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笑犬楼よりの眺望 の商品レビュー

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2023/12/27

雑誌『噂の真相』に、十年にわたって連載された著者のエッセイを収録しています。 本書の最後に掲載されている文章は、1995年の「断筆宣言」です。著者の「無人警察」という作品が教科書に採用されることがきまったものの、その内容に対して日本てんかん協会から抗議が寄せられたことがきっかけ...

雑誌『噂の真相』に、十年にわたって連載された著者のエッセイを収録しています。 本書の最後に掲載されている文章は、1995年の「断筆宣言」です。著者の「無人警察」という作品が教科書に採用されることがきまったものの、その内容に対して日本てんかん協会から抗議が寄せられたことがきっかけとなり、「あたしゃ、キれました。プッツンします」という著者の「断筆宣言」がおこなわれます。 著者は、とりわけブラック・ユーモアを駆使する作家であることから、さまざまな方向からの批判や抗議を受けることが多いのですが、そのような場面において文学者としての矜持を示さなければならないという使命感のようなものを語っています。やはり本書に収録されている、文芸家協会が永山則夫の入会を拒否したことに対する反論にも、そうした著者のスタンスは見てとることができます。 たんなる「言葉狩り」への反対ではなく、文学にたずさわる者の一人ひとりに覚悟を求めるような、一種の倫理観のようなものが、著者の考えの根幹にあるように感じました。 もっとも、本書に収録されている文章の多くは、そうした著者の生真面目な一面を示すものではなく、どちらかといえば「キレ芸」といえるようなユーモラスな内容になっていて、おもしろく読むことができました。

Posted byブクログ

2018/01/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 昔から気になる作家は短編やエッセイなどを読み、それが気に入ったなら長い小説を読んでいくタイプなので、初めて読んだ筒井康隆さんの本はこれだった気がします。  80年代半ばくらいからの10年くらいに書かれたエッセイで、その当時の世の中で話題になったことについての感想や筒井さんを取り巻く状況の変化などが語られています。ひとつひとつのエッセイが長くないので、ちょっとした合間に気楽に読めて、移動中の電車の中やトイレの時などにちょこちょこと読み進めました  消費税導入、日本航空123便墜落事故、ビートたけしのフライデー襲撃事件、昭和天皇の危篤から崩御とそれに伴う世の中全体の自粛ムード、自身の小説をめぐって 様々な団体から抗議されたこと、断筆宣言……。  当時の出来事や自身を取り巻く状況の変化、世の中の空気みたいなものが筒井さんの目を通じて書かれています。  全体を通じて印象に残っているのはレポーターをはじめとするマスコミの横暴さ。人の懐にずかずかと踏み入って好き勝手をやって過ぎ去っていく、そんな様子に一体あいつらは何様のつもりなんだという怒りが伝わってきます。    自分が知らないことばかりだったので、こんなことがあったのか思うことがエッセイを読んでいてよくありました。  読んだのはしばらく前ですが、さっと思い出しただけで上記のように数々の出来事があがるほど、激動の時代だったのだと改めて思いました。

Posted byブクログ

2012/09/05

「断筆宣言」が収録されていることで有名なコラム集だけども、「ついに「ぼくたちの好きな戦争」が始まった」も必読です。

Posted byブクログ

2012/05/05

筒井康隆のエッセイは毒舌でふざけているように見えて実は生活をしていく上での大きな基本を教えてくれる。おそらく今の若者が読むと時代遅れの意見ととらえるかもしれない。でも僕にとってはこれが正しい物の見かただ。これからも何年かに一度読み直したい。 そしてこのエッセイの最後の2葉、「日本...

筒井康隆のエッセイは毒舌でふざけているように見えて実は生活をしていく上での大きな基本を教えてくれる。おそらく今の若者が読むと時代遅れの意見ととらえるかもしれない。でも僕にとってはこれが正しい物の見かただ。これからも何年かに一度読み直したい。 そしてこのエッセイの最後の2葉、「日本てんかん協会に関する覚書」と「断筆宣言」はすべての表現者が読んでおくべきだ。

Posted byブクログ

2011/05/12

≪内容≫ 時代の叡智、筒井康隆による痛快な社会時評。 断筆宣言に至るまでの10年間の真摯な闘いの記録。 ≪感想≫ 初めて読んだ筒井康隆のエッセイ。今から10数年前のものだが、本書の中で度々取り上げられているマスコミへの痛烈な糾弾は今でも十分に通用するし、喫煙者を取り巻く環境など...

≪内容≫ 時代の叡智、筒井康隆による痛快な社会時評。 断筆宣言に至るまでの10年間の真摯な闘いの記録。 ≪感想≫ 初めて読んだ筒井康隆のエッセイ。今から10数年前のものだが、本書の中で度々取り上げられているマスコミへの痛烈な糾弾は今でも十分に通用するし、喫煙者を取り巻く環境などについては、まさに描かれている通りの未来が訪れている。特に断筆までの経緯や表現規制についての彼の姿勢には、なんというか、とにかくシビレる。処々のユーモアは少しも色褪せず、今日の問題においても十分に通用する意見ばかりで、稀代のSF作家としての彼の知性と先見性はさすがだと感じると共に、今更だけども、断筆を解いてくれて本当によかった、よかった。

Posted byブクログ