ユートピア の商品レビュー
防衛。四方を海で囲まれた自然の要塞をもつ。他国と同盟はしない。同盟はしばしば誠意をもって守られないから。戦争を嫌うが、戦争の準備はしており、自分たちの国境防衛、友邦の領土に侵入した敵の撃退、僭主制で圧迫されている他の民族を解放してやるためであれば戦争の手段に訴える。戦争になれば、...
防衛。四方を海で囲まれた自然の要塞をもつ。他国と同盟はしない。同盟はしばしば誠意をもって守られないから。戦争を嫌うが、戦争の準備はしており、自分たちの国境防衛、友邦の領土に侵入した敵の撃退、僭主制で圧迫されている他の民族を解放してやるためであれば戦争の手段に訴える。戦争になれば、貨幣を使い外人部隊を募る。貨幣を使い敵を買収する。▼農業。市民は農場に交代で来て農業をする。農業は万人共通の職業。ひとりの例外なく課せられる。すべての人が子どもの頃から教え込まれる。農業の他に一つ別の職能を覚える。毛織、亜麻織、石工、鍛冶、錠前、大工。▼偽の快楽。衣服、宝石、金、名誉、高貴は空虚で無益。自然本性に従って生きることが幸福。▼奴隷。犯罪者は奴隷になり、安い値で売買されるか、ただで取引される。奴隷は絶えず働かせ、鎖につなぐ。▼男女。求婚者の男女は互いに裸になり、肉体上のことで気に入らないことがないか確認する。婚前交渉は処罰され、二度と結婚できない。再婚は長老会議の承認が必要。食事の準備は女だけがする。▼安楽死。司祭や長老会議が認めれば、苦痛を断ち切らせるため、自ら断食をするか、眠らされて楽にさせられる。トマス・モア『ユートピア』1516 防衛。都は何重もの城壁に囲まれ、塔・堀・戦争道具などで守られている。▼都の最高支配者は、知恵と学識をもつ祭司(学者)で、善政をしく素質をもっている。祭司は絶対的な権威をもち、一切のことは祭司に従属する。祭司を3人の長官が補佐する。「権力」は軍事防衛を、「知恵」は学問を、「愛」は生殖を担当する。▼生殖。品種改良で優秀な子孫を残す。やせた男は太った女と結婚させる。血気盛んな男は冷たい女と結婚させる。賢明な組み合わせであらゆる行き過ぎが調整される。▼兵役・農耕・牧畜を共同で行う。裁縫・料理は女の仕事。▼あらゆるもの(食べ物・家)はすべて共有。財の分配は行政官が決定する。それぞれの人が余計なものを手に入れないよう監視している。私有財産はエゴイズムを生む。エゴイズム(個人の利益)を否定することで、公共への愛だけが残る。園主「それじゃだれも働こうとしなくなるでしょうね。他人が働いて自分を養ってくれるのを待てばいいのだから。アリストテレスがプラトンに反対したのはこの点ですよ」。艦長「いいえ。この都の市民は信じられないくらい愛国心が強く、市民はみんな(公共)のために喜んで自己を犠牲にするのです」。トンマーゾ・カンパネッラ『太陽の都』1602
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「ただ少ないというそれだけの理由で人間が愚かにも高く評価しているにすぎないのではないだろうか。」 「隣人に対して親切丁寧であれと命じた時、それは自分自身に対しては残酷無情であれという意味ではなかった。」
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
『ユートピア』とは15世紀後半から16世紀前半を生きたトマス・モアによって描かれた理想国で、その国では貨幣がなく一切のものが共有である。 家は鍵が付いておらず、どの家も同じ作りであり、10年ごとに抽選によって取り換えることになっている。 衣服は丈夫な皮革製の質素な服に、毛織物の上着を羽織る。これらは各家庭で作られ、決して華美なものではない。 各地の中心にはあらゆる種類の品物を扱う市場が立っている。すべての家族の生産品が持ち込まれ、また必要なものを世帯の代表者が持ち帰る。 こういった衣食住に困ることのない社会であるが、もう一つの顔として徹底した管理社会である。 人口を保つため法律で世帯による子供の数が決められており、許可もなく州を移動する事は出来ない。許可証を持たず州の境界をうろついているのを見つかると厳重に処罰される。二度同じ過ちを犯すと、今度は罰として奴隷にされてしまう。 『ユートピア』で暮らしたいかと聞かれると、厳しすぎる管理社会のため遠慮したいが(笑)、 貨幣を持っていれば、ネットショッピングで大体の物を手に入れることが出来る現代では、すぐ所有でき満たされるが、満足感が持続せず、すぐに空虚感を感じるように思う。 だからこそ、『ユートピア』の文中の「誰も何ものも持ってはいないが、しかも皆が豊かなのだ。」には羨ましさがあった。
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著者モアが、航海者ヒュトロダエウスから聞くユートピアの様子、という形をとって、当時のイギリス社会と、共有財産制をとる架空社会との対比を通じて、読者に何が理想社会、真の幸福であり、実現のためにはどうすべきかを考えさせる。
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ユートピアの制度を鵜呑みにしてはいけない。現実の制度とユートピアの制度を比較することで、よりよい制度とは何かを思索することを促す書物である。個人的にはユートピアの社会にも不条理と映る制度(奴隷制)や現実的には困難なもの(共有財産制)がある。だが、対極に存在するものを比較することで...
ユートピアの制度を鵜呑みにしてはいけない。現実の制度とユートピアの制度を比較することで、よりよい制度とは何かを思索することを促す書物である。個人的にはユートピアの社会にも不条理と映る制度(奴隷制)や現実的には困難なもの(共有財産制)がある。だが、対極に存在するものを比較することで理想の社会を考えることが何より重要であると感じた。メモ
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細かな注釈は読解の助けになるが、煩雑な注釈は読書の流れを中断させる。解説で細かな点を補うことのほうが、読者には親切である。
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16世紀の英国人が描いた理想郷の描写を通して、その当時の社会情勢や風習が見えてくる。ユートピアに住む市民は人道的だが、それでも奴隷制や植民的な支配地域は限定的とはいえ肯定されていたりする。かつて地中海に覇を唱えていた海洋都市ヴェネツィアなどもモデルの一つかも知れないと感じた。 ...
16世紀の英国人が描いた理想郷の描写を通して、その当時の社会情勢や風習が見えてくる。ユートピアに住む市民は人道的だが、それでも奴隷制や植民的な支配地域は限定的とはいえ肯定されていたりする。かつて地中海に覇を唱えていた海洋都市ヴェネツィアなどもモデルの一つかも知れないと感じた。 純粋な経済学の理論が実世界では成立しえず、行動経済学などによる修正が必要な様に、ユートピアに描かれた理想的な社会は現実には成立しえない。ハード面をどれだけ整えても、すべての人間が理想的な振る舞いをする事は期待できない以上、理想像は徐々に崩れていく運命にある。
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周到な諧謔を織り込んで16世紀初頭当時に考え得る限りの理想的な社会として描かれた原始的な共産共有共存共生の島は、「どこにもない」を意味する「ユートピア」と名付けられたとおり、いつかは辿り着きたい憧れや郷愁の対象というよりは常に現世を批判する際に参照すべき象徴として設定されている。...
周到な諧謔を織り込んで16世紀初頭当時に考え得る限りの理想的な社会として描かれた原始的な共産共有共存共生の島は、「どこにもない」を意味する「ユートピア」と名付けられたとおり、いつかは辿り着きたい憧れや郷愁の対象というよりは常に現世を批判する際に参照すべき象徴として設定されている。ユートピア人はかように理想社会を築き運営している、しかるに我々は……と考えるとき、その彼我の隔たりのあわいに見えてくるものが時代を超えて用意されている。
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16世紀の思想家トマス・モアは、英国ルネサンス時代のカトリックの聖人であり、官僚の最高の位の大法官でもありながら、時の権力にたてついたせいで(国王の離婚に反対しただけで反逆罪だ!)、今から475年前の1535年7月6日に、ロンドン塔でギロチンによって処刑されました。享年57歳。ユ...
16世紀の思想家トマス・モアは、英国ルネサンス時代のカトリックの聖人であり、官僚の最高の位の大法官でもありながら、時の権力にたてついたせいで(国王の離婚に反対しただけで反逆罪だ!)、今から475年前の1535年7月6日に、ロンドン塔でギロチンによって処刑されました。享年57歳。ユートピアとは理想社会のことで、ウ・トポス(どこにも・ない)というギリシア語を2つ組み合わせた造語ですが、この本『ユートピア』は、原題を『最良の社会体制ならびにユートピア新島について。いとも著名にして雄弁なるトマス・モアによる、機知に富むばかりか効能もある、真の黄金の書物』という長ったらしいタイトルの本です。この5世紀前に書かれたに著書が、まさか494年後にも読まれているとは ・・・・・書きかけ・・・・・
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ゼミで討論するために読破。 ユートピア人の暮らしについて描くことで当時のイギリス社会を批判した書物。 共有財産制の下に成り立った社会は一見理想的に見えるものの、実体は監視社会。というのが感想。 ただ、そのまま現代に当てはめるのは不可能としても、現代でも採用できるような制度・考えも...
ゼミで討論するために読破。 ユートピア人の暮らしについて描くことで当時のイギリス社会を批判した書物。 共有財産制の下に成り立った社会は一見理想的に見えるものの、実体は監視社会。というのが感想。 ただ、そのまま現代に当てはめるのは不可能としても、現代でも採用できるような制度・考えもあった。 意外と読みやすい思想書だった。これぐらいのレベルならばたまには読むのも悪くない…かも。
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