ある回想 大統領の深淵 の商品レビュー
ミッテランの幼少時代からの生涯を、ハンガリー出身のユダヤ人作家、エリー・ウィーゼルが尋ねながら、お互いの宗教観や戦争に対する考え方を語る回顧対談。ミッテランは不可知論者だが、聖書など多くの書物とユダヤ人についての深い造詣がよく分かる。マジノ線の先に派兵され、ドイツ軍の捕虜となって...
ミッテランの幼少時代からの生涯を、ハンガリー出身のユダヤ人作家、エリー・ウィーゼルが尋ねながら、お互いの宗教観や戦争に対する考え方を語る回顧対談。ミッテランは不可知論者だが、聖書など多くの書物とユダヤ人についての深い造詣がよく分かる。マジノ線の先に派兵され、ドイツ軍の捕虜となっても、ナチの収容所についてはよく分からなかったというミッテランの言葉に、戦争の渦中にあっても、ユダヤ人の惨事を知るにはかなり高い壁があり、また戦争そのものやその過程を予見するのは渦中にあるからこそ難しいことなのだと感じた。戦争が始まっても、敵が実際に目の前に見えなければ戦争は現実のものにはならない。だからこそ、現代のように距離がありなおかつドローンが飛び交うような戦争では、被害を受けた地の悲惨に想像力を働かせる必要が大いにあると改めて思った。 信仰についての対談は、両者の聖書の読み込み方が深すぎてすべては理解できなかったが、ミッテランは信仰のそばにありながら、やはり不可知論者の立場からは離れていないように見えた。 ペタン政権下のルネ・ブスケが多くのユダヤ人狩りに協力していたことと、ブスケとミッテランの親交については、ウィーゼルは最後まで納得していない。ミッテラン自身、ブスケとの関係について、すべてを明らかにしようという積極性は見受けられないが、「やるべきことはやった」という自分に対する自負のようなものは読み取れる。 人間の大いなる無能の一つは、未来を想像すること。常に現在のイメージで未来を見るからだ、という言葉は考えさせられた。
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