加賀金沢・故郷を辞す の商品レビュー
「ふるさとは遠きにありて思うもの」の室生犀星のエッセイ集。 「私の履歴書」で特異な育ち方をした人だと知った。金沢の名家に生まれたが、父と女中との間の子であったので、私生児として、ハツという女の人に預けられた。そのハツという女の人は訳ありの子供ばかりを引き取り、将来お金になるよ...
「ふるさとは遠きにありて思うもの」の室生犀星のエッセイ集。 「私の履歴書」で特異な育ち方をした人だと知った。金沢の名家に生まれたが、父と女中との間の子であったので、私生児として、ハツという女の人に預けられた。そのハツという女の人は訳ありの子供ばかりを引き取り、将来お金になるように育てていたのだ。血の繋がりのない“母”と“兄”と“姉”との暮らし。大酒飲み飲みの“母”のために、文句一つ言わず、料理したり、入れ歯を洗ってあげたりとまめまめしく働く“兄”や“姉”をただ感心して見ていたり、恋慕の情を持って見ていたり、姉を折檻する“母”に憎しみを持ちながら、それなりに“家族の掟”が定められた中、母に暴力をふるうようなことは出来なかったというようこと。今なら何か事件が起きるかもしれないような複雑な家庭だが、「親を立てなければならない」というようなその時代の一貫した道徳のようなものがあったので、自分たちの境遇に特に不満も不平も漏らさない兄弟たちの間で育ってきたということ。 萩原朔太郎、芥川龍之介、北原白秋、林芙美子ら当時のそうそうたる文人達との交流。庭作りを愛した、筆者の自然への思い。馬込、田端など、筆者が暮らした土地への思いなどが書かれている。東京の地名には疎いので、調べながら読んだ。馬込は大正の頃の文人たちが暮らしたハイカラな町だっのだ。初めて知った。 後半はかなり飛ばし読みしてしまった。当時の自然や町並みが当時の筆者の目線で書かれていたこと。国語の教科書に私の時代から載っているような有名な作家たちの普段の姿を伺わせる描写が面白かった。 室生犀星の小説も読んでみようと思った。
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