ユリシーズ(1) の商品レビュー
先日、『ユリシーズ』の読書イベント、「22Ulyssesージェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』への招待」の第10回で金井嘉彦先生が、第9挿話「スキュレとカリュブディス」の謎解きをされていたが、見事なものだ。 まるで、ドラマ『刑事モース〜オックスフォード事件簿』の終盤で開陳されるモー...
先日、『ユリシーズ』の読書イベント、「22Ulyssesージェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』への招待」の第10回で金井嘉彦先生が、第9挿話「スキュレとカリュブディス」の謎解きをされていたが、見事なものだ。 まるで、ドラマ『刑事モース〜オックスフォード事件簿』の終盤で開陳されるモースの謎解きを観ているようだ。 今回は、イベントに合わせての再読だが、まだまだ浅い、浅すぎる。 【機械。こいつにつかまったら人間なんてこなごなに砕けてしまう。今日の世界を支配しているんだ。やつの機械装置も働きづめだぜ。こっちのと同じで、手のつけようがない。興奮してるのさ。】/ 「機械」は、多くの人々を巻き込み断首(断種)しつつ、狂った様に稼働し続ける。 そして、フランス革命におけるジャコバン派の領袖たちの末路をみる様に、いったんスイッチが入れられたからには、「機械」は、その製作者たちの首を刎ねつくすまでは、決して止まりはしないのだ。/ 【彼女は茶碗の取っ手でないところを持ってひとくち飲み、毛布で指さきを器用にぬぐってから、ヘヤピンで文章をたどり、その言葉を探し当てた。 (略) ーーこれよ、と彼女は言った。どんな意味なの? 彼はかがみこんで、彼女の拇指の磨いた爪のそばを読んだ。 ーー輪廻転生? ーーそう。その人いったいどこの誰なの? ーー輪廻転生、と彼はつぶやいて顔をしかめた。ギリシア語だよ。ギリシア語から来た言葉だ。霊魂の転生という意味だよ。】/ なにゆえ、モリーはことさら「輪廻転生」を口にしたのか?/ 【家庭というものは母親がいなくなると壊れてしまう。子供を十五人産ませた。ほとんど毎年生れたわけだ。それがカトリックの教義なんだよ。さもないと神父はあわれな女に告解をじゃなくて赦免を与えてくれない。殖えよ、地に満てよ。そんな馬鹿な考え方があるかしら?家庭も家屋敷も食いつぶしてしまう。】/ ジョイスの憤りが伝わって来るようだ。 もし、ジョイスが誰かを蘇らせる(転生させる)ためにこの小説を書いたとするならば、それは、 二十三年間の結婚生活の間、流産を含め十五回妊娠し、四男六女をもうけ、我が身を擦り減らして、ぼろぼろの体になって四十四歳で死んでいった母ではないだろうか? 浮気者の歌手モリーは、亡き母を旧弊な結婚生活から解放して転生させた、有り得べかりし母の姿ではないだろうか?/
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第1巻、読了。間髪入れず第2巻へなだれ込む。 イリアス→オデュッセイアと読み継ぎ、勢いをつけてユリシーズに挑んだわけだが(おそらくこの地球上で数万人がこの作戦を試したと思われ)、おかげでオデュッセイアにちなんだ部分で路頭に迷うことは無かった。が...。 別の関門に行く手を阻ま...
第1巻、読了。間髪入れず第2巻へなだれ込む。 イリアス→オデュッセイアと読み継ぎ、勢いをつけてユリシーズに挑んだわけだが(おそらくこの地球上で数万人がこの作戦を試したと思われ)、おかげでオデュッセイアにちなんだ部分で路頭に迷うことは無かった。が...。 別の関門に行く手を阻まれる。シェイクスピア、アイルランド史、聖書。せめてオデュッセイアを読んでいて助かった。噂には聞いていたが、西洋的教養の爆発を見るような思い。 文章という文章に、気が遠くなるほどの文芸的な仕掛けを敷き詰めたジョイスもさることながら、そのジョイスの仕掛けを「ぜんぶ注釈つけたるわ」と、異様な熱量で訳注を振りまくる、翻訳者3人(丸谷才一、高松雄一、永川玲二)の仕事もえげつないレベル。
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少なくともオデュッセイア、聖書、アイルランドの歴史を理解しとかないと難解。この作品自体が西洋教養のカタマりなので読む際は覚悟がいる。知識ができたら再挑戦したい。
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ジョイスの『ユリシーズ』は、プルーストの『失われた時を求めて』と並ぶ近代文学の金字塔といわれる小説だが、『失われた時を求めて』とは、また全く違う難解さがある。 しかし、『失われた時を求めて』よりは、ずっと読破率が高いだろうと予測される。 なぜなら、『失時』とは量が違うし、筋だけ...
ジョイスの『ユリシーズ』は、プルーストの『失われた時を求めて』と並ぶ近代文学の金字塔といわれる小説だが、『失われた時を求めて』とは、また全く違う難解さがある。 しかし、『失われた時を求めて』よりは、ずっと読破率が高いだろうと予測される。 なぜなら、『失時』とは量が違うし、筋だけを追えばいいのであれば、1日の出来事の小説なので割と簡単にFINに辿りつくのだ。 だが、『ユリシーズ』は、そんな簡単な書物ではない。 『Ulysseus』とは、『Odysseus』のラテン名 ウリッセース の英語読みである。 『ユリシーズ』は、ホメロスの『オデュッセイア』を下敷きとして書かれており、まず『オデュッセイア』を完読していなければ、真に『ユリシーズ』を楽しむことは不可能といえる。 『ユリシーズ』は、十八の挿話によって構成され、その表題はすべて、『オデュッセイア』の重要登場人物や地名等をそのまま借用している。 もちろん、それだけではなく、小説すべてが『オデュッセイア』と照応しており、挿話の冒頭でどの部分に対応しているのかも明かされる。 『オデュッセイア』は、トロイア戦争終結後、ポセイドンの怒りに触れたため、10年もの間、漂流をし、やっと妻子の待つ故郷のイタケ島に帰り着くという物語であるが、ジョイスは、10年ではなく、たった1日の時の流れで『オデュッセイア』に呼応した『ユリシーズ』を書き上げている。 この一日というのは、1904年6月14日であり、場所はダブリン。 『ユリシーズ』の主要登場人物は、スティーヴンという22歳の詩人、学校教師と、レオポルド・ブルームという38歳の広告会社の営業のユダヤ人と、その妻モリー。 ちなみに6月14日は、ブルームズ・デイと呼ばれているらしい。この日は、ジョイスがのちの自身の妻となるノラとはじめてデートした日でもある。 ブルームの妻のモリーは、多くの求婚者を拒否しつづけ、貞淑の象徴 オデュッセウスの妻のペネロペと照応しているが、モリーは、夫のブルームと夫婦仲がしっくりいっておらず、浮気をする。 妻が浮気をすることを予知していても夫のブルームはそれを事前に阻止できない。 ジョイスは、1904年以来、ヨーロッパ各地を転々とし、アイルランドへも1912年以後は戻ることはなかったが、小説の舞台は常に故郷ダブリンだった。 『ユリシーズ』は、1904年のダブリンをそのまま閉じ込めて描かれており、 「たとえ、ダブリンが消滅するようなことがあっても、それは『ユリシーズ』に含まれている証拠から容易に復元できる」とジョイスが述べているとおり、 1904年6月14日 日の出日の入り、鉄道、船などの交通手段、人々の生活、通り、酒場などの様子、市民の生活等当時のダブリンを忠実に舞台として描いている。 また、『ユリシーズ』は、『オデュッセイア』の照応ということだけでなく、文体や言語遊戯という意味でも意義深い書物だ。 語り、弁証法、カノン形式によるフーガ、戯曲風、教義問答、句読点なしの科白などさまざまな手法が用いられている。 そして、多くの訳注がついているが、多ジャンルの芸術方面からの引用、比喩、符牒など、訳注によってジョイスの意図を汲み取りつつ読み進む。 最初、文庫で『ユリシーズ』を読みはじめたが、1巻を読んだところで、文庫本から単行本に変更した。 理由は、文庫本では訳注が巻末にあるので、いちいち後ろのページをめくりながら読まねばならず非常に読みにくかった。 単行本は、下に書いてくれていて、訳注が多すぎるためにページがずれこむことも多々あるが、文庫本のそれとは違って、やはり至便であった。
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いや、これはすごい。15年くらい、読もう読もうとして読めず、読み出して読めず、ずっと苦労していたのだけれど、きっかけを得て一気呵成に読みました。むっちゃ面白い。 第一巻の圧巻は「さまよう岩々」で、ここでダブリン市内で登場人物が重層的にあちこちで独立して、さらに交叉しながら邂逅し...
いや、これはすごい。15年くらい、読もう読もうとして読めず、読み出して読めず、ずっと苦労していたのだけれど、きっかけを得て一気呵成に読みました。むっちゃ面白い。 第一巻の圧巻は「さまよう岩々」で、ここでダブリン市内で登場人物が重層的にあちこちで独立して、さらに交叉しながら邂逅していきます。能の序破急、スティール・ボール・ランのジョジョ・ジョニーVSディオVSバレンタインのドキドキ感。 街の名前が連続的に移動を表す所はまるで志ん生の「黄金餅」。 細かいセリフも気が利いていておおって感じです。 まだまだ気がつかないところも多いでしょうが、10年後くらいに再読するのがたのしみ。2巻もたのしみ。
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オデッセウス(ユリシーズ)がトロイ戦争後故郷に帰り着くまでの漂泊の20年の如く、ダブリン市20年の人間模様を1日に凝縮して描いたとか、良く書くよなあ、と感心はするが付き合っている程暇が無い。
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アメリカのランダム・ハウス社による「20世紀、英語で書かれた小説ベスト100」で第1位にランク付けされた作品。(ちなみに同作者作の『若き芸術家の肖像』は第3位) なにより複雑で難しい。英語を母語にする人でもジョイスの言葉遊びは理解できないとか。 私に理解できなくて当然か…。 途中...
アメリカのランダム・ハウス社による「20世紀、英語で書かれた小説ベスト100」で第1位にランク付けされた作品。(ちなみに同作者作の『若き芸術家の肖像』は第3位) なにより複雑で難しい。英語を母語にする人でもジョイスの言葉遊びは理解できないとか。 私に理解できなくて当然か…。 途中で挫折したけど、いつかは読破したい本。
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