やさしい訴え の商品レビュー
こういう恋愛について書かれた小説を読むたびに、読書とは何かを考えてしまう。 傷ついた主人公の立場に入り込んでしまうと、読後にぐったりと疲れを感じる。 恋愛小説は単なる娯楽なのだろうが、重たい気分のまま本を閉じて、私はすばやく現実世界に戻れない。 図書館で借りた本に閉架シールが貼...
こういう恋愛について書かれた小説を読むたびに、読書とは何かを考えてしまう。 傷ついた主人公の立場に入り込んでしまうと、読後にぐったりと疲れを感じる。 恋愛小説は単なる娯楽なのだろうが、重たい気分のまま本を閉じて、私はすばやく現実世界に戻れない。 図書館で借りた本に閉架シールが貼られていた。 どうしてすぐに書庫に入れてしまうのか。 1986年だから直ぐでもないか…。 目に浮かぶ情景は美しいのに、内容はテレビの2時間ドラマのよう。 大人の恋愛は醜いからか。 小川洋子さんもいろいろな作品を書いていたのだ、と思った。
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生活を逃れた林の中、チェンバロ作りの男女とそれを見つめる女の不思議な関係。硬質の文体が抉りとる愛と孤独、聖域と日常の迫間。 -------------------------------------- 西洋カリグラフィーに興味があるなら、とすすめてもらったので読んでみた。とても...
生活を逃れた林の中、チェンバロ作りの男女とそれを見つめる女の不思議な関係。硬質の文体が抉りとる愛と孤独、聖域と日常の迫間。 -------------------------------------- 西洋カリグラフィーに興味があるなら、とすすめてもらったので読んでみた。とても静かに時が流れて、冷静と情熱の間に、という感じ。 いつもの生活から逃れ、小さい頃から来ていた別荘に数ヶ月。そこで出会った人や感情や情景。たまに仕事で東京に戻るとまるで街全体が自分を拒否しているよう... 人と関わりはあってもふと孤独と思う時があるのには共感。みんなそれぞれ暗い過去もある。
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主人公を通して新田氏と薫譲の絆を見せつけられたというか。主人公の不足しているモノが浮かび上がっても、じゃあそれが直ったのかと思えば決してそうじゃなくて、精神的な繋がりの強さに納得しようとしつつも新田氏の前妻の存在もちらついて、いまひとつ消化不良な感じでした。他の方の目うろこな感想...
主人公を通して新田氏と薫譲の絆を見せつけられたというか。主人公の不足しているモノが浮かび上がっても、じゃあそれが直ったのかと思えば決してそうじゃなくて、精神的な繋がりの強さに納得しようとしつつも新田氏の前妻の存在もちらついて、いまひとつ消化不良な感じでした。他の方の目うろこな感想で、そこんところ埋めたい感じ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
夫にはもうずっと前から、愛人がいた。 ある日、長いことため込んでいた気持ちがぷつりと切れてから、家を離れ古びた別荘へと身を移した。 そこで出会った、チェンバロを作る新田さんと助手である薫さん、年老いたパグのドナ。 カリグラフィーとしての仕事を細々とこなしながらの、三人と一匹との交流。 さびしくて、どうしようもなく一人だと孤独を感じざるをえないこの状況で、 新田さんのどこまでも深い優しさと、薫さんの純粋なチェンバロの演奏、忠実な愛犬ドナに触れて。 幸福なときだった。 それでいて、手に入らないものや失ったものもあるわけで、悲しくて、力強く、この胸に残る記憶。 悲しい話し。悲しくて美しくはかなげ。 台所でバケツの中でねずみが死んでたり プールでグラスホッパーの奥さんに抱きついて泣いたり ドナが死に向かって衰えていく様子が すべてが悲しくて愛しくて泣きそうになった)^o^(
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小川洋子の小説の中では好きな部類。まだ実はあんまり読んでいないんだけれど。静かに進む激情の物語、というのがすきなんだろーなー、と江國についても同じことを思う。ハードカバーの装丁がすてき。
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小川洋子らしい、静謐で優しく切ない。居場所を探して、ようやく見つけて、でもそれじゃ満足できなくて、失う。。また、文体はすごく優しくて穏やかだけど、登場人物の情感はとても生の人間らしい。嫉妬も後悔もやりきれなさも孤独感も全て出ている。そこが小川洋子らしくてすごく好き。
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チェンバロの音色を聴いたことがないのに、演奏シーンではちゃんと音色が聴こえた気がした。感情移入がしにくく、少しずつ読み終えたけれどなぜか清清しい気持ち。 「僕は、君をちゃんとかくまうことができただろうか?」この台詞にしびれてしまいましたん。
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カリグラフィーの仕事を持つ瑠璃子。眼科医である夫とは冷えた関係。ちょっとした諍いのあと、実家の別荘へ。そこにはペンション・グラスホッパーのおばさんとチェンバロを作る新田氏と薫さん、犬のドナが居て…。作者の著書に出てくる男性は、今で言う「メガネ男子」のイメージ。指の描写に注目。「狂...
カリグラフィーの仕事を持つ瑠璃子。眼科医である夫とは冷えた関係。ちょっとした諍いのあと、実家の別荘へ。そこにはペンション・グラスホッパーのおばさんとチェンバロを作る新田氏と薫さん、犬のドナが居て…。作者の著書に出てくる男性は、今で言う「メガネ男子」のイメージ。指の描写に注目。「狂気」はやや控えめか。「涙は言葉より、残酷ではないだろうと思った。」
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2007.08. 今まで読んだ小川さん作品の中で、その登場人物たちの中で、瑠璃子さんは一番醜い部分を曝け出してくれた。誰よりも不安定なようで、最後には現実にしがみつく力も見せる。意外としたたかなのかもしれない。チェンバロの音色でそっと響く「やさしい訴え」を聴きたい。もちろん、新田...
2007.08. 今まで読んだ小川さん作品の中で、その登場人物たちの中で、瑠璃子さんは一番醜い部分を曝け出してくれた。誰よりも不安定なようで、最後には現実にしがみつく力も見せる。意外としたたかなのかもしれない。チェンバロの音色でそっと響く「やさしい訴え」を聴きたい。もちろん、新田さんの演奏で。新田さんへの感情、薫さんの存在、夫と不倫相手の女。。。どの人も、みんないびつな形を描きながら生きているらしい。ちらっとのぞく狂気に、もっともっと迫って欲しいような気もした。少し、怖かった。
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小説。夫に浮気される女性が、満を持して別荘に家出して、そこで出合う人たちと交流を持つ話。離婚へ向けて動き出す軸と、別荘のご近所さんでチェンバロ作りをする男女との三角関係の軸がアンバランスに絡み合う様が、主人公の言い表せない気持ちに似ている。時の流れと気持ちの納まりが同じ速さで進行...
小説。夫に浮気される女性が、満を持して別荘に家出して、そこで出合う人たちと交流を持つ話。離婚へ向けて動き出す軸と、別荘のご近所さんでチェンバロ作りをする男女との三角関係の軸がアンバランスに絡み合う様が、主人公の言い表せない気持ちに似ている。時の流れと気持ちの納まりが同じ速さで進行しないのを、別荘近辺の風景や自然のみずみずしい描写が癒してくれている感じで、何かがしんみり伝わってくる。この人はこういう選択をした、というお話で、可もなく不可もなく。気持ちを優先した行動が家出だけでも、最後まで読ませるから不思議。
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