人間の集団について 改版 の商品レビュー
ベトナムに同情を寄せ…
ベトナムに同情を寄せながらも結局はアメリカからしかベトナム戦争を見ていなかったことに気づかされた。司馬遼太郎さんがベトナムからベトナムの動向を書き記す
文庫OFF
多くの知性ある考察が面白い。自分もベトナムに7年間いたが、ベトナム人の気質や考え方に納得できるところが多かった。
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1973年に司馬遼太郎がベトナムを訪問。そしてサンケイ新聞に連載したものだそう。 つまりは、「街道をゆく~ベトナム~」だと言って過言ではありません。 同年1月にアメリカ軍はベトナムから撤退。そしてサイゴン陥落が1975年。 アメリカにとってのベトナムでの「敗北」が決まっているけ...
1973年に司馬遼太郎がベトナムを訪問。そしてサンケイ新聞に連載したものだそう。 つまりは、「街道をゆく~ベトナム~」だと言って過言ではありません。 同年1月にアメリカ軍はベトナムから撤退。そしてサイゴン陥落が1975年。 アメリカにとってのベトナムでの「敗北」が決まっているけれど、まだベトナム戦争はやっている。 個人的に「街道をゆく」の海外編は本当に外れが無いと思っており、この本も。ベトナムについてほぼ何も知らずに読み始め、ぐいぐい引き込まれる。 引き込まれた挙句に途中で一度読むのを中断して、ベトナムについての新書を2冊読んでしまった。 ベトナムにとっての南北問題。中国との関係。産業革命による近代化を経ずして、いきなり現代社会に放り込まれる国の悲劇と喜劇。安易な「正義」についての論にならず、タイトル通り「人間の集団について」。つまりは国家についてということか。それが「国家」ではなく「人間の集団」というところの味わい。 これは、まだ若い世代に「左翼的、共産党的な言語」が「正義」の匂いをまとっていたであろう70年代よりも、社会主義/共産主義が半崩壊している現在のほうが、むしろフラットに読めて面白いのでは。
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今から45年近く前に書かれた司馬遼太郎氏のエッセイ。 このエッセイは1970年代、アメリカ主導のベトナム戦争が失敗し、アメリカは撤退したが、ベトナム戦争は内戦の様相を持って継続されている時のもの。氏がベトナムを訪問し、そこから感じたことを歴史的洞察を添えて語っている。 人間の集団という表題のテーマが直接的に語られることはないが、底抜けに人のいいベトナム人が同民族同士でよく分からないもののために殺し合うという歯痒い気持ちが語られている。 またベトナム戦争というものの異常さというものにも語られ、自分達の捻り出せる力を超えた力を持ててしまうことの恐ろしさについても語られている。 この本を通じて、ベトナム人ほど日本人に近い民族はないのかもしれないと思ったし、国家の成り立ちや成熟にはその国が持つ歴史が重要であると感じた。
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1973年、米軍の最後の部隊が撤退して3日後にサイゴン入りをしたという司馬遼太郎の紀行記。 私は去年よりベトナム戦争に興味を持ってちょくちょく映画や本を観たり読んだりしているのだが、そんな中でもこの本は非常に面白かった。 ベトナムという国の気質と状況が司馬さんなりに分析されてい...
1973年、米軍の最後の部隊が撤退して3日後にサイゴン入りをしたという司馬遼太郎の紀行記。 私は去年よりベトナム戦争に興味を持ってちょくちょく映画や本を観たり読んだりしているのだが、そんな中でもこの本は非常に面白かった。 ベトナムという国の気質と状況が司馬さんなりに分析されているのはもちろんとても面白いのだが、それ以上に、タイトルのとおり「人間の集団」がもたらす市民への、ひいては<われわれ>への力について書かれており、とても感傷的な気分になった。 「ことわっておかねばならないが、私は解放戦線をののしっているのではなく、政治が至上のものだという政治正義という、内実は人間に対して悪魔的なものかもしれない観念をののしっているのである」 おそらく、私はこのような文章がとても好きなのだろう。そして、ベトナム戦争においてのベトナムが描かれるとき、それはとても色濃く表れるような気がする。それは民衆のいじらしさだとか、生活のたくましさだとか、そういうものを賛美している文章という意味では決してない。しかし、人間をしょせん欲望の塊だと嘆くものでもない。 それは、素朴な暮らし――作中の言葉で言えば、食べる・寝る・愛する・祈るなど――を奪われてもなお、人間の尊厳を守り律する何かである。ベトナム戦争におけるベトナムの人々を読むとき、私はそれをとても感じるのだ。 「――ベトナムはどうなるのであろうか。 ということを、サイゴンにいるあいだじゅう考え、ひとにもきいたが、ついに答えがなかった。いまのままでは、ハノイとサイゴンとそして解放戦線がたがいに殺しあってついには一人残らず死んでしまう以外の見通しはない」 当時と今の状況は大きく変わっており、司馬さんの予測が現在と異なっている部分もあるものの、それを含めて、多くを考えさせられる本だった。 あるいはそれは、被害者面をした一方的な見方かもしれない。事実、私の中でベトナムがどんどん優しく、懐かしくなってゆくのを、一体どうしたものかなぁと思う。しかし、これを機に歴史に興味を持ち始めたので、これからもベトナム戦争だけでなくいろいろな本を読んでいきたい。
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内戦下のヴェトナムの取材を通して、国際政治、20世紀のアジア、人間の集団などにまつわる問題を論じています。 読んでいて少し衝撃を受けたのは、料理屋で給仕をしている男性が著者に語った言葉です。24歳の時に日本軍が故郷に入るのを見たというその男性は、「あれからもう二十八年になります...
内戦下のヴェトナムの取材を通して、国際政治、20世紀のアジア、人間の集団などにまつわる問題を論じています。 読んでいて少し衝撃を受けたのは、料理屋で給仕をしている男性が著者に語った言葉です。24歳の時に日本軍が故郷に入るのを見たというその男性は、「あれからもう二十八年になります。まだベトナムでは戦争がつづいているのです」と語ったといいます。 太平洋戦争から朝鮮戦争を経てヴェトナム戦争に至るまで、アジア・太平洋地域で起こった一連の戦争を、「三十年戦争」と捉える観点があるということは知っていたのですが、それは日本のアジアへの侵攻からポツダム宣言の受諾を経て、アメリカとソ連の冷戦に至るまでの国際政治の流れを把握する、大きな枠組みを設定したときに初めて見えてくるものだと思っていました。ところが、くだんのヴェトナム人にとって、それはけっして国際関係を鳥瞰する抽象的な捉え方ではなかった、むしろはっきりとした実感を伴う見方だったと知って、驚いたしだいです。 もう一点気になったのは、巻末の「解説」の中で、フランス文学者の桑原武夫が述べている言葉です。桑原は、「私はつねづね日本に政治史や政治学説史の研究は盛んだが、現実の政治評論は乏しいのではないかと思っていた」と語ります。しかし、このことはむしろ逆の方向から捉えるべきではないでしょうか。つまり、自分の立っている場所から同心円状に理解を広げていくような情緒的な政治評論ばかりが溢れていて、政治史を踏まえて他者の立ち位置から見えてくる風景を理解しようとする努力が十分におこなわれてこなかったのではないかと考えます。 先のヴェトナム人の男性は、典型的な日本人が自分の立っている場所から同心円的に理解を広げていくことによっては捉えがたい、「他者」としてのヴェトナム人の生の声を語っているのではないかという気がします。
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戦争中のベトナムで書いた評論、随想の本。 いつもながらの見事な司馬遼節でベトナム人の性格、傾向、その歴史などを分析している。 一つ気をつけたいのが、良くも悪くも共産主義の実態やその終焉がまだ見えなかった時に書かれているということ。 時代の空気というものが臨場感を持って伝わってくる良書だと思いました。
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もう何十年前になるだろう。 ベトナムのハノイ。 駅前のドンロイホテル。 私はおなかをこわして、ベッドでこの本(中古)を読んでいた。私の中のアジアがそのとき目覚めた気がする。 その後帰国してからアジア関連の本を400冊以上読んだ。 結果、いま韓国関連の本にいきつき、韓国語を学ぶま...
もう何十年前になるだろう。 ベトナムのハノイ。 駅前のドンロイホテル。 私はおなかをこわして、ベッドでこの本(中古)を読んでいた。私の中のアジアがそのとき目覚めた気がする。 その後帰国してからアジア関連の本を400冊以上読んだ。 結果、いま韓国関連の本にいきつき、韓国語を学ぶまでになっている。 そのきっかけになった本です。
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著書が40年程前にベトナムに赴いた旅行記。人間性は国名や思想が変化しても変わらない、その時々に思わぬ形で特徴がクローズアップされるだけ。
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1973年に南ベトナムのサイゴンからメコンデルタ方面を旅した著者の「紀行文」。サンケイ新聞で3ヶ月間連載されていたそうです。75年にサイゴンが陥落して南ベトナムという国は消滅するわけですから内戦終了の直前にあたります。 紀行文といいましたが著者はなかなか移動していきません。ただつ...
1973年に南ベトナムのサイゴンからメコンデルタ方面を旅した著者の「紀行文」。サンケイ新聞で3ヶ月間連載されていたそうです。75年にサイゴンが陥落して南ベトナムという国は消滅するわけですから内戦終了の直前にあたります。 紀行文といいましたが著者はなかなか移動していきません。ただつらつらとベトナムと昔の日本の類似性からベトナム人を文化的・民族的に分析していいきます。私が特に面白いと思ったのは当時(70年代前半)のベトナムを大正時代以前の日本とを対比しており、そこから見ると近代日本(70年代)はすこし変になってきているようだと述べていることです。私は2010年にベトナムを旅行する機会がありましたが、そこで感じたベトナムは私が子供の頃の日本(70年代から80年代前半)のようでした。ずいぶん早く発展してきているようでこのまま日本を追い越していく勢いさえ感じましたが、今後はどうなっていくんでしょうね。 本書ではベトナムに限らず、アジア、人類、戦争といった幅広い問題について自論を展開していきます。さすがに昭和40年代の記述でちょっと古い感じもするけれど今読んでも面白いです。末尾の解説文では本書を知的刺激力に満ちた「第一級の思想書」だと言っていますが、まあそんな感じです。
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