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酒呑童子の誕生 の商品レビュー

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6件のお客様レビュー

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2023/10/28

酒呑童子は実はシュタイン・ドッジというドイツ人で、飲んでいた人間の血は赤ワインだったという冒頭の珍説から、本書に引き込まれました。とはいえ、本書は「酒呑童子」という怪物が生まれた文化を面白おかしく論じる本ではなく、非常に真面目な学術書です。冒頭のドイツ人説も当時の日本人にとっては...

酒呑童子は実はシュタイン・ドッジというドイツ人で、飲んでいた人間の血は赤ワインだったという冒頭の珍説から、本書に引き込まれました。とはいえ、本書は「酒呑童子」という怪物が生まれた文化を面白おかしく論じる本ではなく、非常に真面目な学術書です。冒頭のドイツ人説も当時の日本人にとっては欧米人は鬼に見え、伝説になっても不思議はないという分析もなされなされています。 異形の酒呑童子の正体については、紅毛人説、山賊説、鉱山師および鉱山労働者説など多数の説があります。その中で著者の高橋昌明さんは、酒呑童子の原像は、疫病を流行らせる疫神、とくに前近代日本の疫病中、最大の脅威であった疱瘡を流行らせる鬼神だったと推理します。鬼は境界に現れることが多いという観念から、酒呑童子の住む大江山は、老ノ坂や山陰道が山城国へ入り込む境界にあり、元来、疫病の跳梁しやすい場所であるとします。この鬼神の上にさまざまなイメージを重畳したものが酒呑童子であり、オランウータンに似た想像上の動物「しょうしょう」(けものへんに星)のイメージがあったと、唐の小説「白猿伝」と「大江山絵詞」の類似性を探ってゆきます。 さらに竜宮としての鬼が島に着目する事に依って「水神」に酒呑童子を重ね合わせたり、聖徳太子伝説も引き合いに出したりと、酒呑童子の正体の奥深さを味わうことができます。 著者の高橋昌明さんの専攻は日本中世史。「清盛以前」「湖の国の中世史」(平凡社)の著書があります。 高橋さんは「酒呑童子説話を通し、中世社会の内と外、中心と周縁、境界や排除にかかわるもろもろを考えてゆく」と「はじめに」で書いています。本書は酒呑童子から発展して、立派な日本中世史論になっています。 本書は書き終えるのに5年かかったと「あとがき」にあります。酒呑童子の世界、日本人の精神世界が味わえる力作です。

Posted byブクログ

2015/05/05
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酒呑童子=ゴリラ説は目から鱗でした。 その他「だいぶ酒呑童子から離れてしまっているような……」と思う個所もありましたが、おおむね参考になりました。

Posted byブクログ

2015/04/01
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古書店にて200円で。酒呑童子そのものではなく、鬼門や蚩尤に関する文章が気になったので購入。この系統で読んだのは永井豪先生の『闇の宴 酒天童子異聞』ぐらいだが、さすがに専攻が日本中世史となると参考文献の数も膨大で、着実な論証を目指すにはこれくらいの博捜が必須なのだと思い知らされる。酒呑童子の正体についての考察にも気づかされる点は少なくなかったが、説話の形成に影響を与えたと目される国内外の様々な説話・文学には初見のものも多く、まさに蒙が啓かれる思いだった。これぞ読書の醍醐味。

Posted byブクログ

2011/04/06
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[ 内容 ] 酒呑童子の説話には、日本人に内在する、天皇や国家が成す秩序の攪乱者への脅威や排除の心理を読み取ることができる。 この異形の童子の正体とはなにか。 紅毛人説、山賊説、鉱山師および鉱山労働者説などの諸説をさまざまな角度から検証するなかで、著者は、疫病を流行らせる神(鬼)である疱瘡神にその原像を見出す。 酒呑童子説話の考察をとおして、中世社会の内と外、中心と周縁、境界や排除などにかかわる諸問題に鋭くせまる。 [ 目次 ] 第1章 酒呑童子の原像―京都と四角四堺祭 第2章 酒呑童子のふるさと―中国の小説・伝説に探る 第3章 竜宮城の酒呑童子 第4章 二つの大江山・三つの鬼退治―酒呑童子説話と聖徳太子信仰 第5章 伊吹山の酒呑童子 第6章 酒呑童子説話の成立 [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]

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2010/12/30

大江山の酒呑童子説話についての推論。陰陽道や仏教、中国の伝説に小説、中世の社会意識など、説話に影響を与えたとおぼしきありとあらゆるものについて検討している。酒呑童子については何も知らなかったのだが、たいへん興味深く読んだ。とくに鶏の境界性についての話はおもしろく、新たな視点を得た...

大江山の酒呑童子説話についての推論。陰陽道や仏教、中国の伝説に小説、中世の社会意識など、説話に影響を与えたとおぼしきありとあらゆるものについて検討している。酒呑童子については何も知らなかったのだが、たいへん興味深く読んだ。とくに鶏の境界性についての話はおもしろく、新たな視点を得た喜びでいっぱいだ。 だが、酒呑童子の原像が疱瘡神であること、説話の原型が渡辺党周辺で発生したことについては異議がある。 まず疱瘡神説。酒呑童子が水神と見なされていたことに著者自身が言及している。そして酒呑童子が疱瘡神だからこそ水神の姿で描かれているのだ、と論じているのだが、これは結果ありきの論であって、ふつうに水神と受け取ればいい。 また説話の原型について。説話誕生に影響を与えた諸事情についてこれだけ調べを尽くしているのだから、逆にそれらの影響を差し引いていけば原型が辿れるはずである。残るものは何か。異界と人界の境界に棲む水神(←酒好き)。さらわれた姫君たち。主人公を助ける援助者。これはまぎれもなく、大蛇退治の物語だ。 大蛇退治の物語は、日本のヤマタノオロチ、ギリシャのペルセウス神話など、神話や昔話の形で世界各地に分布する。大蛇は水のそばに棲み、多くの場合姫をさらったり喰らったりする。援助者を得た主人公は大蛇に酒を飲ませて頭を切り落とし、姫を救い出す。(もちろんさまざまなバリエーションがある。個人的には「がらがらどん」や「なら梨とり」も大蛇退治の物語であると考えている。)大蛇を倒す主人公もまた竜神としての特徴(長くなるので説明は省くが)を備えている場合が多く、その意味で本書の「頼光=雷公」説は素晴らしい。 さてさらわれた姫たちは、本来は荒ぶる水神への供犠であったと考えられる。かつてそれは必要な犠牲だったのだ。その供犠の記憶が残り、しかもそれを良しとしなくなった時代に、大蛇退治の物語は発生する。制水権が異形の水神(自然そのもの)から人間の手に移ったことをあらわしている、とも言える。 京都は水害の地であり、数百年から千年以前に水神に供犠を捧げていたことはありうるだろう。やがて大蛇退治の伝説が生まれる。それは著者が推定する鎌倉末期よりはるかに古い時代。伝説は語り継がれ、そこに本書で説かれたさまざまな事情が加わった。そうして生まれたものこそ酒呑童子説話ではないか。 おっと、新説を唱えてしまった…。しかし、昔話や口承文芸学を研究している人はみなとっくに気づいているのではないだろうか。 ところでこの年の瀬に、私はなぜこんなことをしているのか。まだ一枚も年賀状を書いていないぞ。

Posted byブクログ

2009/10/04

まぁ、鬼ということで(笑)「酒呑童子」のお話はとても好きなおとぎ話で、それに関する色々を読むのも好きなんですが、これはかなり堅い方です。

Posted byブクログ