ソウル・トゥ・ソウル の商品レビュー
期せずして同じ一九六二年生まれの著者の本を続けて読む。どちらもノンフィクション。エレーナ・ハンガというザンジバル出身の父とロシア生まれで元アメリカ人の黒人の祖父とポーランド出身でアメリカに帰化した後ロシア国籍を取得したユダヤ人の祖母の下に産まれた母との間に産まれた肌の色の黒いロシ...
期せずして同じ一九六二年生まれの著者の本を続けて読む。どちらもノンフィクション。エレーナ・ハンガというザンジバル出身の父とロシア生まれで元アメリカ人の黒人の祖父とポーランド出身でアメリカに帰化した後ロシア国籍を取得したユダヤ人の祖母の下に産まれた母との間に産まれた肌の色の黒いロシア人ジャーナリストの記した一冊。これだけ書いても複雑な歴史が想像できる家族の足跡を辿るのが全体を流れるテーマだが、そこに少数派として自身が感じさせられてきた社会からの言われなき疎外感が数々のエピソードと共に語られる。それに加えてゴルバチョフ政権におけるグラスノスチ以降の社会的構図の大転換に伴いジャーナリストとしての思っても見なかった経験を通して見えて来た自身のこと、あるいは根強い社会的偏見のことなどを、存外素朴な語り口で綴った大部となっている。 旧ソビエト連邦の恐怖政治の時代からその瓦解、そしてエリツィン大統領による統治時代までが本書の中の時間の流れであるので仕方がないのだけれど、本書の中での著者の立ち位置は未来に希望の予感を感じさせる二国間の橋渡し役のようなもの。確かにその頃の二つの大国には融和する雰囲気があった。この本は一九九二年までに著者に起きた出来事を綴ったものではあるけれど、その後、エリツィンは大統領を辞し、今に至るプーチン政権下のロシア共和国が辿ってきた流れの中をこのジャーナリストはどのように生き抜いているのかがどうしても気になってしまう(未だにモスクワに住んでいるとの情報もある)。 このジャーナリストと同じ時間軸を辿ってきた身としては思い返す。ソビエト時代のミール(平和)という名前の宇宙ステーションは、ゴルバチョフ政権下で運用開始。奇しくもその年にはチェルノブイリ原発事故が起こり、それを機にグラスチノス(情報公開)政策が始まったのだ。だが、その後の世界は時計の針を逆戻りさせたような状況。この本が期待したような世界は実現していない。そのことが最も心に残る読書となる。
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公平で客観的な視点から書かれている。当事者でありながら当事者ではない人物からみたアメリカの人種差別に関する記述は非常に興味深い。とても頷きながら読んだ。ロシアという国と文化、およびアメリカの黒人人種差別に興味のある人は絶対に読むべきともいえる本である。
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著者を含む4世代に渡る家族の歴史を記した本。 大勢の人よりも若干複雑な状況で生まれた著者を中心に、アメリカでの奴隷制度や、冷戦時のソ連の緊張、そして、肌や、民族や、人種、などで受ける、現在も続く差別など、とても興味深く読めた。
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