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魔都 の商品レビュー

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2022/08/18

1934年大みそかの東京。来日中の安南国皇帝が失踪、その愛人は墜落死。翌日の朝、日比谷公園では噴水の鶴が歌いだす。警視庁の辣腕・真名古が解決に乗り出すが、デマ、誤解、密告が錯綜する。 連載作品でしかも口述筆記ということもあり、細部で矛盾が見られたり、謎が放っておかれたりする部分...

1934年大みそかの東京。来日中の安南国皇帝が失踪、その愛人は墜落死。翌日の朝、日比谷公園では噴水の鶴が歌いだす。警視庁の辣腕・真名古が解決に乗り出すが、デマ、誤解、密告が錯綜する。 連載作品でしかも口述筆記ということもあり、細部で矛盾が見られたり、謎が放っておかれたりする部分もある。さらには、どれが真実でどれがデマかに惑わされ、犯行全体の動機、経過は部分部分で告白されるのをつなぎ合わせて整理する必要がある。 ラストは呆気にとられる終わり方。講談調の語り口や、読者に呼びかけたりと、人を食ったような十蘭節。登場人物は当時の有名人などのパロディとなっているらしい。

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2021/03/08

1935年の東京を舞台にした推理小説「魔都」。 マッドサイエンティストが登場したり、295カラットのダイヤモンド争奪戦が繰り広げられたり、地下迷宮が閉所恐怖症の読者を苛んだりと、「中二病」的な要素がゆんゆん漂う、戦前の怪作。 ミステリー小説を読むときには犯人捜しをせずに向き合う...

1935年の東京を舞台にした推理小説「魔都」。 マッドサイエンティストが登場したり、295カラットのダイヤモンド争奪戦が繰り広げられたり、地下迷宮が閉所恐怖症の読者を苛んだりと、「中二病」的な要素がゆんゆん漂う、戦前の怪作。 ミステリー小説を読むときには犯人捜しをせずに向き合うことをモットーとしている私には、アドベンチャーゲームのごとく帝都東京の猥雑さを味わうことが可能な本作は、好相性だった。 東京という土地が有するモンスター性。魔と称するべきか、迷とも冥とも称するべきか。癖になる混沌。

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2019/02/02

「夕陽新聞」の記者である古市加十(ふるいち・かじゅう)が、日本にやってきた安南国の皇帝である宗龍王と出会って意気投合するも、王の愛人である松谷鶴子(まつたに・つるこ)が転落死を遂げるという事件に巻き込まれてしまいます。一方、夕陽新聞の編集長である幸田節三(こうだ・せつぞう)は、日...

「夕陽新聞」の記者である古市加十(ふるいち・かじゅう)が、日本にやってきた安南国の皇帝である宗龍王と出会って意気投合するも、王の愛人である松谷鶴子(まつたに・つるこ)が転落死を遂げるという事件に巻き込まれてしまいます。一方、夕陽新聞の編集長である幸田節三(こうだ・せつぞう)は、日比谷公園の噴水の鶴が歌い出すという記事をでっちあげ、一儲けする算段でいたところ、不思議なことに鶴の置かれているところから、安南国の国歌が流れ出します。鶴子の殺人事件が外交問題に発展することを恐れた日本政府でしたが、真名古明(まなこ・あきら)警視がこの事件の真相を突き止めようと駆けまわります。 1935年の「魔都」東京の魅力を特徴的な文体でえがきだしており、濃密な作品世界に読者を引き込みます。「二十四時間に起こったことを一年間の連載でかく」という著者の意図にもとづいて書かれた作品で、取っ散らかった印象を受けるひともいるかと思いますが、ストーリーやキャラクターの魅力だけではない、読書のたのしみを改めて感じさせられました。

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2018/07/09

この頃はまだ作者がちょくちょく登場するのか。けっこう叙情的な面もあってその点は好みだったが、探偵小説としては期待を超えてはこなかったかなという印象。

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2017/11/16

巧緻にして端麗な短編群の後に読むと 手に汗を握りつつ脱力すること必至!(笑)な 久生十蘭の『新青年』連載長編。 物語は、1934年12月31日から明くる1935年1月2日の 足掛け三日間の東京市街でのドタバタ劇。 フランスの庇護を受けるアジアの小国皇帝が 愛人である日本人女性と...

巧緻にして端麗な短編群の後に読むと 手に汗を握りつつ脱力すること必至!(笑)な 久生十蘭の『新青年』連載長編。 物語は、1934年12月31日から明くる1935年1月2日の 足掛け三日間の東京市街でのドタバタ劇。 フランスの庇護を受けるアジアの小国皇帝が 愛人である日本人女性と密会するため、お忍びで来日したが、 彼が所有するダイヤモンドを巡って悪人たちが蠢き、 皇帝に間違われた新聞記者は一部始終を記事にしようと目論み、 敏腕警視が捜査に乗り出したが……といったところ。 著者存命中に書籍化されなかったため、 本人による修正が加えられていない、 世界大戦間期の『新青年』という雑誌が醸した エログロナンセンスな「悪ノリ感」に満ちた空気を 追体験できる。

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2015/03/17

昭和9(1934)年の大晦日、三流新聞の記者である古市加十は、ひょんなことから銀座のはずれのバーで安南国の「王様」と引き合わされる。そのまま「王様」の妾宅へ連れてゆかれた古市は、偶然にもそこで愛人の殺害現場を目撃、さらに「王様」は謎の失踪をとげる。これはたんなる偶然なのか、それと...

昭和9(1934)年の大晦日、三流新聞の記者である古市加十は、ひょんなことから銀座のはずれのバーで安南国の「王様」と引き合わされる。そのまま「王様」の妾宅へ連れてゆかれた古市は、偶然にもそこで愛人の殺害現場を目撃、さらに「王様」は謎の失踪をとげる。これはたんなる偶然なのか、それともなにかしらの罠なのか。古市はこの「特ダネ」で一発あてようとみずから事件の渦中へと身を投じる一方、その冷徹さから恐れられる警視庁の真名古刑事もまた、そこにとてつもない陰謀の匂いを嗅ぎ取り独自に捜査を開始するのだった。政治的な思惑や安南におけるボーキサイトの利権をめぐる争い、裏切りや騙し合い、組織の腐敗など、まさに闇鍋のように混沌としたこの時代の空気に充満した傑作探偵小説であると同時に、モダン都市東京を描いた貴重なポートレイトでもある。 物語は、大晦日の宵の口にはじまり年が明けた2日未明に大団円を迎えるまでの1日半ほどの出来事を描いている。初出は雑誌「新青年」昭和12(1937)年10月号から翌13(1938)年10月号まで連載された。ざっくり言うと、一日の出来事を一年間で書くという趣向だったわけである。そのため、あらためて続けて読むとやや冗長だったりご都合主義的に感じ取られる箇所もないではないが、そのあたりの事情を汲めば気になるほどでもない。 じつは、終盤までこれは本邦初(?)の警察小説なのではないか、と興奮しながら読んだ。上層部の権力闘争や組織の腐敗と戦いながら、懐に「辞表」をしのばせつつ真実を突き止めようと孤軍奮闘する刑事の姿は、この小説のもうひとつの読みどころでもある。ところがどうしたわけか、最終章ではいきなり義理人情的な決着がなされてしまう。「定本久生十蘭全集1」(国書刊行会)に付された解題で、江口雄輔氏は次のようなエピソードを紹介している。「軽井沢の山荘でシャンパンや生卵を摂りながら、『魔都』の最終回を口述筆記させられた、という土岐雄三の証言もある」。もしそうだとすると、この最終章での決着への違和感はやはり執筆当時の「趣向」から生まれたものといえるかもしれないが、震災から10年あまりを経て完全に復興をとげた帝都東京の近代的な「顔」とは裏腹に、いまだ精神的には前近代を引きずっていた30年代の東京の、まさに「時代の気分」といったものが臆せず表出されているようでむしろ興味深くもあるのだ。

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2020/02/22

あとがきでも書かれているが、久生十蘭はかなりの凝り性で演出過剰だったらしく、それに対して相手の反応が薄いとがっかりしたとか。また久生十蘭のペンネームは、演出家で俳優シャルル・デュランから取ったらしいが、編集者に「久しく生きとらん、食うとらん と読める」と言われ拗ねたとか、「字画は...

あとがきでも書かれているが、久生十蘭はかなりの凝り性で演出過剰だったらしく、それに対して相手の反応が薄いとがっかりしたとか。また久生十蘭のペンネームは、演出家で俳優シャルル・デュランから取ったらしいが、編集者に「久しく生きとらん、食うとらん と読める」と言われ拗ねたとか、「字画はすごくいいんだ」と反駁したとも。 しかも本人には知らされなかった末期癌の中書いた最期の作品が「主人公が癌を苦にして自殺する」というもの。友人のコメントでは「彼は死ぬまで凝ったね、どうも凝り死にだな」。 ★★★ そんな作者の後述筆記による長期連載作品なので、かなりの絢爛豪奢でユーモラスで凝って捻ってハッタリの利いた創り。 大都市東京。某国の王様と国宝の宝石がなくなった。解決までの猶予は24時間。いろんな人々の思惑が入り乱れる。 たまに作者自身が焦れて顔を出してきたりして(「ああ、作者はこのような苦難を彼に与えるつもりはなかったのに」みたいな)、口述筆記で気分が乗ってしまったんだな、と思えて楽しい。 ★★★

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2010/01/19

1934年の帝都で、安南国の王様、その愛人、その愛人の殺人現場を目撃してしまう新聞記者、事件解決に乗り出す警視と、様々な登場人物の大晦日から新年にかけてのたった一日の出来事を描くサスペンス。 雑誌連載一年で一日の出来事を描くっていうコンセプトが先にあったのか、矛盾点やらなんやらも...

1934年の帝都で、安南国の王様、その愛人、その愛人の殺人現場を目撃してしまう新聞記者、事件解決に乗り出す警視と、様々な登場人物の大晦日から新年にかけてのたった一日の出来事を描くサスペンス。 雑誌連載一年で一日の出来事を描くっていうコンセプトが先にあったのか、矛盾点やらなんやらもありますが、一気に読ませるくらい内容は濃いです。 ただ問題なのが、新刊で購入する子とがほぼ不可能な状態であること。 最近出てる全集はさすがに手軽な値段ではないので、文庫などで読みたい人は古本漁るしかないって状況が嘆かわしい。

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2012/07/21

半世紀以上前に発表されたミステリ小説です。 古臭さは感じられるかもしれませんが、エンターテイメントとして十分に楽しめます。

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2009/10/04

あとがきで久世光彦が描いている。 同潤会アパートに残された「あの時代」。西洋と東洋のバランスのとれた不思議な時代と凶々しい予感。童謡の切れ目に一瞬まぎれこんだ重いウッドベースの音。の、黴臭い映像が見える気がする。魔都の舞台、昭和9年。 "魔都"、ジャズの喧噪/...

あとがきで久世光彦が描いている。 同潤会アパートに残された「あの時代」。西洋と東洋のバランスのとれた不思議な時代と凶々しい予感。童謡の切れ目に一瞬まぎれこんだ重いウッドベースの音。の、黴臭い映像が見える気がする。魔都の舞台、昭和9年。 "魔都"、ジャズの喧噪/ピストルの音が響く上海/霧の中に赤や青のネオンがにじんで/繁華街/秘密結社やスパイについて、ひそやかにささやかれて。 ひけらかすほど難解なことばと西洋建築のディテールが振り撒かれた、あやしげな都をかけめぐる十蘭のはなしことばは軽快で、「そんないきなり!」と不安になるほど軽々しく大事な展開をさらりと言ってのける。屍にかわりゆく描写はやたらとリアルで、すうっと足元が冷えるが、それを冷静に見下ろしている自分もいる。 そういえばこれは探偵小説だった、と忘れそうになるほど、十蘭に帝都東京を引っぱり回されたあとには、夕闇にそびえ立つビルヂングやアパートメントの露台が残像となってまぶたに残る。

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