アフリカの底流を読む の商品レビュー
アフリカの根底に流れ…
アフリカの根底に流れている深く複雑な問題について整理して書かれています。ジャーナリストが的確に捉えたアフリカの現状です。
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※このレビューにはネタバレを含みます
1996年刊。毎日新聞外信部所属(アフリカ各国の特派員歴あり)。少し古い書だが、5年間の特派員歴を活かしたレポートは、アフリカ情報の少ない現状では貴重。部族対立、不自然な国境線、宗教対立、腐敗、民衆の教養・知識の不足、武器の流入等、短期間では到底解決し得ない問題が山積している事実を突きつける。余り理想主義に走るべきでないのだろうが、著者の目線が治安維持優先、暴力的支配の容認に傾きがちな感は残る。ただ、実際、日本の戦国時代の様相に類似し、著者の記述も混乱する面もあって、悩ましい状況なのは十分伝わってくる。 幕末、植民地支配を逃れた理由として分厚いテクノクラート層(幕臣の存在)、庶民の高い識字率(男性の4割とも6割とも言われる)、江戸時代という長期間の平和による知識蓄積・生産能力の発展等の面が挙げられようが、同様の果実をアフリカ諸国にもたらすのは至難(いっそのこと、全世界中で留学生を50万人くらい受け入れたら変わるのかも、と夢想してみる)。本論とは関係ないが、アフリカ各国の日本人外交官、外務省職員、特派員は新書レベルのレポートを刊行する必要性を感じるところ。 なお、武器や弾薬の流入、その根の部分は触れられず、報告対象国は、ジンバブエ、ケニア、モザンビーク、アンゴラ、ルワンダ、ブルンジ、ソマリア、エチオピア、エリトリア、ナイジェリア、リベリア、シエラレオネ、ガンビア等など。
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アンゴラの現政府はポルトガルからの解放闘争を経てマルクス主義を掲げたが、旧ソ連の崩壊以降は着実に市場経済への移行を進めた。 これに対し、民族同盟には常に武力で対抗する破壊集団というイメージが付きまとい、そこからうまれる政府側が善、民族同盟が悪、との受け止め方が西欧諸国では強かった...
アンゴラの現政府はポルトガルからの解放闘争を経てマルクス主義を掲げたが、旧ソ連の崩壊以降は着実に市場経済への移行を進めた。 これに対し、民族同盟には常に武力で対抗する破壊集団というイメージが付きまとい、そこからうまれる政府側が善、民族同盟が悪、との受け止め方が西欧諸国では強かった。 ところがアンゴラでは民族同盟の人気は根強く善悪の判断だけで単純に割り切れないものがあった。 旧ソ連が政府側アンゴラ解放人民運動に武器とキューバ兵を送りアメリカと南アフリカの旧政権が反政府ゲリラアンゴラ全面独立民族同盟側を支援し、16年にわたって代理戦争を繰り広げた。 旧ソ連の崩壊でアンゴラ政府も社会主義を放棄し、米ソキューバはすべて手を引いたが内戦だけは残った。91年5月に米ソポルトガルらの調停の下、戦闘終結の和平協定に正式調印した。 エチオピアは独自の文化を持ち、シバの女王から3000年の歴史を誇り、キリスト教コプト派の伝統が流れる。黒人アフリカ諸国で唯一、ほとんど独立を守り続け、独自の文字を持つ。コーヒーの飲み方にも独自性がある。 エチオピアには言語の異なる部族が80以上もいる。
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(2003.12.31読了)(2000.08.08購入) ジンバブエ、ナイジェリア、エチオピア、ケニア、リベリア、ソマリア、ベニン、スーダン、アンゴラ、ザイール、ルワンダ、ブルンジ、シエラレオネ、南アフリカ、ザンビア、マラウイ、モザンビーク、ナミビア、これらがこの本に出て来るアフ...
(2003.12.31読了)(2000.08.08購入) ジンバブエ、ナイジェリア、エチオピア、ケニア、リベリア、ソマリア、ベニン、スーダン、アンゴラ、ザイール、ルワンダ、ブルンジ、シエラレオネ、南アフリカ、ザンビア、マラウイ、モザンビーク、ナミビア、これらがこの本に出て来るアフリカの国々の名前なのだが、聞いたことがない名前だという国もあるだろうし、聞いたことがあるとしてもアフリカ大陸のどの辺にあるかまでわかるという人はそんなに多くはないと思う。 中東については、新聞でもずいぶん取り上げられるけれど、アフリカの国々はまだまだ知られていない。 この本は、そのアフリカについて書いてある本です。 日本は、同じ人種、同じ言葉、同じ習慣、同じ方向、安全で楽しい町、あふれる商品。 アフリカは、同じ国なのに違う言葉が200もある事態が当然だったという。国をまとめて同じ方向に向かせようとすると「独裁政権」になってしまうという。 民主化の要求に応じて複数政党制が導入されても政党は部族ごとの利益代表団となり国内分裂になると権力側は言うのだが、どこの政治家も利益代表だから反対の理由にはならない。 近代化の基本は、読み書きそろばんというのが普遍的な原理だろうが、言葉の統一が難しいのだからそれもなかなかできない。言葉の統一で手っ取り早いのは、旧宗主国の言葉を使うという手もあるのだろうけれど、それでは、民族の独自性が失われてしまう? 著者の、アフリカに対するまとめは、「経済的な競争意識の弱い社会」ということで、「独立後、社会主義路線に走った国々では、一党独裁政治の下で経済も国営化され、競争意識を失った。自由主義路線を掲げた国でも、大統領と周辺一族が富を独占し、自由な競争による相互発展が起き難かった。部族主義はコネの蔓延に直結し、公正な競争を阻害した。」 といっている。 社会主義というのは、発展には結びつきにくいということか。 自由主義路線は、どこも富の独占や、コネの蔓延を伴うもののようで、アメリカや、日本もほうっておくと似たようなことになるし、アジアの国々でも同様だ。 多くの人民の犠牲の下に、是正しながら、少しずつ進めてゆくしかなかろう。 著者 福井 聡 1954年生まれ 1980年 毎日新聞社入社 1990年-1995年 アフリカ特派員 (「BOOK」データベースより)amazon なぜアフリカの国々は、独立後数十年を経ても一人立ちできず、内戦が多発し、貧困から脱却できないのか。多様な形をとって噴き出す問題の根には、部族社会であることが深く関わっている。ブラックアフリカのただ中で取材を重ねたジャーナリストが、「部族社会」をキーワードに、「民主化」の抱えるジレンマ、中央対地方の対立、内戦の行方、資源大国の迷走などの構図を描き出し、アフリカの素顔に迫る。
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