ガラスの独房 の商品レビュー
主人公のフィリップは、両親に先立たれたけれど、裕福な伯父夫婦に引き取られ、お金に不自由することなく成長し、社会人になり、婚約者がいたヘーゼルに出会い、ヘーゼルもフィリップに惹かれ、即婚約破棄し、2人は結婚。めでたしめでたし…のはずだった。 7年2ヶ月後、冤罪で6年間服役。その間...
主人公のフィリップは、両親に先立たれたけれど、裕福な伯父夫婦に引き取られ、お金に不自由することなく成長し、社会人になり、婚約者がいたヘーゼルに出会い、ヘーゼルもフィリップに惹かれ、即婚約破棄し、2人は結婚。めでたしめでたし…のはずだった。 7年2ヶ月後、冤罪で6年間服役。その間に刑務所で激しいリンチ、モルヒネ依存、親しい受刑者(マックス)の死、さらに偶然から人を殺してしまう。そしてそれを公表せず出所。 さらにヘーゼルの不貞発覚、冤罪関係者(ゲイウィル)のしつこい接触、さらにゲイウィルの教唆もあり、次第にヘーゼルの不倫相手(サリヴァン)に抱く感情… そして… 冤罪の真の黒幕が、服役してからも給与面で温情を示してくれた社長だった、というのが一番ショックでした。それもさらっとゲイウィルの口から語られる… 刑務所のシーンももちろんショックなのですが… 冤罪が晴れないまま服役しながら、金には困らないというのがすごいなあと。それもなんとなくではなく、ちゃんと遺産が入ってくる仕組みで。 エドナ伯母の「あなたは子供のころから忘れっぽくて、注意力が散漫なことがあったわね」という言葉に表されている、フィリップの不幸の源… そして、ゲイウィルが冤罪の片棒担ぎでしかないとわかり、その性格を利用して、今度はサリヴァン殺害の共犯にさせるという… 実際の犯罪では捕まらない。それはフィリップの意思でもありますが、とても人として悲しい結末でした。やっぱり暗い気持ちになる、ハイスミス作品でした。 途中、マックスに裏切られるのか?と思っていたら、マックスは殺されてしまい…くすん。 P94 P167 P223 あたりに気になるフレーズあり。
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冤罪被害者を主人公にしたサスペンス小説。 『主人公がどうしようもない状況に置かれている』という設定はよくあるが、この『どうしようもない状況』を端的に表現するのに、『冤罪で投獄されている』という設定ほど有効なものはなかなか無いだろう。 基本的にハイスミスの作品で、すっきりした結末を...
冤罪被害者を主人公にしたサスペンス小説。 『主人公がどうしようもない状況に置かれている』という設定はよくあるが、この『どうしようもない状況』を端的に表現するのに、『冤罪で投獄されている』という設定ほど有効なものはなかなか無いだろう。 基本的にハイスミスの作品で、すっきりした結末を迎えるものは無いと思うのだが、本書に見られる理不尽さは普段よりも強烈だった。まぁ、主人公が冤罪被害者って時点でねぇ……。
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無実の罪で投獄された男が、看守に暴行され、医者に麻薬中毒にされながら出所。が、彼には投獄前の平安な日常は戻ってこなかった。きしむ妻との関係に、男は次第に狂気にとらわれていく。 ハイスミスゆえという感じの理不尽な物語。 まぁ、主人公が100%悪くないとはいえないのだけど、で...
無実の罪で投獄された男が、看守に暴行され、医者に麻薬中毒にされながら出所。が、彼には投獄前の平安な日常は戻ってこなかった。きしむ妻との関係に、男は次第に狂気にとらわれていく。 ハイスミスゆえという感じの理不尽な物語。 まぁ、主人公が100%悪くないとはいえないのだけど、でも、その少しの落ち度というか、そそっかしいというか、注意力散漫というか、そういうものがもたらす悲劇はあまりにも大きい。 それなのに、あまり主人公にシンクロできないんだよね。 つか、これに出てくる人物、誰一人としてシンクロできる人間がいない。 皆、それぞれに自我ばかりを通していて、他者を、隣人を見るということがない。 ああそうか。 これは、ある盲目の話なのかもしれない。 見るべき時に、見るべきものを見なかった、目をそらした、目を閉ざした、そういったものがもたらす悲劇なのだろう……。
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