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伽羅の香 改版 の商品レビュー

3.7

13件のお客様レビュー

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2023/12/25

やっぱり、宮尾作品は力強い! こちらも続きが気になり、一気に読みました。 しかし、宮尾先生は女性を幸せにしないですね…。

Posted byブクログ

2021/01/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ある地方の豪商の跡取りとして生まれた1人の女性の生き様が、彼女の目指す香道とともに鮮やかに描かれている。 本を読んで感じるのは、世の無常。そして執着、嫉妬といった人の業。 香や茶を嗜み、穏やかで完璧な男性に見えた貢の裏の顔や、上辺は葵へ賞賛を送るばかりだった上流階級の人びとが持っていた葵への嫉妬や蔑視の眼差しを知るたびに、葵は傷つく。それでも自らの誇りを失わず、自力で立ち上がってゆく。葵のまさに伽羅を彷彿させるような気高さ、「葵」の名の通りの高雅さは、多気村でも東京でも、また時代を経て私たちをも魅了し続ける。 ----------- 主人公葵は、三重の山奥の多気村で一番の有力者である本庄家唯一の跡取り娘として、満ち足りた生活を送っていた。幼少から密かに慕っていた従兄弟と結婚し、多気村を出るべきではないという両親の反対を押し切って、東京で2人の子どもとともに幸せな結婚生活を過ごしていたが、30代半ばで夫が病死。悲嘆に暮れていた葵に、夫の父親である貢は香の道を勧める。幼い頃、貢が伽羅の香をたくのを聞き、天の羽衣を見たような心地になったことを思い出し、以後夫の弔いも兼ねて香の道に進む。 その後、天性の才もあり、葵は香道の修得において目覚ましい成長を見せる一方で、身の回りは不幸が続く。両親が相次いで亡くなり、更に香の道を教えてくれた貢も急逝。貢の遺書で、葵は亡き夫の長年の裏切りと貢の隠し子の存在を知る。その後娘、息子も結核で失い、失意のどん底の中で、香の仲間から、日本の香道の発展のため、中心になって皆を導いてほしいと祈られ、決意。彼女の邸宅はサロンと呼ばれ、戦後の華族や上流階級の心の拠り所と言われるまでに隆盛を極めた。貢の隠し子もそばにおき、楠子の心の支えの一つになっていった。また、香道の先祖である宮家の道隆に手づから香を教える中で、葵の中に恋心が芽生え、生きている実感を得ていく。 しかし幸せな時間は束の間、葵が全て費用を出し、心を込めて執り行った道隆への免許皆伝お披露目会 の帰り道、葵は転んで骨折。それを引き金に脊椎カリエスが発症。入院生活を余儀なくされる中で、葵は楠子の裏切り、道隆への香の会の会員の裏切りを知り、世の無常を思う。病床で全てを失った彼女の脳裏に浮かんだのは、多気村の美しい四季や、山の生活。これまで疎み続けてきた多気村へ、多くの荷物を供に帰っていくところで物語は終わる。

Posted byブクログ

2020/05/17

香道をテーマとした小説。 香道ついては、全くと言っていい程、知識がなかったのだが、日本古来からの伝統文化の一つであり、その性質から、それに興ずるということは地位、富の象徴でもあったのだろう。 自分にとって興味深い発見でもあった。 香道は、香りを楽しむだけでなく、古の書物に記されて...

香道をテーマとした小説。 香道ついては、全くと言っていい程、知識がなかったのだが、日本古来からの伝統文化の一つであり、その性質から、それに興ずるということは地位、富の象徴でもあったのだろう。 自分にとって興味深い発見でもあった。 香道は、香りを楽しむだけでなく、古の書物に記されている香を再現する。その古に興ずる際、今のように視覚に訴えるものがないなか、五感の一つとして嗅覚を使っていた、ということだと思う。 確かに、映画などを観るよりも、嗅覚に訴えることは想像力、趣きが広がるような気がする。そして、とても贅沢なことかもしれない。 ヨーロッパでも香の文化があるが、文学的素養が必要という観点からも、日本の香道は、より高度な文化であると思う。 明治から昭和を生きる女性が主人公であるが、時代と共に変わりゆく家制度、身分制度に振り回されるなかにあっても、自尊の精神で凛として逞しく生きていく姿が清々しい。

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2015/11/03

まだ読んでいない宮尾登美子氏の作品があった!と手に取りました。 経済的に豊か過ぎる主人公故に、なかなかのめり込むことができなかった。 それでも、最後には村に戻る決心をしていく過程には、様々な人の思いが影響していた。 戻る場所があってよかったですね。 これほどに仕えてくれる使用人は...

まだ読んでいない宮尾登美子氏の作品があった!と手に取りました。 経済的に豊か過ぎる主人公故に、なかなかのめり込むことができなかった。 それでも、最後には村に戻る決心をしていく過程には、様々な人の思いが影響していた。 戻る場所があってよかったですね。 これほどに仕えてくれる使用人はいないでしょう。

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2013/08/10

今回はあんまり主人公に傾く事がなかったかな、結構自己ちゅぅだと思えてしまった。 それでも、人の中に亀裂を発生させる要因として、異性というのは大きいなと感じた。当たり前なのだけれども、何だか切ないですね。

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2013/04/17

きのねが面白かったし三重県の話なので読んだ。 こんなに主人公を好きになれない小説も珍しい! 親先祖のお陰で働くこともなく、裕福に暮らせるのにもっといい家だったらと家を恥じたり、捨てたり、戻ったり。 でもこんな環境で育ったらこうなってしまうのかな? いつか好きになるかもと最後まで読...

きのねが面白かったし三重県の話なので読んだ。 こんなに主人公を好きになれない小説も珍しい! 親先祖のお陰で働くこともなく、裕福に暮らせるのにもっといい家だったらと家を恥じたり、捨てたり、戻ったり。 でもこんな環境で育ったらこうなってしまうのかな? いつか好きになるかもと最後まで読んだけれど好きになれず。 モデルの方はいるのかな?

Posted byブクログ

2013/01/11

昭和の初めから30年頃にかけての、女主人公本庄葵の物語である。 三重県の大きな山林地主の1人娘の葵は結婚して(婿をとって)渋谷に住む。 しかし娘、息子、夫、両親を次々に失い、叔父(夫の父)の勧めで香道を学び始める。 戦中戦後のこととて学ぶ人は殆どいないが、付いた師は斯道の...

昭和の初めから30年頃にかけての、女主人公本庄葵の物語である。 三重県の大きな山林地主の1人娘の葵は結婚して(婿をとって)渋谷に住む。 しかし娘、息子、夫、両親を次々に失い、叔父(夫の父)の勧めで香道を学び始める。 戦中戦後のこととて学ぶ人は殆どいないが、付いた師は斯道の大家であり、それこそ奈良・平安から続く香木を所有しているような人であった。 香道について深い薀蓄があり、香道にまつわる多くのことが語られる。 問香、組香・・・、読みながら読者は多くを学ぶ。 勿論源氏香も出てくるが、香道は源氏香に止まるものではない。 それにしてもここに出る香道は非常に高尚で格式高く、費用の点から言ってとても庶民に関われるものではない。山林地主としての主人公の財力あってこその進行である。 著者宮尾登美子は作家としてまだ名の出る前、香道に関心をもって100枚程度の作品を書いたという。しかしどの出版社に送っても没であった。 やっと名の出たのち、主人公のモデルとなる人物の存在を知った。だがその人はもう亡くなっていた。 この人を知って宮尾はこの著作を書くことが出来た。 すでに大家となった宮尾に芸道ものは多いが、本書には特に思い入れが深いようだ。

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2012/11/05

<香りの表現力について>感心する。 文章のなかに埋められたうんちくの深さに驚く。 教養人というのであろうか。 不幸であって、不幸でない女性を描くのがうまい。 三重県一志郡(いちしぐん)多気村(たげむら)の出身の 本庄家に生まれ落ちた「葵」という女性の物語である。 生まれ落ちた...

<香りの表現力について>感心する。 文章のなかに埋められたうんちくの深さに驚く。 教養人というのであろうか。 不幸であって、不幸でない女性を描くのがうまい。 三重県一志郡(いちしぐん)多気村(たげむら)の出身の 本庄家に生まれ落ちた「葵」という女性の物語である。 生まれ落ちた家は、財はあるが、古い慣習にとらわれ、 様々な障害が待ち受けている。 家業を受け継ぐのは、葵しかなく、 いちづに人生をひたすら歩んでいく。 香道に関わっていくうちは、 何の不思議でもない状況でいくが、 日本香道の会を作る際に大きな変化が生まれる。 香道についての話が、 具体的にあっておもしろい読み物になっている。

Posted byブクログ

2020/01/26

宮尾登美子さんは、日本の伝統芸術に携わった女性を描くことが多い。「序の舞」の上村松園女史など、私にもすぐ思い浮かぶ。香道にはずっと興味があったが、おいそれと自分が習えるわけでもなく、興味止み難くて手にとった。 山持ちの大富豪の一人娘、本庄葵が主人公。幼少の時期より、明晰で美しく...

宮尾登美子さんは、日本の伝統芸術に携わった女性を描くことが多い。「序の舞」の上村松園女史など、私にもすぐ思い浮かぶ。香道にはずっと興味があったが、おいそれと自分が習えるわけでもなく、興味止み難くて手にとった。 山持ちの大富豪の一人娘、本庄葵が主人公。幼少の時期より、明晰で美しく、財力を背景に叶わないことはなかった。親戚の初恋の人と結ばれてからも、有能で優しい夫と出来の良い子に恵まれるが、夫・両親・義父・子供の全てを病で喪う。そんな彼女の支えは、馥郁たる香道の世界―。 たおやかに、しかしひたむきに道を極めてゆく姿や近しい人を失い裏切られても、自分の命が終わるまで清しく生きる様は確かに感動を呼ぶ。淡々とした筆致で物語が語られているので、大げささはないが 葵の心中にはどんなにか嵐が吹き荒れたことだろう。切々と胸に来るものがある。 むしろ柔らかく、優しい彼女の印象とは逆に、孤愁の影のつきまとう一生だったのではないか。背景にある豪奢な暮らしや香道の華やかさに目くらましされがちだが、悲しみや打撃が、お金で薄らぐわけではない。 身を支えるのは、この世にただひとり。自分だけ。何も残らずとも、自分だけは残る。それが分かっていてもなお、他者を求めること、信じたがることの、なんと儚く哀れなことか。私はそこに、人の可愛さ、愛おしさを思う。 死んでしまう時は、ひとはあっけなく拉せられるのに心の動きだけは、簡単に老い朽ちるものではないのだ。いよいよ命が終わる極みまで、人の心は、何かを追い求め傷つき、嘆息してやまないものなのだ。そのうえで、何が残るのか。葵のように一芸専心の跡が残るのも良し。ひとりでも泣いてくれるひとがいるのならそれも良し。何も残らなくても、身仕舞い美しく死ねるなら、幸せなことではないか。 宮尾作品のヒロインは、恋が絡むと、才能豊かで秀でた人なのに情けないほど崩れ、貢ぎ、壊れてゆくのが、なんとも愚かしくて。好きなだけに一読者として悔しく、歯がゆく、つらくて離れていた。 でもこのお話の葵は、内心の苦しみや燃え上がるような怒りに出会っても、身内を灼く思いで壊れ切りはしない。こらえて、彼女を支えた山の樹のように踏み止まる。その姿が好きだ。 やはり宮尾登美子という作家は、並々ならぬ力量の作家さんだと納得してしまうのだ。

Posted byブクログ

2012/03/04

歴史小説を読むのは得意ではないのですが、”香り”がきっかけだったせいか入り込んだらスムーズに読み進められました。 その時代背景や主人公が自分の育った家を離れて葛藤しながらも東京へ向かう心情には涙がでました。

Posted byブクログ