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カレル・チャペックの闘争 の商品レビュー

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2024/08/18

チャペックは作家としてだけでなく、ジャーナリストとしての顔もありました。 そして彼は第二次世界大戦直前、ナチスに呑み込まれゆくチェコを憂い、筆で抵抗を続けました。 この本ではそうしたチャペックのファシズム批判や共産主義批判を読むことができます。

Posted byブクログ

2012/03/17

71年前1938年12月25日に48歳で死去したカレル・チャペックは、チェコスロバキアの純文学もSFもミステリーも書いた小説家・劇作家・童話作家・評論家・旅行作家・ジャーナリスト。 SFの2作品『R.U.R.』と『山椒魚戦争』はあまりにも有名ですが、ちょうど時代的にヒトラーとナ...

71年前1938年12月25日に48歳で死去したカレル・チャペックは、チェコスロバキアの純文学もSFもミステリーも書いた小説家・劇作家・童話作家・評論家・旅行作家・ジャーナリスト。 SFの2作品『R.U.R.』と『山椒魚戦争』はあまりにも有名ですが、ちょうど時代的にヒトラーとナチを痛烈に批判したばかりに迫害され、保守化していくチェコ政府に対して新聞に依拠して健筆を振るうといった、ジャーナリスティックな活躍もしたかなりの人物だったことはあまり知られていません。 透明人間はH・G・ウェルズで、フランケンシュタインはメアリー・シェリー、ドラキュラはブラム・ストーカーで、アンドロイドはヴィリエ・ド・リラダン、ハエ男は森高千里で、そしてロボットはこのカレル・チャペックの『R.U.R.』という戯曲によって1920年に書かれ創造されたという、まったく驚異的な先駆性に驚く以外にないのですが、このことはあまり喧伝されているとはいえませんので、不思議というより彼のせっかくの名誉が台無しなのでひとり憤慨しています。 この本は、SF作家としてだけ著名な彼のもう一つの重要な面、ジャーナリストとしての面目躍如を大いに示す書物です。 ナチスドイツの暴挙が迫りくるチェコで、コミュニストでない眼で正義を見つめた孤立無援の一人の新聞記者の雄姿が、ここに歴史の証言として存在しています。 現代でも十分以上に参考になる示唆に富むコラムは、それになんと言っても面白いのです。そして、120年前の1890年1月9日に生まれたカレル・チャペックには、隠されたもう一つの顔があります。 それは、『園芸家12カ月』という本を出すほどの植物好きだったということです。 これについては、彼の名前を一躍世界的に有名にした、今やSFの古典といってもいい『山椒魚戦争』や『R.U.R.』の影に隠れているように、奇しくも同時代で同じく、あの『車輪の下』や『デミアン』のヘルマン・ヘッセが『庭仕事の愉しみ』という、やはり植物に対しての愛情を書いていることと符合しています。 ええっと、失礼ながらヘッセの方は85才まで長命だったのですからのんびり庭いじりも出来たでしょうが、チャペックはというと、どうしてあんなにも激しい時代との格闘で多忙を極めたはずなのに、どこにそんな時間があったのかと首をかしげてしまうほどです。 違うんだと思います。逆に彼は、本質的には穏やかな静かな人で、思索にふける詩人タイプ、植物に話しかけるロマンティックな人だったのだと思います。 そうでなければ、空のむこうの雲や地平線や青い山の美しさと同じように、足の下にある土が美しいと感じることなどできないはず。そうでなければ、旅行に出かけても庭の植物たちが気になって少しも楽しめないなどということが起こり得ないはず。 植物と土と交感して得た充溢したエネルギーが、生きることへのアクティブな姿勢を作りだし、ユーモラスな表現や侵略者に対しての強い意志を生むのだと思います。 ただ歴史の皮肉というか浅はかな評価というか、ヘッセがそうだったらしいですが、当時の評論家やジャーナリズムは、こういう園芸への興味を表明する彼らに、時代の要求から免れるために現実逃避する作家として見て無視や軽蔑したといいいますから、なんとも彼らには生きにくい時代だったと察します。

Posted byブクログ