどれほどのものだったかということが、他人(茉莉さん)の視点からより鮮明に感じられます。 ◆さらに『子供たち』に比べると、出版社の社員として、本屋の店主として、また小説家として自作原稿の指導を仰ぐなど、積極的に奔走して力強く現実と対峙しようとする姿が描き出されていると思います。この本の年表によると、『子供たち』は1956(昭和31)年45歳のときに書かれていて、これは千朶書房(せんだ)を閉店する一年前です。ですが、「市街八分(まちはちぶ)」や「裁量権」のような小説(例に挙げたのはどちらも社会的な題材の作品ですが)が掲載されるのはそのあとですし、もっとも充実していたのもこの後だったのではないかと思っています(人生に”もっとも”充実していた時期というのがあるとすれば、ですが)。 ◆『鴎外の子供たち』を読んで面白いと思った方に、想像を深める一冊としておすすめします。

Posted byブクログ