踊るヴィーナス の商品レビュー

フレドリカブレア(著者),鈴木万理子(訳者)

2011/09/12

一見よくある物語風の伝記だが、内容はびっくりするくらい濃密。

本人だけでなく関係者の手紙や日記、新聞記事、そして直接ダンカンと交流があった人々へのインタヴューなど、膨大な量の一次資料を突き合わせ、曖昧になりがちな細かい事実関係に目配りを利かせている。読んでいて発見があるし、インスピレーションも刺激される。（自伝『わが生涯』の記述にはかなり不正確な点や誇張が含まれているようだ）

たしかにゴシップ的な要素（恋愛、借金など）の占める割合が大きいが、ダンカンのダンスの詳細についても可能な限り迫っている。ダンカンの表現の変遷、そして公演地ごとの観客や批評家の反応がまとめられていて、「裸足のイザドラ」と要約されるような平板なイメージを覆してくれる。