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資本主義の未来 の商品レビュー

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2018/10/08

今,BRICSを筆頭に新興経済圏がグローバル経済においてプレゼンスを増している。あらゆる資源価格は高騰し,争奪戦の様相すら呈してきている。そんななか,20世紀にイデオロギーとして勝者となった資本主義,もしくは民主主義はこの先,こうした新興経済圏をも上手く取り込んで持続することが可...

今,BRICSを筆頭に新興経済圏がグローバル経済においてプレゼンスを増している。あらゆる資源価格は高騰し,争奪戦の様相すら呈してきている。そんななか,20世紀にイデオロギーとして勝者となった資本主義,もしくは民主主義はこの先,こうした新興経済圏をも上手く取り込んで持続することが可能なのか・・・そうした疑問を最近常に持ち続けていた中で古本屋で見つけた本である。 この本が書かれたのは,1996年であり既に10年以上の時が経っている。そういう意味では,当時の著者の予見が現在どのようになっているかという事後検証を同時に行うこともでき興味深かった。 著者は,まずプレートテクトニクスという表現を用いて20世紀の世界経済の枠組みが壊され,その変化に適応できる者が21世紀の勝者となるという話を序盤で展開している。1.グローバル化による要素価格均衡化,2.知識資本主義,3.共産圏の崩壊,4.世界経済を牽引する覇権国が不在となる=アメリカの世界におけるプレゼンスの低下,5.人口爆発問題と先進国での高齢化問題 といった5つの問題が提起されている。 21世紀となった現在,アメリカは依然として世界経済を牽引する役割を担い,外交においてもイラク,北朝鮮などの諸問題において主導的な役割を果たしている。この点において著者の予見は外れたものになっているが,その他については概ね氏の予想通りの世界になっているのは,さすがである。特に高齢化について,その当時よりこうした問題提起が行われていたにもかかわらず無策であった日本の政治の無能さを改めて思い知らされる。著者は全体として日本の将来については悲観的な見方をしていたが,当時の日本の政治,企業経営をみていれば,そう思うのもまた仕方が無いことかもしれない。まさか,小泉純一郎のような強力なリーダーシップと志をもった稀代の政治化が日本に現れるとはさすがに予想していなかったであろうから。 この本のハイライトは,後半の「資本主義VS民主主義」という章であろう。本来対立するものして考えられていない両者が,今後の世界経済においては必ずしも相容れるものではないということである。確かに,経済のグローバル化によって金融を中心とした米英的な資本主義が主要先進国において好まざるとも浸透しつつあるのは紛れもない事実である。個人が自己の効用を最大化することのみを追求することによって,結果として資源の最適分配が行われ経済を成長させるという理論はミクロ経済の基本的考え方であるが,全ての人がその経済成長の恩恵にあずかれないことが問題である。当然,そうした資本主義の恩恵の外に置かれた人たち,つまり技能が無い人や高齢者たちの割合が増えて行くにつれ,彼らが望む政策は資本主義と対立するということである。本来将来への投資をしなければならない政治が,現在の高齢者の満足を満たすための政策に走れば経済成長は無い。高齢化が進行する日本では,こうした世代間の対立が資本主義と民主主義の対立として具現化する可能性を否定できない。 アメリカでも移民や低所得への教育に対する公共部門の予算は削られる一方である。直接的には中間層はこうした人たちに自分たちの税金が投入されることは不本意であるかもしれないが,国や職場においても自分以外の人たちが優秀であるがために自分もその恩恵に預かる事ができる外部性が存在することを理解していない。民主主義では支持されない政策が,資本主義における成長には必要であると言う例である。 この本において提起されている諸問題のほとんどは,10年以上の時を経てもいまだ解決されていない。資本主義の未来については冒頭で述べたとおり新興国の台頭もありますます混迷の様相を深めている。何十年か後には,いつか資本主義は破綻するのでなないかという疑念を払拭することはできないままである。

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2018/03/03

1996年に上梓されているので今がその未来なのかもしれないが、当時彼が警鐘を鳴らしたことが現実として目の前にある反面、世界的な異次元金融緩和に代表されるような当時としては禁じてであった施策も現前としており、時代の変化への対応を感じさせる。しかしながら、当時から懸念されていた格差の...

1996年に上梓されているので今がその未来なのかもしれないが、当時彼が警鐘を鳴らしたことが現実として目の前にある反面、世界的な異次元金融緩和に代表されるような当時としては禁じてであった施策も現前としており、時代の変化への対応を感じさせる。しかしながら、当時から懸念されていた格差の拡大は今も留まる気配はなく分断化と共に政治的な課題にまで拡大している。

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2014/10/28

 労働市場が世界に開かれることで、先進国の労働賃金が確実に安くなる。すでに現状はホワイトカラーと言われている人達の賃金低下現象すら起きている。資本主義がグローバル化することで、世界の企業は生産コストを最低限に下げる使命を果そうとするだろう。昨今、人、物の移動が自由になることで大企...

 労働市場が世界に開かれることで、先進国の労働賃金が確実に安くなる。すでに現状はホワイトカラーと言われている人達の賃金低下現象すら起きている。資本主義がグローバル化することで、世界の企業は生産コストを最低限に下げる使命を果そうとするだろう。昨今、人、物の移動が自由になることで大企業の城下町はかっての賑わいをまちがいなく失い荒廃するにまかせる。

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2010/05/23

深読みの面白い本。 このレビューを書いているのは2009年6月。 当然リーマンショック以降の世界に私は生きている。 レスター・C・サローが分析した経済の地殻変動、そこから予想される変化はほぼ全て当たった。 この大規模な金融危機も当然の如く当たった。 深読みすれ...

深読みの面白い本。 このレビューを書いているのは2009年6月。 当然リーマンショック以降の世界に私は生きている。 レスター・C・サローが分析した経済の地殻変動、そこから予想される変化はほぼ全て当たった。 この大規模な金融危機も当然の如く当たった。 深読みすれば、危機に際した民主主義が適切なリーダーを選ぶとの論考は米国におけるオバマの登場を予言したかに見えた。 現下進行中の景気低迷の深淵とその処方箋は15年前にはすでに予言されていた。 後は我々一人一人がどう対処するか、そして新たなる未来をどう産み出していくか、思考錯誤を繰り返すだけである。 この先のサバイバルに必須になる一書であると私は確信している。 資本主義を好むと好まざるとに関わらず選択した全ての人にお奨めする。

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2011/03/16

今,BRICSを筆頭に新興経済圏がグローバル経済においてプレゼンスを増している。あらゆる資源価格は高騰し,争奪戦の様相すら呈してきている。そんななか,20世紀にイデオロギーとして勝者となった資本主義,もしくは民主主義はこの先,こうした新興経済圏をも上手く取り込んで持続することが可...

今,BRICSを筆頭に新興経済圏がグローバル経済においてプレゼンスを増している。あらゆる資源価格は高騰し,争奪戦の様相すら呈してきている。そんななか,20世紀にイデオロギーとして勝者となった資本主義,もしくは民主主義はこの先,こうした新興経済圏をも上手く取り込んで持続することが可能なのか・・・そうした疑問を最近常に持ち続けていた中で古本屋で見つけた本である。この本が書かれたのは,1996年であり既に10年以上の時が経っている。そういう意味では,当時の著者の予見が現在どのようになっているかという事後検証を同時に行うこともでき興味深かった。著者は,まずプレートテクトニクスという表現を用いて20世紀の世界経済の枠組みが壊され,その変化に適応できる者が21世紀の勝者となるという話を序盤で展開している。1.グローバル化による要素価格均衡化,2.知識資本主義,3.共産圏の崩壊,4.世界経済を牽引する覇権国が不在となる=アメリカの世界におけるプレゼンスの低下,5.人口爆発問題と先進国での高齢化問題 といった5つの問題が提起されている。21世紀となった現在,アメリカは依然として世界経済を牽引する役割を担い,外交においてもイラク,北朝鮮などの諸問題において主導的な役割を果たしている。この点において著者の予見は外れたものになっているが,その他については概ね氏の予想通りの世界になっているのは,さすがである。特に高齢化について,その当時よりこうした問題提起が行われていたにもかかわらず無策であった日本の政治の無能さを改めて思い知らされる。著者は全体として日本の将来については悲観的な見方をしていたが,当時の日本の政治,企業経営をみていれば,そう思うのもまた仕方が無いことかもしれない。まさか,小泉純一郎のような強力なリーダーシップと志をもった稀代の政治化が日本に現れるとはさすがに予想していなかったであろうから。この本のハイライトは,後半の「資本主義VS民主主義」という章であろう。本来対立するものして考えられていない両者が,今後の世界経済においては必ずしも相容れるものではないということである。確かに,経済のグローバル化によって金融を中心とした米英的な資本主義が主要先進国において好まざるとも浸透しつつあるのは紛れもない事実である。個人が自己の効用を最大化することのみを追求することによって,結果として資源の最適分配が行われ経済を成長させるという理論はミクロ経済の基本的考え方であるが,全ての人がその経済成長の恩恵にあずかれないことが問題である。当然,そうした資本主義の恩恵の外に置かれた人たち,つまり技能が無い人や高齢者たちの割合が増えて行くにつれ,彼らが望む政策は資本主義と対立するということである。本来将来への投資をしなければならない政治が,現在の高齢者の満足を満たすための政策に走れば経済成長は無い。高齢化が進行する日本では,こうした世代間の対立が資本主義と民主主義の対立として具現化する可能性を否定できない。アメリカでも移民や低所得への教育に対する公共部門の予算は削られる一方である。直接的には中間層はこうした人たちに自分たちの税金が投入されることは不本意であるかもしれないが,国や職場においても自分以外の人たちが優秀であるがために自分もその恩恵に預かる事ができる外部性が存在することを理解していない。民主主義では支持されない政策が,資本主義における成長には必要であると言う例である。この本において提起されている諸問題のほとんどは,10年以上の時を経てもいまだ解決されていない。資本主義の未来については冒頭で述べたとおり新興国の台頭もありますます混迷の様相を深めている。何十年か後には,いつか資本主義は破綻するのでなないかという疑念を払拭することはできないままである。

Posted byブクログ

2010/05/29

十年以上前に書かれた本だが、今われわれが直面している時代の変わり目をまさに予言していたかのような本だ。 経済の世界の動きを『プレート・テクトニクス』とゆう地質学の概念と、『断続平衡説』とゆう生物学の概念を借りて説明する。 共産主義の崩壊、新しい技術、人口移動・高齢化、グローバル経...

十年以上前に書かれた本だが、今われわれが直面している時代の変わり目をまさに予言していたかのような本だ。 経済の世界の動きを『プレート・テクトニクス』とゆう地質学の概念と、『断続平衡説』とゆう生物学の概念を借りて説明する。 共産主義の崩壊、新しい技術、人口移動・高齢化、グローバル経済、覇権なき世界をそれぞれ五つの経済のプレートとしてとらえ、これらが成長の鈍化や賃金格差に与えている影響を詳細に書いている。 またインフレとゆう名の幽霊に怯え経済成長を妨げ続けるFRBの政策や、日本の貿易黒字が引き起こしている問題、メキシコの経済危機の原因にも触れ、さらには「適者生存」を旨とする資本主義とそれとは相容れない「一人一票」を掲げる民主主義のせめぎあいが起こしている社会問題、先行き不透明な社会の中で確かなものを求める原理主義宗教の台頭、ネガティブ・サム・ゲームでの仕事の奪い合いから強められた民族分離主義など経済だけでなく幅広い視点で現代を論じている。 ビスマルクやチャーチルが社会福祉の充実に取り組んだのは資本主義を守るためだったが、共産主義とゆうライバルが消滅して代案もない今、資本主義は弱者を振り落としていく一方だろう。経済がグローバル化して資本その他が自由に世界を駆け巡るこの時代、日本での非熟練労働者の賃金が下がるのも仕方がないのか。 北欧を中心とした福祉国家も財政難にあえいでいるよう。西欧でも労働者を保護しているから失業率が高いともゆうし。先が全く見えてこない。金融危機に直面して米が金融機関に資金を投入したり国有化したりといった路線変更を行ったがそれももつかどうか。 ただ著者のサローさんは結構楽観的で、今この平衡断絶期を努力と意思でもって克服しようと勇気付けている。 おれも自分にできる努力は精一杯してあとは運を待って、時代の先駆者になろう。

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2009/10/04

プレートテクトニクス理論を応用して、経済社会の変化を予測した書。出版から10年たった今、その変化が確実に見て取れるという意味ではその後の変化を見事に予言した書と言ってよい。氏によれば、経済の富と所得の分配が劇的に変化し、不平等が拡大すると予測しており、それをもたらす要因(地殻変動...

プレートテクトニクス理論を応用して、経済社会の変化を予測した書。出版から10年たった今、その変化が確実に見て取れるという意味ではその後の変化を見事に予言した書と言ってよい。氏によれば、経済の富と所得の分配が劇的に変化し、不平等が拡大すると予測しており、それをもたらす要因(地殻変動をもたらすプレート)  を5つあげている。昨今は小さな政府が志向され、すべて民間に任せておけばよいというような論調も聞かれるが、資本主義化が強まっていく時代にこそ、政府の役割が非常に重要になるはずだと筆者は結論付けている。

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2009/10/04

資本主義の未来について、地球の活動に置き換えて考えた本。私が初めて経済学に触れた本です。当時は難しかった。

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