濡看護婦・二十三歳 の商品レビュー
背徳と退廃の悲劇
ヒロインは23歳の看護婦(敢えて看護婦と言う)。サブタイトルの『私を狂わせた少年』は主人公であり実弟である。他に対抗ヒロインと言うべき看護婦がもう1人出てくるが、これは昨今の、主人公を奪い合うような甘々な存在ではなく、物語の幕引きをも担う敵役である。この対抗ヒロインには男がいて、...
ヒロインは23歳の看護婦(敢えて看護婦と言う)。サブタイトルの『私を狂わせた少年』は主人公であり実弟である。他に対抗ヒロインと言うべき看護婦がもう1人出てくるが、これは昨今の、主人公を奪い合うような甘々な存在ではなく、物語の幕引きをも担う敵役である。この対抗ヒロインには男がいて、メインヒロインにも彼氏がいる。メインの姉弟が懊悩と葛藤を繰り返しながら最終的には結ばれていく過程で、対抗ヒロイン×男、対抗ヒロイン×主人公、メインヒロイン×彼氏といった官能描写が、伏線を含みながら展開されていく。また結末に続く仕返し的姦計により、メインヒロインが対抗ヒロインの男に弄ばれる展開もある。そして、結末は唐突な悲劇である。 官能ありきのストーリーではなく、あくまでも小説。姉と弟の心の裏側を淡々と綴っていく中に官能要素が介在するドラマである。今となっては実に古き善きダークな誘惑系官能小説と言わねばなるまい。 官能描写も文字通り「描写」である。台詞がとても少なく、姉や弟の視点に立ちながら、それぞれの悶々と秘めた想いとともに描写している。ビジュアルイメージを喚起する描写でもなく、起伏に富んだ官能でもないため、フツーに読んだだけでは物足りないこと限りなしだが、紆余曲折を経て、様々な障害を乗り越えて念願が成就するクライマックスと、姉弟相姦という許されざる関係を戒める(当時らしい)結末までの、大人の淫靡な物語と解釈すべきであろう。
DSK
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