遠い水平線 の商品レビュー
1番好きな作家の1人である須賀敦子さんなのに、翻訳を読むのは初めてで、そして改めてさらに好きになった。エッセイの時の個性は消しつつも、驚くほどに気持ちの良い文章の読み心地は、流石。殺人事件以上探偵小説未満の幻想的な物語も最高に好みな一冊。すごく好き。
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タブッキは本当にどんなに臭くて暑そうな場面を描いても、陰鬱で死が色濃く影を落とす場面を描いても、謎の透明感がある作家だな〜。話の筋は正直あんまりよくわかってないけど、それでも読んでいるとスッと風が小径を通っていくような感じがして心地よかった。長い休みにもう一回ゆっくりゆっくり読み...
タブッキは本当にどんなに臭くて暑そうな場面を描いても、陰鬱で死が色濃く影を落とす場面を描いても、謎の透明感がある作家だな〜。話の筋は正直あんまりよくわかってないけど、それでも読んでいるとスッと風が小径を通っていくような感じがして心地よかった。長い休みにもう一回ゆっくりゆっくり読みたい。
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まるで呼吸するかのような一文、一文の、なかで、呼吸を続けることとやめ(ざるをえなくな)ることについて、心が考える。考えた。港町が舞台なのは、其処そのものがさまざまな――もしかすると彼方や此方も含めた――場所への出入り口になるからかなと、ひとまず呼吸の終わった本を閉じて、考えたり、...
まるで呼吸するかのような一文、一文の、なかで、呼吸を続けることとやめ(ざるをえなくな)ることについて、心が考える。考えた。港町が舞台なのは、其処そのものがさまざまな――もしかすると彼方や此方も含めた――場所への出入り口になるからかなと、ひとまず呼吸の終わった本を閉じて、考えたり、した。
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遠い水平線の果てで天と地が結び付くように、私も貴方と一つになってしまえたら。生と死の境目も、緩やかに飛び越えてしまいたい。身元不明の遺体の正体を追い続けるスピーノの動機は、「彼は死んでいるのに、わたしは生きているからです」。世界の境界線を融解させてしまおうとする彼の振る舞いは正し...
遠い水平線の果てで天と地が結び付くように、私も貴方と一つになってしまえたら。生と死の境目も、緩やかに飛び越えてしまいたい。身元不明の遺体の正体を追い続けるスピーノの動機は、「彼は死んでいるのに、わたしは生きているからです」。世界の境界線を融解させてしまおうとする彼の振る舞いは正しくスピノザ的汎神論であり、自分自身に対する呼びかけでもある。吐息交じりに紡がれているような柔らかなテンポで記される、須賀敦子さんの訳文がとても心地よい。それは半醒半睡のなかで見る夢のように、この世界に浸っていたいと思わせてくれる。
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インド夜想曲を彷彿とさせるような幻想的な物語。 ヴォネガットの「スローターハウス5」を読んだ直後だったからか、生と死という共通のモチーフが感じられた。 ヴォネガットの作品では、人間はある時間で見れば生きているし別の時間で見れば死んでいて、悲しむべきものは何もないというトラルファマ...
インド夜想曲を彷彿とさせるような幻想的な物語。 ヴォネガットの「スローターハウス5」を読んだ直後だったからか、生と死という共通のモチーフが感じられた。 ヴォネガットの作品では、人間はある時間で見れば生きているし別の時間で見れば死んでいて、悲しむべきものは何もないというトラルファマドール的な考え方が展開される。 こちらは水平線をはさんだ空と海のように生と死があるイメージ。 もちろんどちらも作風はまるで異なるのだが不思議なつながりを感じた。 それもまた本書でタブッキが言うところの「偶然」なのだろう。
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タブッキの不思議な感覚世界に揺らめき溺れました。天と地の境目にうっすらと引かれる水平線。くっきりと分かれているようで、けれどもその境目は淡く消え入りそうに曖昧で…この作品の現実と幻想の境目でも行きつ戻りつその交わりのところでふわふわ漂ってました。ある夜他殺死体で運ばれた男の正体を...
タブッキの不思議な感覚世界に揺らめき溺れました。天と地の境目にうっすらと引かれる水平線。くっきりと分かれているようで、けれどもその境目は淡く消え入りそうに曖昧で…この作品の現実と幻想の境目でも行きつ戻りつその交わりのところでふわふわ漂ってました。ある夜他殺死体で運ばれた男の正体を探索し始めた、死体置き場の番人スピーノ。その探索の先に到達する結末とは。結末を迎えても気持ちの波紋は広がり続け、その謎と意味を模索しているところ。とりわけ夢の話や最後の場面が印象的。終始曖昧模糊で謎めいていてふんわりした読後感。
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私が持っているものは乱丁っていうんですかね、同じ章が二回入ってるんですよ。ってことは、その章がごそっと欠けてる版を持ってる方がいるのかな。で、読み終えたばかりの章がまた始まったんで、敢えてそういうスタイルにしたのか、斬新だな、と思ったんですよ、最初。わざとだって。ストーリーが迷宮...
私が持っているものは乱丁っていうんですかね、同じ章が二回入ってるんですよ。ってことは、その章がごそっと欠けてる版を持ってる方がいるのかな。で、読み終えたばかりの章がまた始まったんで、敢えてそういうスタイルにしたのか、斬新だな、と思ったんですよ、最初。わざとだって。ストーリーが迷宮めいているから、こういう手法もありかなって。でも冷静に考えたら乱丁ですよね。あ、乱丁ってページが乱れてるのか。でも乱丁が納得できる内容なんですよ。追う者が追われる者に転じる瞬間が鮮やかすぎる。あとインドの美少年とお兄さんのエピソードが美しい。
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須賀敦子さんはエッセイをいくつか読んでおり、そ文章のうつくしさは知っていたけれど、訳文としてあらためて触れた。きれいな日本語にうっとりしながら読んでいるうちに最後まできてしまった…。肝心の物語は、最後につじつまがあうエンディングが用意されている、いわゆる「物語」ではないので、おや...
須賀敦子さんはエッセイをいくつか読んでおり、そ文章のうつくしさは知っていたけれど、訳文としてあらためて触れた。きれいな日本語にうっとりしながら読んでいるうちに最後まできてしまった…。肝心の物語は、最後につじつまがあうエンディングが用意されている、いわゆる「物語」ではないので、おやと思ったら最終ページであった。 訳者あとがきの一文がちょうどよい説明となるかもしれない。 「じっさい、私たちは、あまりにも堅固な岩のうえから、ものを見るよう訓練されすぎたのかもしれない」。 何度か再読すべき本かと思う。
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ストーリーの理解に関しては力及ばず。 謎に取り残されて放置くらったような気分。 ただ、ひとつひとつの小さなエピソードや全体の雰囲気には、また浸りたい味わいがある。
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タブッキが好きだ。と、つい最近書いたような気がする。須賀敦子が好きなのかなぁ、これも書いた。どっちも、なのだ。巻末に、訳者須賀敦子によって『海底二万里』が引き合いに出されている。彼女が手に取ったという(おそらく)福音館版のなら私も持ってる。ひさしぶりにネモ船長に会いにいこうか、と...
タブッキが好きだ。と、つい最近書いたような気がする。須賀敦子が好きなのかなぁ、これも書いた。どっちも、なのだ。巻末に、訳者須賀敦子によって『海底二万里』が引き合いに出されている。彼女が手に取ったという(おそらく)福音館版のなら私も持ってる。ひさしぶりにネモ船長に会いにいこうか、と思った。
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