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一九三四年冬 の商品レビュー

4.4

26件のお客様レビュー

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2011/09/13

江戸川乱歩――彼の人生は妖氛が漂う艶美なものであった。 異常と囲繞のはざまでクルリクルリとさかしまに踊る。 そして蟲が食んだような色硝子と探偵小説に暮れる日々。 はてさて世界との逆説にいかなる怪奇を送るのだろうか。 私はそれを彼の死後、いつまでも待ち続けるつもりだ。 楽...

江戸川乱歩――彼の人生は妖氛が漂う艶美なものであった。 異常と囲繞のはざまでクルリクルリとさかしまに踊る。 そして蟲が食んだような色硝子と探偵小説に暮れる日々。 はてさて世界との逆説にいかなる怪奇を送るのだろうか。 私はそれを彼の死後、いつまでも待ち続けるつもりだ。 楽しみだ。蒲公英の綿毛のように飛翔するのだろう、きっと。

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2017/08/15

 久世輝彦さんの傑作中の傑作です。  1934年の冬、極度のスランプに陥った乱歩は行方をくらまします(事実)このことに着想を得た著者は、この間に乱歩がホテルの一室にこもり「梔子姫」という新作を書き上げたという話を作り上げました。ただこれだけの話です。ただこれだけなのに久世さんは...

 久世輝彦さんの傑作中の傑作です。  1934年の冬、極度のスランプに陥った乱歩は行方をくらまします(事実)このことに着想を得た著者は、この間に乱歩がホテルの一室にこもり「梔子姫」という新作を書き上げたという話を作り上げました。ただこれだけの話です。ただこれだけなのに久世さんはものすごく面白い話にしてしまいました。  乱歩の人物描写が秀逸ですが、それ以上にすごいのが「梔子姫」という小説です。乱歩が書き上げたことになっていますが、もちろん久世さんのオリジナルです。妖艶で奇怪なストーリーは、もう言い切ります! 乱歩以上にすごいです!  もう亡くなってしまわれたのが残念ですが、久世さん以上に、妖しく美しく日本語を編み出せる作家はたぶんいません。

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2011/07/21

もうこんなペダンティックな文章で書かれた新しい小説は二度と読めないと思うと、残念というより悶え苦しむほど口惜しいのです。 まさしく自らの嗜好と性癖と偏向に呪縛されたイマジネーションの産物以外の何ものでもない、ピーンと張ったひとすじの妖しい耽美的感覚は、至上の喜びであると同時に戦...

もうこんなペダンティックな文章で書かれた新しい小説は二度と読めないと思うと、残念というより悶え苦しむほど口惜しいのです。 まさしく自らの嗜好と性癖と偏向に呪縛されたイマジネーションの産物以外の何ものでもない、ピーンと張ったひとすじの妖しい耽美的感覚は、至上の喜びであると同時に戦慄の恐怖でもあるのです。 5年前の2006年3月2日、久世光彦は心不全で忽然と逝ってしまいました。享年70歳。 実際にひどいスランプになったことがある江戸川乱歩ですが、はるか80年を経た後年、自分が主人公にされて、環境の変化を求めて麻布の張ホテルで缶詰になり、そこで探偵小説狂いの人妻や謎の中国青年に悩まされつつも幻惑味たっぷりの新しい短編小説『梔子姫』を書く・・・・・などというまことしやかな物語をでっち上げられるとは、まさか夢にも思わなかったことでしょう。 二度目に読んだ時には久世光彦の息遣いが聞こえてきて、三度目には煙草の匂いがしてきました。そういうふうにして、著者というものは本の世界の中に永遠に生きるものなんだなあ、というより、私って他意識過剰なのかもしれません。

Posted byブクログ

2010/12/19

1934年冬、乱歩が失踪する。失踪先は麻布のホテル。乱歩はそこでエロティシズムにあふれた短編を書き始めていた。と、いう設定で久世光彦が乱歩になりきって描いていく。

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2010/07/13

スランプ気味の乱歩さん、美青年のボーイのいる長期滞在型ホテルに逃げ込んで…えらい妄想にふけりつつ『梔子姫』という小説を書き上げる…という話。 「禿げてるくせに甘えてみる」とか 「美青年と一緒に異国の曲を聞く-こんなことなら着替えてくれば良かった」 「別にやつれていなくたって、伏し...

スランプ気味の乱歩さん、美青年のボーイのいる長期滞在型ホテルに逃げ込んで…えらい妄想にふけりつつ『梔子姫』という小説を書き上げる…という話。 「禿げてるくせに甘えてみる」とか 「美青年と一緒に異国の曲を聞く-こんなことなら着替えてくれば良かった」 「別にやつれていなくたって、伏し目がちでなくたって、人妻というだけでエロティックだ」とか、40歳を目前に人妻と美青年に目がない乱歩さん。 なんか怪奇小説の巨匠とされているけれど、かなりお茶目というか何というか。 乱歩の小説を読み込んでいるわけでもない私ですが、久世光彦が乱歩として書いた『梔子姫』だけでも「乱歩っぽいな」とそれとなく浸れました。乱歩ファンの感想を聞きたいです

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2010/03/05

とっても面白かった、いろんな本の話がでてきて興味深い、濃密で妖しい空気に酔った。品切重版未定とは…買っといてよかった、危なかった。

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2009/10/07

江戸川乱歩を主人公にした小説。 乱歩の性格描写が良かった。なんだか、憎めないオッサンw 芸術家ぶってみても結構俗物で、女性に興味があっても手は出せなくて、 作中オドロオドロしいこと書いても、実際にはかなりビビリで 気難しく気取ってはみても、甘えん坊。 作品中に、さらに乱歩が執筆...

江戸川乱歩を主人公にした小説。 乱歩の性格描写が良かった。なんだか、憎めないオッサンw 芸術家ぶってみても結構俗物で、女性に興味があっても手は出せなくて、 作中オドロオドロしいこと書いても、実際にはかなりビビリで 気難しく気取ってはみても、甘えん坊。 作品中に、さらに乱歩が執筆しているという小説が登場するという二重構造も凝ってて読み応えあり。 これが乱歩が書きそうでいて、多分あの時代には書けなかったであろう性描写満載で、 著者も楽しみながら書いたんじゃないかなーと、思う。

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2016/11/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

― 1934年(昭和九年)冬、東京。  雑誌「新青年」に頼まれた小説の原稿が進まず、衝動的に逃亡を図った江戸川乱歩(40歳・作家)。  都心のホテルに一時避難し追手からは逃れたものの、このままでは作家の名が廃る。  何としてもこの「梔子姫(くちなしひめ)」(←タイトルだけは決まってる)、完成させなければ… ―  (※この作品に登場する「乱歩」はほぼ著者の妄想の結晶に近く、実在する「江戸川乱歩」とは多分に異なる人物である恐れがあります) 何というか、一言で率直に申せば、萌えました。 乱歩氏のどこまでも等身大の40歳な感じといい、華栄青年の絶妙な魅力といい、 昭和初期のやや陰のある独特の雰囲気を醸し出す文章といい、私の心をがっちりホールド。 物の成り行き的に読み出したはずが読み進むほどにテンションが上がり、読み終わる頃には大好きな一冊となっていました。 (※)の点さえ大丈夫であれば、全ての乱歩愛好者におすすめしたい小説です。 また文中に乱歩関連の小ネタが散在しているので、乱歩マニアな方ほど楽しめるはず。 ちなみにこのどうみても乱歩作品としか思えない作中作「梔子姫」は完全に久世さんのオリジナルだそうです。 ほんと、久世さんの乱歩に対するありとあらゆる種類の愛が結晶化した作品だと思います。 (2006年 3月)

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2009/10/04

主人公は江戸川乱歩。スランプに陥って行方をくらまし、麻布の張ホテルに滞在する4日間を描いたフィクション。妖しくも怪しい登場人物と劇中小説『梔子姫』など様々なものがゆめうつつに溶け合ってて不思議に心地好い。つい中国人の美青年に注目してしまう乱歩さんに妙な親近感を覚えました。『梔子姫...

主人公は江戸川乱歩。スランプに陥って行方をくらまし、麻布の張ホテルに滞在する4日間を描いたフィクション。妖しくも怪しい登場人物と劇中小説『梔子姫』など様々なものがゆめうつつに溶け合ってて不思議に心地好い。つい中国人の美青年に注目してしまう乱歩さんに妙な親近感を覚えました。『梔子姫』は劇中小説としてではなく、一つの作品として好き。要素が似通っている『孤島の鬼』を読み終わったばかりだからか、無性に読み返したい。

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2009/10/04

江戸川乱歩の、ある冬の四日間をエロティックな文章で描く。作中、乱歩は「梔子姫」という小説の執筆に取り掛かる。本編と同時進行的に、この作中作が完成に至る過程を追っていくのだが……。この「梔子姫」がとにかく凄い。乱歩の完全な模倣、というより乱歩以上に乱歩的な作品に仕上がっている。久世...

江戸川乱歩の、ある冬の四日間をエロティックな文章で描く。作中、乱歩は「梔子姫」という小説の執筆に取り掛かる。本編と同時進行的に、この作中作が完成に至る過程を追っていくのだが……。この「梔子姫」がとにかく凄い。乱歩の完全な模倣、というより乱歩以上に乱歩的な作品に仕上がっている。久世光彦氏の筆力に驚き呆れました。

Posted byブクログ