商業試論 の商品レビュー
Cantillonをカンティロンと表記することへの異論については、中川辰洋『ジョン・ローの虚像と実像」がおもしろい。私はこの商業試論の序文に関心がある。フィジオクラートの先駆であり、すでにケネーの経済表はここでできあがっていたといわれる彼の土地価値論の前提は、不完全情報を前提にし...
Cantillonをカンティロンと表記することへの異論については、中川辰洋『ジョン・ローの虚像と実像」がおもしろい。私はこの商業試論の序文に関心がある。フィジオクラートの先駆であり、すでにケネーの経済表はここでできあがっていたといわれる彼の土地価値論の前提は、不完全情報を前提にしているように読める。18世紀中葉であればそれは自然な仮定である。 カンティヨンは、いうまでもなくジュボンズが絶賛して知られるようになり、シュンペーターも称えているが、この不完全競争の前提だけをとらえても、それ以上の意義があると私は感じている。研究者稼業はやめたのでそれ以上は究明できないが。 それにしても、時代が経済学を作ってゆく課程が見えるのが経済学史の醍醐味なのではないかと思うが、スミスやリカードだけではそれは十分には味わえないのではないかと感じる。今の経済学史の研究者は、すでに終わった学問として扱われこれ以上もう何も進まないのかもしれないが。
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