システムと共同性 の商品レビュー
「叢書エチカ」シリーズの一冊で、システム論をテーマに14人の論者が論文を寄せています。 「あとがき」には、「社会をシステムとしてとらえようという試みは、少なくともその主要な流れにおいては、社会を「規範的(normativ)」に語ろうという思考からの脱却を意味している」としながら...
「叢書エチカ」シリーズの一冊で、システム論をテーマに14人の論者が論文を寄せています。 「あとがき」には、「社会をシステムとしてとらえようという試みは、少なくともその主要な流れにおいては、社会を「規範的(normativ)」に語ろうという思考からの脱却を意味している」としながらも、「〈倫理〉と〈システム〉とに関わる問題状況をできる限り広く多角的に浮かび上がらせよう」という編集方針が採用されたということで、さまざまな視点が示されているものの、ハーバーマスとルーマンの論争について立ち入った考察が展開されているのではないかという期待からは、すこし外れた内容だったように思います。 編集を担当している佐藤康邦、中岡成文、中野敏男の論文は、それぞれに対して別の論者による批判的な「コメント」と、それに対する執筆者の「リプライ」も収録されています。紙幅の制約が厳しく、なにが論点になっているのかやや理解しにくく感じたのですが、巻末の佐藤、中岡、中野の鼎談において言及されているものもあって、かなり明瞭に対立しているポイントについての見通しが得られるようになっています。 そのほか、わが国のオートポイエーシス論を牽引してきた河本英夫、システム論を独創的なかたちで展開している社会学者の大澤真幸、構造主義生物学者の池田清彦など、ヴァラエティに富んだ執筆陣となっています。
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