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2012/09/19

本書はアナリティカル・マルキシズムに関する本である。具体的には、ソ連崩壊を題材にしつつ、資本社会主義について今後の展望を数理的・歴史的基礎付のもと議論を展開している。 読みはじめてすぐに、アナリティカル・マルキシズムがマルクス主義とはかなり異なることがわかる。確かに両者は平等主義...

本書はアナリティカル・マルキシズムに関する本である。具体的には、ソ連崩壊を題材にしつつ、資本社会主義について今後の展望を数理的・歴史的基礎付のもと議論を展開している。 読みはじめてすぐに、アナリティカル・マルキシズムがマルクス主義とはかなり異なることがわかる。確かに両者は平等主義という観点に属するが、マルクス主義ほどの社会主義であったり平等主義的立場を求めてはいない。例をあげるならば、幸福の追求に関して、幸福を追求する権利の平等を提唱するが、幸福の平等までをも追求してはいない。また、市場のいい部分をできる限り引き出そうという点も、マルクス主義とはやや異なるのではないんだろうか。いずれにしても、ローマーは、つまるところ、機会の平等に関してわれわれに気鋭な知見を与えてくれるので、そう言った意味でも本書は読むに値する本だと思われる。 全体としては、ソ連崩壊について、ちょうど政治哲学と政治経済学の間のような議論をがメインとなる。数理的な基礎付けのもと議論を展開しているが、本書では極めて平易に書かれているため、数学が苦手な読者にとっても理解しやすいと思われる。 意外だったのが、かなりハイエクやシュンペーターの議論とリンクしていることである。そういう意味で、ハイエクやシュンペーターの議論を踏まえた上で本書を読むと理解がより深まるかもしれない。

Posted byブクログ