ヘーゲル・大人のなりかた の商品レビュー
ヘーゲルの『精神現象学』『法権利の哲学』を読み解きながら、社会と人間のあるべき姿を探っていく。 タイトルに「大人のなり方」とあるように独りよがりにならず、社会性をもって成熟して行くにはどうすべきかという問題意識がある。 ヘーゲルは国家に関して、過ちまたは後世の誤解を受けたこと...
ヘーゲルの『精神現象学』『法権利の哲学』を読み解きながら、社会と人間のあるべき姿を探っていく。 タイトルに「大人のなり方」とあるように独りよがりにならず、社会性をもって成熟して行くにはどうすべきかという問題意識がある。 ヘーゲルは国家に関して、過ちまたは後世の誤解を受けたことを率直に認める筆致が清々しく、その上で、いったん先入観を捨てて、反省=振り返ることを意識していく姿勢は、学ぶべきことが多い。 発刊から20年がたっているが今読んでも色あせることはない。
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『知的複眼思考法』で紹介されていて、古い本だったので中古で購読。 アウフヘーベンの考え方が、仕事の中での思考法にも応用できるのかなと思っていたが、アウフヘーベンには全く触れられていない。一番紙面を割いて解説している『精神の現象学』に出てくる言葉のようなので、そう思って読むと、こ...
『知的複眼思考法』で紹介されていて、古い本だったので中古で購読。 アウフヘーベンの考え方が、仕事の中での思考法にも応用できるのかなと思っていたが、アウフヘーベンには全く触れられていない。一番紙面を割いて解説している『精神の現象学』に出てくる言葉のようなので、そう思って読むと、これがアウフヘーベンなのかなと思えるところはある(”歴史は大きく自由と共同性を達成する方向へと進みつつある。『精神の現象学』は何よりも、このことを主張するものだった”とか) ではあるが、一番の気付きは、偉大な哲学者も一人の人間であり、その思考が導かれた背景、当時の社会情勢やその人個人にとってどんなタイミングだったのか、そんなことに当然大きな影響を受ける。一人の人間にとっては長い人生、ずっと同じ論調なわけもなく、成長なのか、少なくとも変わっていくということだ。
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著者自身のメッセージが、ストレートに語られているヘーゲル入門書です。とくに第2章では、初期ヘーゲルが格闘した問題が独自の観点から掘り下げられています。 著者は、『キリスト教の精神とその運命』のアブラハム論とニーチェのキリスト教批判とを対比しています。自立した個人であることをめざ...
著者自身のメッセージが、ストレートに語られているヘーゲル入門書です。とくに第2章では、初期ヘーゲルが格闘した問題が独自の観点から掘り下げられています。 著者は、『キリスト教の精神とその運命』のアブラハム論とニーチェのキリスト教批判とを対比しています。自立した個人であることをめざしたアブラハムにとって、全世界はよそよそしいものとして現われることになります。そしてアブラハムは、絶対的な力をもつ神に服従することを通じて、みずからに対立する世界を間接的に「支配」したと、ヘーゲルは考えます。これは、ルサンチマンを抱いた弱者が、神を打ち立てることによって自己を正当化する「倒錯」をおこなったという、ニーチェのアブラハム批判に通じるところがあると指摘されています。ただし、ヘーゲルが批判しようとしたのは、共同性を拒否するアブラハムの世界に対する憎しみの感情だったと著者は述べて、ニーチェとの違いを明らかにします。 若きヘーゲルは、共同性に対する憎しみを抱いている個人と、彼が生まれ出た共同性との「和解」を可能にする「愛」に基づく社会を夢見ていました。しかし、愛は人びとのあいだに通う「合一の感情」にすぎません。愛を原理とする社会は限られた範囲のものとならざるをえないし、けっして永続することはありません。こうしてヘーゲルは、「愛」の宗教から、現実の共同性に通じる道を「自覚」する哲学へと歩みはじめます。 本書では、こうした若きヘーゲルの問題意識から、後年の『精神現象学』と『法哲学』がなにを達成し、なにを達成できなかったのかを論じています。そして、自己の内なる理想を、他者とのかかわりを通して鍛えあげることや、現実の世界のなかで挫折してしまうことなくみずからの理想を肯定するための可能性を探っていくことの大切さを、読者に語りかけています。
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ヘーゲルを好意的に解釈しつつ、結局は副題通りの自己啓発本になってしまった印象。でも副題には間違いがなく、よくもわるくも著者も大人になり、ヘーゲルも大人に成長したということになるのだろうか。内容的には噛み砕きすぎて、著者の主観がかなり入り込んでいる印象。 大人になりすぎたヘーゲルが...
ヘーゲルを好意的に解釈しつつ、結局は副題通りの自己啓発本になってしまった印象。でも副題には間違いがなく、よくもわるくも著者も大人になり、ヘーゲルも大人に成長したということになるのだろうか。内容的には噛み砕きすぎて、著者の主観がかなり入り込んでいる印象。 大人になりすぎたヘーゲルがかいた『法哲学』は当事の時代状況としては仕方なかったのかもしれないが、やはり批判されるべき著作だとは思う。これじゃ、御用学者と言われても仕方ない。
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ヘーゲルの思想を、よく批判される国家論としてでなく、自分と世界との関わり方を論じたものとして、紹介する。ルソーやカントの思想との関係・比較、あるいはキリスト教の思想との関係も交えて語られるヘーゲルの思想はわかりやすく、頭の整理になる。ただ、どこまでがヘーゲルの思想でどこからが著者...
ヘーゲルの思想を、よく批判される国家論としてでなく、自分と世界との関わり方を論じたものとして、紹介する。ルソーやカントの思想との関係・比較、あるいはキリスト教の思想との関係も交えて語られるヘーゲルの思想はわかりやすく、頭の整理になる。ただ、どこまでがヘーゲルの思想でどこからが著者の思想であるのかわからなくなるとことがある。それだけ著者がヘーゲルの思想と自分を生を重ねて読んでいるということなのだろうが。
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ヘーゲルのそもそもの素質と動機がよくわからなかったところを、『精神の現象学』以前から説き起こしていてわかりやすい。
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https://www.nhk-book.co.jp/shop/main.jsp?trxID=C5010101&webCode=00017251995
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※このレビューにはネタバレを含みます
内容はヘーゲルの全体像…とまではいかないけれど、ヘーゲルの重要なモチーフの確認にはなると思う。ヘーゲルの思想の推移がわかりやすいのはとてもよい点。 そして内容以上に、著者が逐一自らの主張や解釈を、判別のつきやすいかたちで入れこんでいるその構成にとても共感をおぼえた。「これがヘーゲルの考え方だ、しかし自分は現状を鑑みるにこう思う、どうだろうか」という三段構えは、哲学をするうえで模範のような姿勢ではないだろうか。ただ哲学者の名前に乗っかるだけでなく、それを専門知にこもらないかたちでもって的確に批判するという、実は示すことが非常に難しいであろうことをさらりとやってみせている本著は、いわゆる"Do Philosophy"の指南書ともいえるはずだ。
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[ 内容 ] マルクス主義につながる悪しき思想の根源とされていたヘーゲルは過去のものになる。 共同体と人間の関係について徹底的に考えた思想としてヘーゲル哲学を捉えた新しい入門書。 [ 目次 ] 序章 ヘーゲルってどんな人? 第1章 人々が熱狂した近代の夢 第2章 愛は世界を救えるか 第3章 自己意識は自由をめざす 第4章 わがままな意識は大人になる 第5章 私と世界の分裂と和解 第6章 制度の根拠はどこにあるのか 終章 ヘーゲル哲学をどう受けつぐか [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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ヘーゲルなんて名前とんと聞かないなあと思っていた。高校の倫社の教科書に出ていた肖像画が気に入って版画で彫ったなあ、大学時代には岩波文庫の「歴史哲学上中下」を買ったけれど途中で挫折したなあというくらいの想い出だった。それが、西さんの手にかかると面白くわかりやすく読めてしまう。ヘーゲ...
ヘーゲルなんて名前とんと聞かないなあと思っていた。高校の倫社の教科書に出ていた肖像画が気に入って版画で彫ったなあ、大学時代には岩波文庫の「歴史哲学上中下」を買ったけれど途中で挫折したなあというくらいの想い出だった。それが、西さんの手にかかると面白くわかりやすく読めてしまう。ヘーゲルの単なる解説ではなく、これからどう考えて生きていくか、どういう社会を作っていくかについての西さんなりの考え方が示してあるのがよかった。ルールを改変できる社会ということは大いに共感できます。
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