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路上の人 の商品レビュー

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5件のお客様レビュー

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2024/07/24

路上の人とは、止めようの無い異端カタリ派殲滅のアルビジョワ十字軍を、ただ見つめる路上生活者にして賢者のことだ。 アルビジョワ十字軍は正統対異端の対立と見做されているが、フランスの内戦=南北戦争と捉えるべきだ。 豊かで文化的な南に対するルサンチマンがこの十字軍の背景にある。 言葉も...

路上の人とは、止めようの無い異端カタリ派殲滅のアルビジョワ十字軍を、ただ見つめる路上生活者にして賢者のことだ。 アルビジョワ十字軍は正統対異端の対立と見做されているが、フランスの内戦=南北戦争と捉えるべきだ。 豊かで文化的な南に対するルサンチマンがこの十字軍の背景にある。 言葉も異なる(ラングドック語=ラング•ド•オック)全く異なる文化に対する征服行為に宗教戦争の衣を着せ、カモフラージュしたのだ。 言語まで根絶やしにすることで、現代フランスは、多様性を失ったひとつの国家として成立することになった。 異端カタリ派は、作家の想像力を刺激するようだ。 笠井潔「サマーアポカリプス」は、異端カタリ派の聖地を舞台に繰り広げられる殺人ストーリーだ。 箒木蓬生「聖灰の暗号」で、異端カタリ派の古文書をめぐるミステリーだ。

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2015/03/20

≪新≫の方が、地上での権力を握り、≪旧≫を亡ぼそうとするならば、戦わざるをえない。敗れることがわかっていても、戦わざるをえない。一宗教は、たとえ敗れることがあっても、亡びることはない。…。中世の十字軍の虐殺は、姿の異なる異端審問官に自らの刃を向けられているのだろうか。

Posted byブクログ

2012/03/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

1243年5月、異端討伐十字軍がピレネーの山麓に集結した。迎える異端カタリ派は、天空に突き立つ岩峰上の城塞を最後の砦としていた…。法王庁が絶対的な力を持ち、一方、王権も漸く台頭してきた中世ヨーロッパで、路上に生活の糧を求めて浮浪する“自由人”の眼に、教会は、教義は、騎士たちの生態は、どう見えたか。時代の転換期を舞台に、人間の自由と尊厳を問う長編小説。

Posted byブクログ

2011/06/30

登場人物が、それぞれ曰くありげで怪しい人ばかり、話の構成も、推理あり、ロマンスあり、スパイ小説のようなスリルもあり、緻密にできていますが、それよりも当時の人々の息苦しさを体感してしまう一冊です。

Posted byブクログ

2012/10/05

(2008.10.06読了)(2002.08.24購入) スペイン文学の古典に作者不詳の『ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯』というピカレスク小説があります。堀田さんの「路上の人」を読みながら堀田さんは、『ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯』から「路上の人」のヒントを得たのではないだ...

(2008.10.06読了)(2002.08.24購入) スペイン文学の古典に作者不詳の『ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯』というピカレスク小説があります。堀田さんの「路上の人」を読みながら堀田さんは、『ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯』から「路上の人」のヒントを得たのではないだろうかと思いました。 解説から本の概略を拾うと以下のようです。 「「路上の人」は、12世紀末から13世紀のころのヨーロッパを時代背景としている。このころ、ヨーロッパ各地の街道には法王庁や諸王侯の密偵や使者たちが往来し、町から町へと仕事を求めて移ってゆく様々な職人たち、乞食から失業中の傭兵や詐欺師に至る種々雑多のアウトローたちが歩いていた。主人公ヨナは年齢45歳前後。17歳のころ故郷のイタリアをなんとなく出てしまって以来、社会の周辺部にはじき出された恰好で、乞食、旅の道にある貴人や僧侶の従者など仕事を転々と変えながら、ヨーロッパ各地を放浪してきた。まだ国境というものがほとんどない当時のヨーロッパ各地の地方語を覚えるだけでなく、ラテン語の片言まで口にできるようになった。そのためヨナはすっかり重宝がられて、スペインのトレドに教義調査に赴く学僧の従者になったり、スペイン東部の大きな僧院で働いたり、法王庁の密使の従者となったりして、イタリア、南フランス、スペインの間を行き来する。そういう間のヨナの見聞や経験という形で、1244年に異端のカタリ派が殲滅されるまでの数年間のヨーロッパが、この小説で語られる。」(322頁) 普通の人が聖書を読むことを禁じられていた時代の物語です。聖書を読むことは、聖職者の特権だったのです。 物語の時代背景から説き起こされて、23頁になってやっと主人公が現れる。 「その名をヨナと言う。年齢は45歳前後、ということにしておこう。」 「ヨナの名は、旧約聖書のヨナ預言書に由来し、」(23頁) ヨナが従者として仕えた僧は、秘密の指令を受けていた、「キリストは果たして笑ったか、笑ったとすれば如何なる場合に、如何なる場所で笑ったか?」また、「笑いの神学的意味如何」を究明するために、法王の命によってトレドに向かうものであった。(37頁) 「キリストが笑った」とすれば、それは神の子としてのそれよりも、人間としての比重のほうが重くなるであろう。(38頁) 密命を帯びた僧は、トレドに着いてから8カ月ほどして冬の日に、突然血を吐いて死んでしまった。(50頁)何者かに毒殺されたものと思われる。 密命を帯びた僧の名は、フランチェスコ会士セギリウスというものであった。 ヨナは、トレドへ向かう途中で立ち寄ったタラゴーナの北にあるミレトの僧院に世話になることにする。副院長のブーチ師からセギリウスに関することを根掘り葉掘り聞かれる。 ミレトの僧院で暮らしてしばらくすると、コンコルディアの大秘書官がやってきた。 大秘書官は、どこかで入手した、セギリウスの草稿をブーチ師に朗読いて聞かせる。 その内容は、大旨次のようなものであった。(123頁) 1.あらゆる人間の魂にあって、神に対する信仰は同じものであること。 2.教会が、その固定した教義を、それに背く者に厳罰の脅しをもって上から課するのは誤りであること。 3.教会が、聖書の自由な講読を禁止するのは誤りであること。 4.教会が、迷信を信者に強制することは誤りであること。 5.ヨハネの預言書を、教会の利益を正当化するために勝手に解釈すべきではなく、またこの預言書を聖書から外し、附属書とすべきこと。 6.教会が占星術を用いるのは誤りであること。 7.されば改革さるべきは教会自体であるべきこと。 等々。 大秘書官の名前は、アントン・マリア・デ・コンコルディアであった。 ヨナは、アントンの従者として、旅を続ける。ピレネー越えの話。アントンの恋物語。異端審問。等。ヨーロッパ中世のことがよく分かるようになっている。 ☆堀田善衛さんの本(既読) 「キューバ紀行」堀田善衛著、岩波新書、1966.01.25 「ゴヤ 第一部」堀田善衛著、新潮社、1974.02.15 「ゴヤ 第二部」堀田善衛著、新潮社、1975.03.20 「ゴヤ 第三部」堀田善衛著、新潮社、1976.03.20 「ゴヤ 第四部」堀田善衛著、新潮社、1977.03.25 「スペイン断章」堀田善衛著、岩波新書、1979.02.20 「情熱の行方」堀田善衛著、岩波新書、1982.09.20 「スペインの沈黙」堀田善衛著、筑摩書房、1979.06.20 「時代と人間」堀田善衛著、日本放送出版協会、1992.07.01 「バルセローナにて」堀田善衛著、集英社文庫、1994.10.25 (2008年10月13日・記)

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