食べられる女 の商品レビュー
筆者は、これを20歳代の終わりに書いたんだという感慨がある。 デヴュー作とは言え、滑らかで堂々とした筆の滑りは現代でも十分に通用すると思う。 発刊された時の社会の空気感(幼児だったので憶測)からすると真にフェニズムの旗手! アメリカに起こったブーム、ジョーンバエズとか、ジェーン・...
筆者は、これを20歳代の終わりに書いたんだという感慨がある。 デヴュー作とは言え、滑らかで堂々とした筆の滑りは現代でも十分に通用すると思う。 発刊された時の社会の空気感(幼児だったので憶測)からすると真にフェニズムの旗手! アメリカに起こったブーム、ジョーンバエズとか、ジェーン・フォンダとか思い浮かべて・・読む。 3部構成の展開、コアは2部だが、実際の面白みは3部。 登場するのは男性がピーター、ダンカン、そして大学院生3人男(フィッシュ・・) ピーターとマリアンの関係はその後の展開を考えると気遣いすぎて読み手はイラつく・・いかにも男っていう立ち位置にピーターが見えるだけに。 だからかな、ダンカンといちゃつき始め、関係性が浮遊するあたりではフェミニズムの個々人的在り方の重さを考えさせられた。 比する形で述べられる子持ちクララ、結婚拒否のエインズリー・・それぞれの男との相対の姿は、読み手に面白さを倍増させているか・・な。 クララに対して他人事みたいに「妊娠、出産、育児」の論理をぺらぺらしていたマリアンに雲がかかって行くと男より「自分だ」と認識に繋がるのは、21世紀でも変化ない論理だと思ってしまう。
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2冊目はカナダになりました。 マーガレット・アトウッドなら、「侍女の物語」は読んだから、いけるだろうと判断。 1960年代のカナダ、大学を卒業して市場調査の会社に就職したマリアンは、すでに仕事にやりがいを見出せなくなっている。 かといって恋人のピーターは、結婚を死刑宣告みたいに捉えていて、とても「結婚して仕事をやめたい」という雰囲気は出せない。 そもそもマリアンだって、結婚したいかどうか自分の気持ちがわかっていない。子どもが3人もいて、大して幸せそうにも思えないクララやら、非婚主義のエインズリーやら、マリアンが結婚に畏れをなす原因はそこらじゅうにある。 ある時ちょっとしたきっかけで、ピーターと婚約することになったマリアン。その一方、偶然出会った大学院生のダンカンと次第に関係を深めていく。 なんとなく結婚して子どもを産んで,そうやって人並みに生きていくのだろうと思っていたマリアンだが,なんとなく流されていくことを拒否するように,やがて体に異変が起きる・・・。 三部構成で,第一部はちょっとイライラしました。。女性が描く女性は辛らつだなーというのと,マリアンがピーターに気を使いまくることに苛立つのであります。 第二部に入ると一気に面白くなります。エインズリーとレンの関係とか,ダンカンとか,クララとか,3人OLとか,それぞれが個性的で引き込まれる。 そしてクライマックス,マリアンがこのまま結婚するのは無理,命を張る位無理,とやっと認め(ずっと気づいてはいたはず),「食べられる女」の意味が明らかに。 第三部ではすっかりダンカンのこともどうでもよくなっているマリアンが印象的です。 いみじくもアトウッド本人が述べるように,決して「昔の話」とはいえない,今読んでも通ずるものが多いお話でした。 ところで,最後の最後に,芥川賞をとった本谷有希子「異類婚姻譚」みたいだなと思いました。あっちは食べられませんし,支配とは違うけど,マリアンの「私を壊そうとしたでしょう」っていうあたりはとっても近いような気がしました。結婚しようがするまいが,子どもがいようがおるまいが,現代文明社会で女子が生きていくのは,つねに不安定な自己認識と向き合っていく難しさがあるのでしょうねえ。
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