水滴 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
五十年も昔、仲間を裏切ったことへの罪悪感がこの奇妙な病として表れたのか。 急に原因不明の冬瓜のように腫れた足をかかえ意志疎通できない寝たきりになった男。 そして夜な夜な沖縄戦で犠牲になった仲間の日本兵たちが足から染み出てくる水を飲みにやってくる。その中に、同郷で友だった石嶺が現れるようになる。石嶺に足を吸われ男はエクスタシーを感じてしまう。生死の境は、子孫を残そうと生殖本能が起きると聞きかじったことがある。必ずしも性愛があったわけではないと思うけど、石嶺は美しいもののような形容のされかたをしている。そこには赦しを求める者として神聖視しているのかもしれない。 羅生門の醜女のようなキャラの従兄弟も含めて、芥川賞っぽいなぁと感じた。 同録『風音』の方が引き込まれた。こちらも沖縄、戦時中の回想と戦後が入り交じる構成。各々が一人の風葬された若い兵士と関係する人物だったという、真実が少しずつ明らかになっていくお話で、一気に読めた。鳥葬ではなく蟹…そうだ蟹の眼って飛び出てるんだったと想像してゾッとした…。 死んだ若い兵士は美しく、表題よりこちらのほうが匂い系だった。ノンフィクションとも幻想的ともいえるので、戦争ものと気負わず、その描写力を堪能して欲しい。 (リトルモア版「風音」とは内容違うらしい) 私の祖父も戦争体験者で、防空壕で敵からガス攻撃されたとき、たまたま側に隙間があったから生き延びられたと。いまの子供たちは、身近にそういう方たちがいないんだなぁ。平和な未来を願っていた祖先と、かなり解離した日本の平和ボケというのは、今この世界の中でみると少し恐ろしいような居心地の悪さを感じる。もちろん世界中が争いのない平和ボケになれば良いのだけど。
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水を使うと神秘的なイメージになる。でも、それだけじゃなかった。戦争は生き残ったものの気持ちもまえに進めなくする。滞っていた心の思いとか、叫びみたいなのをうまく使ってるのかなと思った。それに、沖縄の言葉は本気で何をいっているのかわかりません。
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表題作の「水滴」、続く「風音」は、戦時中の沖縄を思い返し、現代に生き残った者が何かをする、という話しの構造になっている。構造は同じだが、展開は全く異なる。 「水滴」はまず全体的に短く、寓話っぽく、悲しいのにどこか可笑しく思えてしまう。最後には勧善懲悪な要素もある。しかしこれが賞を...
表題作の「水滴」、続く「風音」は、戦時中の沖縄を思い返し、現代に生き残った者が何かをする、という話しの構造になっている。構造は同じだが、展開は全く異なる。 「水滴」はまず全体的に短く、寓話っぽく、悲しいのにどこか可笑しく思えてしまう。最後には勧善懲悪な要素もある。しかしこれが賞を受賞したというのは、不思議というか、珍しいこともあるのだな、という印象が拭えない。 「風音」の方が、現代と、戦時中との差別化が出来ているのに、その距離というものが近くに描かれ、人物の内面が各々、スポットライトの当たり方によって強弱はあるが、描かれていたし、政治的(正しくは金絡みの問題)でもあった。二篇とも、重く、生き残った者たちの悲しみと息苦しさが、沖縄の言葉でもって、濃く描かれていた。 三篇目の「オキナワン・ブック・レビュー」は、実験作で、戦争とも関わりはあるが、少々悪趣味なものだった。レビューを通して人物を描き、最後には点と点が線を結ぶ構造になっているが、中身が文化的な書かれ方をしているにも関わらず、薄っぺらく、冗長が過ぎる気がした。
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沖縄人の夫婦。原因不明の足の浮腫を煩う夫のもとに、夜な夜なやってくる兵隊達。戦争体験との付き合い方とは。
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広島で焼き殺されることと、 沖縄で撃ち抜かれること、どちらが惨いでしょうか。 全戦争犠牲者に慰霊を。
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表題作含めて3作品掲載されていますが、2作品読み終えたあとの3作品目、オキナワン・ブック・レビューが、あまりにも面白い。何か悪いマンガかアニメを観たのかって思うくらい面白い。先の2作品とのギャップの差がありすぎる。
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作者も作品名もこれまで全く知らなかったが、沖縄の過去の現実が物語に融合されていて、涙がでそうになった。 これまでに味わったことのない考えさせられる作品だった。芥川賞授賞さくひんだけある!
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おじいの足がある日いきなり冬瓜みたく腫上がって親指の先からみるみる水が噴き出してしまう。夜毎何人もの亡霊がおじいの前にあらわれてその水を飲みにやってくる。当時の沖縄戦は凄惨を極め壕には多くの兵士が傷つき置き去りにされた。。修学旅行だったか糸満壕という防空壕(ガマ)に行った。本書の...
おじいの足がある日いきなり冬瓜みたく腫上がって親指の先からみるみる水が噴き出してしまう。夜毎何人もの亡霊がおじいの前にあらわれてその水を飲みにやってくる。当時の沖縄戦は凄惨を極め壕には多くの兵士が傷つき置き去りにされた。。修学旅行だったか糸満壕という防空壕(ガマ)に行った。本書の話はおそらくここでの出来事に思われるが正確ではない。でもやたら符号する。生ぬるく異様な気配に包まれた洞窟であったことは今でも覚えているし。ひめゆり部隊がここで活躍したという話を聞いたことだけは覚えている。117回芥川賞受賞作品。
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淡々と進んでいくが、印象に残るような場面がある。 つま先から水滴・・・ そして戦場。じめじめした雰囲気。内容は重いと思う。一回読み直してもいいかも
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芥川賞受賞作 ある日、右足が腫れて水があふれ出た。 夜な夜なそれを飲みにくるのは誰か? 沖縄を舞台に過去と現在が交錯する、奇想天外な物語! (帯より) 他に、『風音』『オキナワン・ブック・レヴュー』 日本の中にあって、日本の外と緊密に接し、地上戦を身をもって体験し...
芥川賞受賞作 ある日、右足が腫れて水があふれ出た。 夜な夜なそれを飲みにくるのは誰か? 沖縄を舞台に過去と現在が交錯する、奇想天外な物語! (帯より) 他に、『風音』『オキナワン・ブック・レヴュー』 日本の中にあって、日本の外と緊密に接し、地上戦を身をもって体験しているにもかかわらず――しているからこそ?――外に向かって開けた独特の風土を持つ沖縄。 そんな沖縄が舞台だからこその この物語なのだろうと思う。 神や魂を身近に感じつつ、沖縄の人たちは今も生きているのではないだろうか。
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