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経済発展の理論(上) の商品レビュー

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6件のお客様レビュー

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2023/12/30

まさに「エレガント」という言葉がふさわしい美しい書物である。シュンペーターはワルラスの心酔者であり、処女作『理論経済学の本質と主要内容』で、ワルラスの一般均衡理論の延長線上に自身の静学理論を構築した。だがそれは完全なる均衡であるが故に発展も衰退もない謂わば「死せる」世界だ。そこで...

まさに「エレガント」という言葉がふさわしい美しい書物である。シュンペーターはワルラスの心酔者であり、処女作『理論経済学の本質と主要内容』で、ワルラスの一般均衡理論の延長線上に自身の静学理論を構築した。だがそれは完全なる均衡であるが故に発展も衰退もない謂わば「死せる」世界だ。そこで「生きた」経済の動態理論として構想されたのが本書である。シュンペーターが経済発展の原動力と考えたのは、企業家による「創造的破壊」たるイノベーションである。ケインズも「アニマル・スピリッツ」という言葉で経済のダイナミズムにとっての企業家精神の重要性を指摘していた。だが企業家の力だけではイノベーションは現実のものとならないし、経済の軌道を変えることもできない。ここで決定的な役割を担うのが企業家に「信用」を提供する銀行家である。既存の経済循環過程から購買力を引き剥がし、それを全く新たな販路や生産手段へと振り向けることではじめて「新結合」が可能になる。直接金融であれ間接金融であれ、リスクとリターンを適切に評価して「信用」という社会的資源を配分するプロフェッショナルがその役割を十全に果たさなければ、企業家精神も絵に描いた餅に終わる。その意味では銀行家こそが経済軌道の「転轍手」であるとさえ言える。イノベーションへの期待が高まる昨今、シュンペーターが注目され、企業家精神が盛んに顕揚されるが、この点が指摘されることは意外に少ない。イノベーションが重要であることは勿論であるが、本書の醍醐味はそれが「信用」という回路を通じて経済を定常状態から新たな循環過程へと転換させるプロセスを文字通り「エレガント」な論理構成で説明してみせたところにある。

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2023/01/02

シュムペーター 経済発展の理論 資本主義の経済メカニズムを新結合と動態論から考察した本 1冊読むのに かなり時間がかかった。今までで最長かも。 特に1章は 難解。主に均衡論を論じている。著者の経済学は均衡論を基礎としているが、それだけでは資本主義メカニズムを説明できないので、...

シュムペーター 経済発展の理論 資本主義の経済メカニズムを新結合と動態論から考察した本 1冊読むのに かなり時間がかかった。今までで最長かも。 特に1章は 難解。主に均衡論を論じている。著者の経済学は均衡論を基礎としているが、それだけでは資本主義メカニズムを説明できないので、動態論と新結合概念を用いている 1章の結論は、均衡において 企業者利潤は 存在しない→資本主義は不均衡が前提→不均衡を作るための「新結合」概念 2章は 経済の発展を 動態論から考察している「発展とは、経済が自分自身のなかから生み出す経済生活の循環の変化」と定義 資本主義のメカニズムを説明するには、静態論(循環理論〜均衡に向かう)では解明できず、動態(国民経済が与えられた重心から他の重心へ移る転換し続ける)が必要 新結合としての経済発展 *新結合は旧結合と並んで現れる *新結合は必要とする生産手段を旧結合から奪い取らなければならない〜新結合の遂行は国民経済における生産手段ストックの転用 *新結合の遂行のために、生産手段の支配が必要 *誰でも新結合を遂行する場合のみ企業者であるが〜一度創造された企業を循環的に経営すると、企業者としての性格を失う 経済発展とは〜労働用役と土地用役を他に転用することである〜新結合の遂行は労務用役と土地用役を慣行の用途から奪い取ることにより行われる

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2015/05/24

経済学の観点から、イノベーションの基本概念である「新結合」に初めて言及した本。 上巻では、経済発展の要素として「新結合」と、それを行う「企業家」とそれを助ける「金融」について考察されている。 「新結合」を説明するために、その前提となる「静態的な経済循環」を説明するために第1章を費...

経済学の観点から、イノベーションの基本概念である「新結合」に初めて言及した本。 上巻では、経済発展の要素として「新結合」と、それを行う「企業家」とそれを助ける「金融」について考察されている。 「新結合」を説明するために、その前提となる「静態的な経済循環」を説明するために第1章を費やすなど、「理詰め」に多くの文章が割かれていて、一般的に「読みにくい本」と評価されているようだし、実際にそう感じた。

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2012/07/01

Financial Education & Design という勉強会の、とある回の課題図書です。 みなさん造詣が深く、読むポイントも各々の問題意識によって異なり、とても面白かったです。 経済の本を読んだのは初めてでしたが、とても楽しかった。 第2章とあとがきをなんとか...

Financial Education & Design という勉強会の、とある回の課題図書です。 みなさん造詣が深く、読むポイントも各々の問題意識によって異なり、とても面白かったです。 経済の本を読んだのは初めてでしたが、とても楽しかった。 第2章とあとがきをなんとか読めば、エッセンスはわかります。笑 あとは、日々の仕事にどう活かしていくかが問われます。 ******** 第2章の「発展」という概念が大切。 弁証法の概念を実質的に援用して「発展」を定義。 旧いものと新しいものが相剋するところから、新しいものが旧いものを打ち負かすことによって止揚し、新しい秩序がつくられるという。 銀行家・利息の役割について言及。 ********* いまから100年前、激動の時代に激動の澳・独で、まだ経済学が新しい学問だった頃の学者さん・大蔵大臣さんだったひとの著書。 「イノベーション」という言葉を用いていないのに「初めて用いた」ということになっています。 ********* 訳がひどいですが、翻訳にもいろいろ難しさがあるそうです。 原文をなるべく逐語的に訳したほうがいいのか、とか。(『歴史を変えた誤訳』など参照) 数十年前の学生さんやビジネスマンさんたちが この訳をほいほい読めていたとしたら、想像力が豊かすぎます。

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2009/11/02

http://ameblo.jp/integrity-c/entry-10360010992.html http://ameblo.jp/integrity-c/entry-10362323810.html

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2009/10/04

イノベーションに関する話題においていつも名前のでるシュンペーターの代表的な著作を読んでみたが、非常に難解。 ただ、企業者の考え方については、非常に参考になった。

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