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貧農史観を見直す の商品レビュー

3.8

5件のお客様レビュー

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2018/08/10

佐藤常雄『貧農史観を見直す』(講談社現代新書 1995) 佐藤氏は専門は農業史という。江戸時代のまっとうな研究というのは「近世史の専門家」以外の人のものばかりだとは、よく言われることである。 この本は私も非常に感銘を受けたのだが、同様の人は多いとみえ、個人のブログなどでも良く取り...

佐藤常雄『貧農史観を見直す』(講談社現代新書 1995) 佐藤氏は専門は農業史という。江戸時代のまっとうな研究というのは「近世史の専門家」以外の人のものばかりだとは、よく言われることである。 この本は私も非常に感銘を受けたのだが、同様の人は多いとみえ、個人のブログなどでも良く取りあげられている。 1995年には、NHKテレビで「お江戸でござる」という番組が始まった。近代人が忘れてしまった江戸時代の良さが、杉浦日向子によって語られるコーナーのある番組だったが、そこでは江戸の都市民についての話ばかりだった。そういった新しい目を、農村へも広げていったのが佐藤氏の本だと、多くの読者に受けとめられた。 年貢は土地所有権を保証するもの。農村は自治で運営され、武家は立ち入ることができず、農民がピケを張れば測量すらままならない。村の入口まで用水を引くのは武家の義務。……決して弱くはなく、前むきに生きる農民の姿が描かれていた。 江戸時代暗黒史観の元祖は明治政府だが、当時の左派勢力の歴史観も「奇妙な一致」を見せたという指摘があった。それはなぜなのかは重要なテーマである。 この本を読んだのは1997年初め。

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2017/01/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

1995年刊行。江戸時代のステレオタイプ的な思考を徹底的に突き崩してきた大石慎三郎氏。本書もその一環としての書といえようか。そのテーマは農民である。特に貧困イメージの打破(農業技術革新・農学の発展・商品作物栽培)にある。

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2012/08/19

主に江戸時代の農民の真の姿を書いた一冊。現存する年貢関係の資料から名産目録、農書といった資料を用いて農民≒貧しいの先入観を一掃してくれます。また、農民≒貧しいのイメージが生まれた由来の分析もしっかりとしてあり、読後にすがすがしさも残ります。 また、農民が支配者層(武家)に必ずし...

主に江戸時代の農民の真の姿を書いた一冊。現存する年貢関係の資料から名産目録、農書といった資料を用いて農民≒貧しいの先入観を一掃してくれます。また、農民≒貧しいのイメージが生まれた由来の分析もしっかりとしてあり、読後にすがすがしさも残ります。 また、農民が支配者層(武家)に必ずしも従順ではなく、自力で権力者の介入を防ぎながら自治を行っていた事実にも触れています。一揆や打ちこわしの様な暴力的手段を使わずに自分たちの生活を守る理性と工夫が、しっかりと根付いていたのです。 この時代の庶民の感性は「百姓」という言葉を差別用語にしてしまう現代よりも、はるかに豊かだったように思います。

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2011/02/12

貧農史観というのは、年貢にあえぐ貧乏な百姓というステレオタイプな歴史観を指す。マルクス主義的歴史教育のキーワードとして、ネトウヨさんなどのターゲットになっている模様。日教組批判などをしているブログに、ずいぶんとこの本からの引用が貼り付けられているのを目にした。本書じたいは、イデオ...

貧農史観というのは、年貢にあえぐ貧乏な百姓というステレオタイプな歴史観を指す。マルクス主義的歴史教育のキーワードとして、ネトウヨさんなどのターゲットになっている模様。日教組批判などをしているブログに、ずいぶんとこの本からの引用が貼り付けられているのを目にした。本書じたいは、イデオロギー色ほとんどなし。検知がほとんど行われていないことから、生産力が向上したぶんや、コメ以外の商品作物からの上がりを考えると、実効税率は10~20%ではないかと推測している。95年とちょっと古いので、すでにここから先の研究もあるかもしれない。が、それなりにしたたかで、忙しいときはみんなで助け合い、村祭りなども積極的に行う、活力のある農村風景を描いているのはおもしろい。

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2009/10/04

本屋で目に留まる。遠藤周作の『沈黙』のレビューでも書いたけど、江戸時代の農民の実態が気になってたので、購入。 ちょっと変わった本。というのも表紙に著者が2名列記されてたので共著かと思いきや、プロローグのみ別の人が書いてる。しかもこの本、「はじめに」がないから、著者がこの本で一体何...

本屋で目に留まる。遠藤周作の『沈黙』のレビューでも書いたけど、江戸時代の農民の実態が気になってたので、購入。 ちょっと変わった本。というのも表紙に著者が2名列記されてたので共著かと思いきや、プロローグのみ別の人が書いてる。しかもこの本、「はじめに」がないから、著者がこの本で一体何を明らかにしたいのかがわかりづらい。タイトルに書かれた「貧農史観」がいつ出てくるのかと思いながら読むもなかなか出てこず。結局言及箇所は4章立ての中で3章のみ。そのほかの3つの章は定説をだらだらと述べて(日本史で習ったことと食い違ってる点も多々あったんだけど…)頁数かせぎっぽい?ただ評価できるのは、3章で、なぜ「貧農史観」という一種の思い込みが生じたかを述べている点(というか述べてくれてないと困る)。その原因を研究過程での史料の偏りであるとした点は興味深かったし、データを出して、実際に農民がどれくらいの家計収入で生活してたかがわかる。ただ農民が貧しくなかったということを証明するには、その当時の他の身分(武士、商人、えた・ひにん等)と比較しないと説得力がない。この内容だと「貧困史観」を覆すことはできておらず、「貧困史観」には例外があると述べたのみであり、期待していたほどのおもしろさはなかった。3章のみおもしろかったのでちょっと甘めに☆3つ。

Posted byブクログ