スペイン断章(下) の商品レビュー

堀田善衛(著者)

ヨーロッパ文化とアラ…

[文庫ＯＦＦ]

ヨーロッパ文化とアラブ文化の接点であったスペインの歴史、スペイン内戦を語る。

2024/07/02

上巻「歴史の感興」を若い頃、岩波新書で読みました。あの魅惑の書に続きがあったと知ったのは、この集英社文庫版が出た時でした。大著「ゴヤ」を上梓した後、スペインで暮らし、各地を巡り、歴史の傷痕を目の当たりにして、よくぞ書き残してくださった、と戦慄をおぼえつつ読み終えました。

2022/01/10

下巻では、20世紀のスペインが直面する政治や民族、文化、言語についての諸問題についての著者の所感が記されています。

著者は、フランコ体制下のスペインを、当地の人びとがどのように生きてきたのか、また、その後に訪れた時代のなかで、彼らがこの時代の記憶をどのように抱えてきたのかという問いを掲げ、断定的な議論を避けながらも、問題の深淵を読者とともにのぞき込もうと試みています。また、カタルーニャ州やバスク地方の独立運動に触れて、外国人として一方の見かたに肩入れすることを避けながらも、独立をめざす当地の人びとの意志に強い印象を受けたことが率直に語られています。