マシアス・ギリの失脚 の商品レビュー
ナツデス、ミナミノシ…
ナツデス、ミナミノシマニイキマショウ・・・。そして長い長い話を読みましょう。カップラーメンをお供に。
文庫OFF
池澤夏樹の世界観がこ…
池澤夏樹の世界観がこの小説には凝縮されている。
文庫OFF
初夏の爽やかな暑さに身を委ねる季節、真夏の照り返す日差しに汗ばむ季節。そんな時にゆったりとじっくりと、ずっと読んでいたい物語。 人は生まれる前は鳥で、死んだ後も鳥だった。そんな文化が残る架空の南島ナビダード。大統領マシアス•ギリがどのようにその地位まで登り詰めたか、そして転がり...
初夏の爽やかな暑さに身を委ねる季節、真夏の照り返す日差しに汗ばむ季節。そんな時にゆったりとじっくりと、ずっと読んでいたい物語。 人は生まれる前は鳥で、死んだ後も鳥だった。そんな文化が残る架空の南島ナビダード。大統領マシアス•ギリがどのようにその地位まで登り詰めたか、そして転がり落ちるのか。島民の噂話や寓話を散りばめながら描かれる彼の生涯は、雄大で、野心的で、美しく、儚い。 この物語が私に与えてくれた感傷と教訓は、亡霊のように、永遠に失われないだろう。
Posted by
どう捉えたら良いか、難しかった。 荒唐無稽なところが多々出てくるけれど、笑って良いのか、真正面から受け止めたほうが良いのか。かと思えば、濃密な文化論的な部分も出てくる。ある種のファンタジー(バスと慰問団が失踪する)でもある。明瞭な風景が思い浮かぶような描写力は、さすが。 でも、主...
どう捉えたら良いか、難しかった。 荒唐無稽なところが多々出てくるけれど、笑って良いのか、真正面から受け止めたほうが良いのか。かと思えば、濃密な文化論的な部分も出てくる。ある種のファンタジー(バスと慰問団が失踪する)でもある。明瞭な風景が思い浮かぶような描写力は、さすが。 でも、主人公のマシアス・ギリ大統領は、本当は何を目指していたんだろう。失脚することは物語の最初から決まっていたが、目指すところには、結局、たどり着けなかったというか。まだ頭が整理できていない。
Posted by
大江健三郎風に言えば実に「たくらみ」「楽しみ」に満ちた大人のエンターテイメント小説だと思った。いや、スリルやサスペンスでこの作品に比肩するものを探すのはそう難しくないだろう。けれど架空の国と大統領に託して語られるのは政治が孕むきな臭さと老いの哀しみ(別の言い方をすれば「死すべき定...
大江健三郎風に言えば実に「たくらみ」「楽しみ」に満ちた大人のエンターテイメント小説だと思った。いや、スリルやサスペンスでこの作品に比肩するものを探すのはそう難しくないだろう。けれど架空の国と大統領に託して語られるのは政治が孕むきな臭さと老いの哀しみ(別の言い方をすれば「死すべき定め」にある人間存在の哀しみ)、そしてユーモアの三位一体だと思われる。登場人物たちが実に愛らしい。彼らは歴史の中のコマに過ぎない。誰一人永遠に名を残さない。それは私たちも同じだが、ならば彼らに倣ってままならない生を楽しもうではないか
Posted by
谷崎潤一郎賞受賞のごちゃ混ぜ闇鍋長編小説。 現実主義にスピリチュアルや形而上学を組み合わせながら、作品は綺麗に纏まり読みやすい。途中に何度か挟まるバスの話など、構成もユーモラスで飽きない。 500〜600pが一瞬で過ぎ去る、個人的作者の作品群ではナンバーワン。
Posted by
始まりはガルシアマシアスの族長の秋の世界観を連想させたのだが、族長の秋の大統領とは違い、本作の主人公であるマシアス・ギリ大統領は優れた政治家でありながら、多くの人が感情移入できるであろう普通の人だった。 政治、経済、国際問題、戦争、民族、歴史、霊的な力など の多くの要素をぎゅうぎ...
始まりはガルシアマシアスの族長の秋の世界観を連想させたのだが、族長の秋の大統領とは違い、本作の主人公であるマシアス・ギリ大統領は優れた政治家でありながら、多くの人が感情移入できるであろう普通の人だった。 政治、経済、国際問題、戦争、民族、歴史、霊的な力など の多くの要素をぎゅうぎゅうに詰め込んであり、舞台は小さな島国でありながら大きな世界の広がりを作品の中に感じることができる。 タイトルの通り失脚の話であるが、訓話的なところはなく、あくまでただの物語。人間と、人間よりももっと大きな計り知れない存在、世界、あるいは宇宙の意志のようなものが介在する物語になっている。この作品がどんな話かということはとても一言ではまとめきれず、まるで現実のようにどこまでも広がっているような読後感がある。 バス失踪の不思議なエピソードはガルシアマルケス的、どこか陰謀的な大きな力の存在はピンチョン的、最後の物語のくだりはフォークナーのアブサロム、アブサロム!を連想させた。
Posted by
主人公のマシアスギリは人間として共感できる、能力ある魅力的な男として丁寧に描写されているが、一国の独裁者であるが故に行動に綻びが生ずる。 表面は上手く運営できているようでいくつかの不穏の前兆が現れる。決定的なのは島の環礁に外国のタンカー誘致を决めた件。 人間を超えた、自然の霊力の...
主人公のマシアスギリは人間として共感できる、能力ある魅力的な男として丁寧に描写されているが、一国の独裁者であるが故に行動に綻びが生ずる。 表面は上手く運営できているようでいくつかの不穏の前兆が現れる。決定的なのは島の環礁に外国のタンカー誘致を决めた件。 人間を超えた、自然の霊力のようなものが、彼の存在を許さなくなる。霊的なものと現実の人間が渾然一体となっているところがこの小説の味わいだと思う。 マシアスギリの来し方、育ててもらった人や関係をもった女性も興味深く描かれ、自分で頑張って生きているようでも、生かされている、という感覚を持った。
Posted by
ファンタジー、アドベンチャーの無い、ミステリーの無い純粋なファンタジー。ちょっと、入り込み難かった。細部まで、よく書き込まれているという事かもしれないが、その分テンポが鈍くなっている感じもする。失脚に追い込んだのは誰なのか、何故なのか、その辺りが理解できないのも、辛いところ。
Posted by