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夏の朝の成層圏 の商品レビュー

4.1

46件のお客様レビュー

  1. 5つ

    15

  2. 4つ

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2015/11/12

ここではないどこかへたどり着いた彼。 つむぐ物語は無人島でなんとか生をつなごうとするところから、いずれ戻らなければならないところへたどりつくまでの休暇。 あとがきの池澤夏樹は「境界を描く作家」というのが心に残りました。

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2014/09/01
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※このレビューにはネタバレを含みます

あらすじは、「彼」が遭難して、無人島で暮らす。以上。その生活を見事な文章で綴りあげています。情景描写と心境語りのバランスが非常に良くて、するする入ってきて、共感を生みます。 そして何より、詩的です。この作品を読んだことによって、ピタゴラスイッチ的に伊坂幸太郎の「重力ピエロ」の評価が下がりました。「重力ピエロ」は筋書きは面白くないけど、時々びっくりするほど詩的なことを言い出す、それが唯一良いところだと思ってました。しかし、「夏の朝の成層圏」を隣に置いたら陳腐に見えます。「重力ピエロ」は、台詞に詩を仕込んでくるので非常に違和感があったのですが、こちらの作品がそこのバランスがとてもいい(無人島なのでそもそも台詞がない)。 非常に感動しました。美しい小説です。買います。

Posted byブクログ

2014/03/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

この人の作品はこれで3冊目。 こちらは、池澤夏樹の最初の長編小説です。 文学に対する誠実さとストイックさを感じます 次の展開を楽しみにして読み進めるのではなく、 一文々々を感じながら読む本です。 読み手に集中力が要求されるので、少々疲れます。 でも、この人の作品は、 自分を不思議な世界に引き込んでくれるので、 読んでる間は幸せな感じがします。 最後の方は少し展開があるので、一気に読んでしまいました。 時間かかったけど、読んでよかった。 おすすめです。

Posted byブクログ

2013/06/06

大好きな大好きな池澤夏樹の処女作。南の島、自然と文明、個と全体、理系的な要素と紛れも無い文学性に溢れた文章、彼の作品を彩るエッセンスが剥き出しにぎゅっと詰まってる。その後の小説においてこれらの要素は洗練され、発展していくわけですが、ああここが原点だったんだなあ、って思ってしまって...

大好きな大好きな池澤夏樹の処女作。南の島、自然と文明、個と全体、理系的な要素と紛れも無い文学性に溢れた文章、彼の作品を彩るエッセンスが剥き出しにぎゅっと詰まってる。その後の小説においてこれらの要素は洗練され、発展していくわけですが、ああここが原点だったんだなあ、って思ってしまって感慨深い。一文一文が染み渡るように、大事に読みました。わたしにとってたいせつな問題を捉えているのも、その問題に対するアプローチ方法も、物語に落とし込むスキルとそれを彩る文章の芸術性も、ぜんぶもっているのはけっきょくのところ、純文学なのかなあ、わかんないけど、池澤夏樹の文学がわたしは本当に好きです。個人として生きていくことを突き詰めて、突き詰めてしまうと、全体性に繋がっていく、そういうのを超えてどこへ行くのかなあっていうのをわたしはけっこう池澤夏樹に求めている気がする。うつくしい文章、澄み渡る空気、感覚的なものも含めて、ああすきだなあ、

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2013/04/11
  • ネタバレ

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「ここではないどこか」の話。 「ここ」にいて、コーヒーを飲みながら心だけは「ここではないどこか」へ。 (ネタバレかな?以下、物語の終盤に出てくる言葉を引用します。) 最初は自然礼賛、文明批判の単純な話かな、そうだったらがっかりだな、と思って読んでいたけど、そうではなかった。 主人公である「彼」自身が「センチメンタル」というように、 また対話相手のマイロンが「高貴なる野蛮人。つまらぬ罠さ。」というように、 ロマンチシズムを自覚しながらも、言葉にできない何かを捉えようとする「彼」。 そして物語を綴り終わったと同時に「長い休暇は終わった」。 無人島への漂流を書きながら、どこまでも透明感のある観念的で美しい世界を感じます。 独身時代に購入して、10年近く積んであった本なんだけれど、買った当時に読んでおけばよかったな。 今家庭を持ち、「ここ」で地に足をつけた生活を何より守りたいと思っている私には「ここではないどこか」の遠く美しい話で終わってしまった。 それとも家庭は関係ないんだろうか。バブルも遠くなり、堅実を求める世の中の空気なんだろうか。 でも、読んでいる間「彼」のように実際に無人島に行かなくても心だけは「長い休暇」に出ることが出来ました。

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2012/11/09

すごいすごい、素晴らしい。 無人島に漂着して、生命を維持することが目的の生活を送る。 その愉悦と現実に戻らないことへの背徳感。 想像力で人はここまでのものが書けるんだなあ。 本当にこの作家さんは素晴らしい。 世界と人間を手のひらにのせて、見せてくれる。

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2012/09/25

素晴らしい。哲学的であり、詩のようにも美しい小説。特にヤシが島で暮らし続けてマイロンと対話しながら深い自問自答を繰り返し、最後には「書く」ことに辿り着く過程は感銘を受けた。海外にいるときに読んだので色々と自らの体験に重ね合わせられることも多かった。

Posted byブクログ

2012/12/21
  • ネタバレ

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池澤夏樹さんのデビュー作。 無人島に漂流した主人公と自然との関わりを描いたもの。 最初は苦労しながらも何とか生き抜いていた。 そんな矢先、他の人が訪れたことで元の世界に戻れる機会を得る。 しかし、彼は帰還することなくあえて自給自足を続けた。それは何故か。 そうさせる力や欲求というのは簡単に説明することのできないものだ。しかし、最後には主人公はその生活で学んだことを表現しようと決意する。それは可能なのかどうか。 池澤さんは感覚と思考、この二つを両立させようと試みているように感じる。また、目に見えないもの、形を成さないものに対しても敬意を払っている。その大切さを感じているからだと思う。

Posted byブクログ

2012/08/01

独特な空気感と理屈が南の島という舞台に融合していて気持ち良く読めた気がした。 どっちが本当の世界なのか、どこからが日常なのか、境界線がないようであるものの、それも曖昧。 そんな感じが心地良い。

Posted byブクログ

2012/06/12

池澤夏樹のなかでも最もすきな本。 皮膚に迫ってくるようなリアルな自然。夢中であっと言う間に読み終えました。

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