カントの人間学 の商品レビュー
エゴイズム、親切、友…
エゴイズム、親切、友情、虚栄心等々の人間の「姿」はいかなるものかを、カントを手がかりに考察した書。やや浅いです。
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⚫︎著者の本は過去に読んだことがあり、たしかカルチャーセンターの哲学講座の受講料を巡るとんでもなく哲学的な言い争いの記載に衝撃を受けたから。 ⚫︎結果は大当たりで非常に面白い。大体、哲学の本は本当に読み難くてしんどいのだが、これはそれがない、ほんとにない。 ⚫︎カチッとした哲学者...
⚫︎著者の本は過去に読んだことがあり、たしかカルチャーセンターの哲学講座の受講料を巡るとんでもなく哲学的な言い争いの記載に衝撃を受けたから。 ⚫︎結果は大当たりで非常に面白い。大体、哲学の本は本当に読み難くてしんどいのだが、これはそれがない、ほんとにない。 ⚫︎カチッとした哲学者という印象だけだったカントがとっても身近に感じられた。 ⚫︎幼少期のどうしようもない貧しさや置かれた状況の複雑さが本人の思考に影響を与えているのはなるほどなと。 ⚫︎他人を本当に必要としない人もいるんだね。 ⚫︎時代が時代だけに最後の女性に関する記載はあちゃーって感じだけど…
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心も弱っている時に、意外と効く特効薬が、哲学関係の本だと思うのです。 1997/12/20第1刷発行なので、20年前の本ですが、そこから更に5年半遡る1992/6に刊行された『モラリストとしてのカント』をやや縮小し適宜改変したものとのことです。 この本は、『フロイト―そ...
心も弱っている時に、意外と効く特効薬が、哲学関係の本だと思うのです。 1997/12/20第1刷発行なので、20年前の本ですが、そこから更に5年半遡る1992/6に刊行された『モラリストとしてのカント』をやや縮小し適宜改変したものとのことです。 この本は、『フロイト―その思想と生涯 (ラッシェル・ベイカー)』がフロイトの思想そのものではなく、フロイトの生涯を描いたように、カントの生涯を刻むことによって、カントの主張を浮き彫りにしようとしているような気がします。 私は、この本を中島義道さんによるカントの肖像画だと思いました。もちろん、カント自身をモデルにして描かれたものではなく、残された様々な記録を紡いで織られたものです。 色彩には、後の哲学者が採掘した顔料も塗り重ねられ、事実を追求するというよりも、中島義道という哲学者の分析というか、解釈が深く刻みこまれています。 カントという良くも悪くも偉大な哲学者の存在を、一人の人間として親しみを込めて掘り下げることによって、市井の哲学者たちが、読書メーターという井戸に感想・レビューを持ち寄るためのテーマを提供してくれています。
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「カントの人間学」中島義道著、講談社現代新書、1997.12.20 230p ¥693 C0210 (2020.07.08読了)(2003.09.06購入) 【目次】 まえがき 第一章 エゴイズムについて 第二章 親切について 第三章 友情について 第四章 虚栄心について 第五...
「カントの人間学」中島義道著、講談社現代新書、1997.12.20 230p ¥693 C0210 (2020.07.08読了)(2003.09.06購入) 【目次】 まえがき 第一章 エゴイズムについて 第二章 親切について 第三章 友情について 第四章 虚栄心について 第五章 生活のスタイルについて 第六章 容貌について 第七章 女性について あとがき ☆関連図書(既読) 「永遠平和の為に」カント著・高坂正顕訳、岩波文庫、1949.02.20 「啓蒙とは何か」カント著・篠田英雄訳、岩波文庫、1950.10.30 「道徳形而上学原論」カント著・篠田英雄訳、岩波文庫、1960.06.25 「カント『永遠平和のために』」萱野稔人著、NHK出版、2016.08.01 「カント『純粋理性批判』入門」黒崎政男著、講談社選書メチエ、2000.09.10 「カント『純粋理性批判』」西研著、NHK出版、2020.06.01 「ウィーン愛憎」中島義道著、中公新書、1990.01.25 「〈対話〉のない社会」中島義道著、PHP新書、1997.11.04 「私の嫌いな10の言葉」中島義道著、新潮社、2000.08.30 「働くことがイヤな人のための本」中島義道著、日本経済新聞社、2001.02.19 「生きにくい……」中島義道著、角川書店、2001.07.30 「ぼくは偏食人間」中島義道著、新潮社、2001.08.10 「不幸論」中島義道著、PHP新書、2002.10.29 「ぐれる!」中島義道著、新潮新書、2003.04.10 「続・ウィーン愛憎」中島義道著、中公新書、2004.10.25 (「BOOK」データベースより)amazon エゴイズム、親切、友情、虚栄心…人間の「姿」はいかなるものか。複雑で矛盾に満ちた存在を描き出すカントの眼差しに拠り、人間の有り様の不思議を考える。
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道徳家としてのカントとストイックな生活者としてのカントを同一視するのではなく、生活面はむしろ執着というか自閉的な捉えが浮かび上がってくる。知行合一的な哲学者に対する見方を考え直す本でもあった。
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本書はカントを「モラリスト」として読み解く試みであるが、じつはこのモラリストという概念はたいそうつかみにくい。
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どこかやっかいな人、という印象があるカント、という人について非常に興味深い面があることを知ることができました。 やはり、どこかやっかいな人なんですね。 この偉大な哲人の、悪い面、情けない面が意図的に書かれているようですが、ただそれが偉大さの理解につながる、著者の愛を感じる。 著...
どこかやっかいな人、という印象があるカント、という人について非常に興味深い面があることを知ることができました。 やはり、どこかやっかいな人なんですね。 この偉大な哲人の、悪い面、情けない面が意図的に書かれているようですが、ただそれが偉大さの理解につながる、著者の愛を感じる。 著者といえば、哲学者の中島義道氏である。 読書中感じた、独特の人を見る視点。既視感があると思ったら中島氏でした。 新書を著者から選んで読む、というのをこれからやってみよう。
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カントの断片的な言葉やエピソードを踏まえて、カントを哲学者ではなく一人の人間として考察する一冊。だが、ひとつひとつのエピソードや同時代の人々によるカントの評価を分析する際に、カント自身の著作や、批評者のカント理解を表面的にしか参照しない手法は大いに問題があるだろう。カントの思想は...
カントの断片的な言葉やエピソードを踏まえて、カントを哲学者ではなく一人の人間として考察する一冊。だが、ひとつひとつのエピソードや同時代の人々によるカントの評価を分析する際に、カント自身の著作や、批評者のカント理解を表面的にしか参照しない手法は大いに問題があるだろう。カントの思想は一般的な常識のほとんどを覆すものであるのだから、彼の発言を「常識的」に受け取ることは誤読に繋がりかねないし、そんな「常識的」な読み方をしたカント批評者の発言にも吟味の余地がある。カント読者のひとりとしては、賛同できる面はあまり多くはなかった。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
この本はカントの著作の解説書ではなく、カントが人の生に対してどのような哲学を持っていたかを紹介しながら、さらに俯瞰して、その人間哲学を通して著者がカント自身を観る。そのような本である。 よってカントの人間哲学を紹介しながらも著者自身の思想が多分に含まれている。見方によっては「カントの人間学」を通して著者の哲学を語っているようにも見える。 さて、まず著者の人間哲学として最初に語られているのは偉大な哲学者(ここは哲学者にかぎらず一般的に偉大な人物と考えても良いだろう)は、完璧な聖人君子ではないということ。一人の人間としての生の在り方としてはひどくちっぽけであったり、俗的であるのだ。 そして逆説的に、そんな俗的な生活をしながらも一方で崇高な哲学を語ることができるからこそ偉大なのだと。 これは人生哲学としては非情に大切なことだと僕は思う。 『高遠な理想を語りながら、それとまったく対極的な俗にまみれた生活をしていても、なんの矛盾も感じないほどの「大人物」である……終始矛盾だらけの生活を繰り返している男なのです。しかも、それを真に恥じている様子も感じさせないほど「偉大」なのです。』 本編で最初に語られているのは『エゴイズムについて』 エゴイズムは少なからず誰しもが持っているものなので、ここで解説されているエゴイストは少なからず自分も当てはまっているので思わず自分の行動を省察してしまう。 「美的エゴイスト」の箇所は非常に面白く、『枕草子』と『徒然草』を題材に使い解説しているところが面白い。(清少納言と兼好法師は美的エゴイストでない例として使われている) 『美は…「客観的普遍性」とは区別される独特の「主観的普遍性」を有する。』 これが美について最も大切なことだと思う。 では、客観的根拠を持たない美の普遍性は以下にして担保されうるか。著者はこう答える。 『「良い趣味」と「悪い趣味」が歴然とあること、しかもわれわれはこれを決して多数決によって決定しているのではないこと、つまり、美のデモクラシーはどこにも成立していないことは誰でも知っていよう。美とはやはり『枕草子』や『徒然草』の著者のような感受性の特権階級によって保証されるものであり、多くの鈍感な人々は漠然とあるいは盲目的にそれを受け入れるほかないのである。』 『清少納言は、「私は春はあけぼのが良いと思うが他人は違うかもしれない」という謙虚な姿勢のもとに『枕草子』を書いたのではない。春はあけぼのがよく、いかなるこれに対立するセンスも認めないという信念のもとに、すなわち、すべての人の美的判断を自分の美的判断に従わせようとの強烈な「要求」を自覚して書いたのである。……帝が反論しようと「春はあけぼの」なのであり、人類すべてを敵に回しても「春はあけぼの」なのである』 一回性から普遍に至る。これが美(芸術)の本質である。一回性の中から普遍的なものえぐり取るその感性こそが芸術家の才能であり、僕のような一般人はそれを「ありがたく頂戴する」しかないのである。。 さて、個人的に本当に面白いと感じたのはこの最初の『エゴイストについて』の部分でそれ以後の部分はそれなりに「なるほど」と思わされるようなことがチラホラでてくる程度であった。(それでも大部分は退屈せずに読めた) 例えば 『歳からいっても円熟し分別もついた、考えのある男ならば、たとえ呼び戻された年月と現に今生きている時とを、もっとよい条件の下に生きるとした場合でも、もう一度若くなることを選ぶことはまずあるまい、ということは注目に値することである-カント』 などはドキッとする。 この本を通じて感じたことは、近代哲学の完成者と言われるような「普遍」に至ったカントであっても、その思想はカント自身に引きずられるということ。 つまり、カントの哲学が、普遍的に通用する哲学であっても、そこに至る思考はカントの生い立ち、経験、生き方が色濃く現れる。そこには必然性があるということ。 自分自身が考えていること、あたりまえだと思っていること、それらすべてのことは自分自身の生い立ち、経験、知識、その他自分の生にまとわりつくすべてのことが色濃く反映された結果であるということは、考えればごくごく当たり前のことであるが、切実に理解している人は少ないように感じる。
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もう10年以上経って?再び読みました。 カントの哲学がどうこう、という難しい話ではなく、もちろん哲学の話も交えながら、カントの人となりについても説明されている非常に平易な本。 カントの生い立ちや性格が詳説されている分、カントがどのような基本思想を抱いていたかと言うこともわかりや...
もう10年以上経って?再び読みました。 カントの哲学がどうこう、という難しい話ではなく、もちろん哲学の話も交えながら、カントの人となりについても説明されている非常に平易な本。 カントの生い立ちや性格が詳説されている分、カントがどのような基本思想を抱いていたかと言うこともわかりやすかったかな。 さくっと読めます。
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