かりそめの愛でなく の商品レビュー

ポーリン・ベントリー(著者),沢梢枝(訳者)

2009/10/04

１７世紀末のロンドン、悪臭漂うフリート監獄。濡れ衣を着せられて投獄されたマットを、ある日仮面の美女が訪れた。なんと、ここから出してやる代わりにかりそめの結婚をし、しばらくの間、彼女の偽りの夫を演じて欲しいという。鼻持ちならない富裕階級の人間の言いなりになどなりたくないが、まずはここから出なければ、何一つ出来はしない。自分を陥れた何物かを見つけ出して復讐することも、数年前、謎に包まれた死を遂げた妻子の仇を討つことも・・・。取引は成立し、後はビジネスライクにいくはずだった。仮面の美女、ローラ・スタントンにこれほど心惹かれなければ。ローラの申し出は、悪辣な身内の手から領民達を守りたいという、ただその一心から出たけなげな決意の表れだった。マットは海の男だ。復讐を果たしたら、いずれは海に帰るだろう。だが、かりそめにも妻となったローラを置いていけるだろうか・・・。