アクシデンタル・ツーリスト の商品レビュー
主人公のメイコンはつまらない人間として描かれている。自己流の洗濯方法を頑なに続け、旅行に行っても朝食はいつも食べ慣れている食事をこのみ、夜はベイクドポテトを食べる。飛行機の中では隣の席の人に話しかけられないように本を読むふりをする。仕事が旅行先でも自宅に居間にいるようにするための...
主人公のメイコンはつまらない人間として描かれている。自己流の洗濯方法を頑なに続け、旅行に行っても朝食はいつも食べ慣れている食事をこのみ、夜はベイクドポテトを食べる。飛行機の中では隣の席の人に話しかけられないように本を読むふりをする。仕事が旅行先でも自宅に居間にいるようにするためのガイドブックを作っているのが象徴的です。 ストーリーもほとんど無いと言って良いでしょう、メイコンが妻に逃げられ、飼い犬エドワードがあまりの凶暴であることから訓練士ミュリエリと出会い恋をし、妹が自分のボスと結婚するくらいです。 私はこの小説をのめりこんで読みました、なぜだろうか。それは登場人物の会話がたのしいからだと思います。メイコンが実家にいれば兄2人と妹がしゃべりまくるし、ミュリエリといれば一方的に身の上話を聞かされる。その話が面白いので小説を読むのが止まらないのです。 メイコンとちがってミュリエリは非常に活発で挑戦しつづける女性です。いくつもの仕事を掛け持ちし、勤めとはべつに副業で稼いでいくように非常に活動的です。どんな人間にも襲いかかるエドワードもミュリエリの前ではおとなしいのが印象的です。ですが、メイコンがフランスに行くときに、おなじ飛行機に乗っているところは驚きを越えて怖さを感じました。 読み終わって、気になって冒頭をすぐに読み返しました。サラがメイコンに別れ話をするところです。メイコンがいやなやつだと思うように描かれています。彼が最後にとる行動の布石になっている気がしました。
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図書館で。 断片的にこの映画、覚えてるなぁと本を読みながら思い出しました。妹が丸1日かけて七面鳥を焼いて家族全員が手を出さないのにお客さんだけが食べたシーンとか。後は主人公が飛行機に乗った時に話しかけられた所とか。 なんていうのか今でいう所の発達障害みたいな主人公といろいろとす...
図書館で。 断片的にこの映画、覚えてるなぁと本を読みながら思い出しました。妹が丸1日かけて七面鳥を焼いて家族全員が手を出さないのにお客さんだけが食べたシーンとか。後は主人公が飛行機に乗った時に話しかけられた所とか。 なんていうのか今でいう所の発達障害みたいな主人公といろいろとすれ違ってボタンの掛け違いになってしまった夫婦と。そしてずいぶんすぐにお互いに恋人候補が出来るものなんだなぁ、とか。さすがアメリカというべきか。 そこまで面白いとは思わないけれども面白くないというわけでもない。なんか不思議な印象のお話だなぁと思いました。そしていくら、何十年一緒にいたとしても夫婦とか家族でも話し合わなければ思いは伝わらないよね、という事はなんとなく思いました。そして偶然の旅人って訳はなんか…印象が違うなぁ。仕方なく旅に出てる、というか必然の旅、というか。必要に迫られてしか旅に出たくない、というような意味合いがあまり伝わってこない気がする。
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書棚の整理も兼ねて、厚めの本から片付けようかと思って手に取った本。主人公と同世代で、結婚生活の期間も同じという事もあって、久々にのめり込み読みしました。 始めの引きつけは弱いけれど、大体の把握が出来てから面白くなる。 ミュリエルとの出会いは、これからの展開を予感させる。さりげ...
書棚の整理も兼ねて、厚めの本から片付けようかと思って手に取った本。主人公と同世代で、結婚生活の期間も同じという事もあって、久々にのめり込み読みしました。 始めの引きつけは弱いけれど、大体の把握が出来てから面白くなる。 ミュリエルとの出会いは、これからの展開を予感させる。さりげなく。あれ?予感が外れたかな?と思わされたところで再登場。 ミュリエルの魅力が存分に描かれている。部分的に赤毛のアンを彷彿させる。ハチャメチャでありながら、大胆不敵。常識破りであっても、本質を見る確かな目を持つ生活力旺盛なキュートな女性。結婚式の日取りに印をつけたカレンダーを送ってくるなんて、自分ならこれでイチコロです。 最後まで優柔不断で、自分勝手な主人公だが、彼の思考や彼なりの論理構造は手に取るように理解出来る。なのに、最後の決断に至った経緯だけがあたかも天からの啓示を受けたかの様に唐突な感じに思えてしょうがない。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
沢木耕太郎の「深夜特急ノート」で名前が挙がっていたので手に取った。 序盤から中盤までは何というか普通の小説という感想。 面白いのは主人公を中心としたリアリー家の滑稽さ位だろうか。 終盤でメイコンが言った、 「ある一定の年齢を過ぎた者には失うものを選ぶ選択の余地だけが残されてるのさ。」 というセリフが胸に刺さる。 こういう言葉を見るたびに自分がけっして若くは無いということを考えてしまう。 次は「夢見た旅」を読もう。
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ガイドブックの著者である主人公は、 息子を亡くし、妻にも出ていかれてしまう。 ある時、息子の犬が問題行動を取るようになったことがきっかけで 犬の訓練士である女性と出会い…。 感情を表に出さず、状況をコントロールすることに 喜びを見出すタイプの主人公が物悲しい。 なんてことのない...
ガイドブックの著者である主人公は、 息子を亡くし、妻にも出ていかれてしまう。 ある時、息子の犬が問題行動を取るようになったことがきっかけで 犬の訓練士である女性と出会い…。 感情を表に出さず、状況をコントロールすることに 喜びを見出すタイプの主人公が物悲しい。 なんてことのない話なのに善悪にとらわれない 人間臭いキャラクターたちの世界に引き込まれる。 はっちゃけた訓練士も、できた女房も、 どちらも欠点を抱えている。 主人公が出した結論に万人が賛成できるつくりでもないが、 それでも納得させられてしまう説得力。 人物造形の妙、洞察力の鋭さに脱帽して読み終えた。
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作家の平安寿子さんがおすすめしていたので読みました。平さんのペンネームもアンタイラーさんから来てるとご存知でしたか? 読み始めはなかなか先が読めないし、こういう男性好まないなあとおもって読んでました。まさにそこがポイントです。 アンタイラーさんも平さんも、読みすすめるうちに自分も...
作家の平安寿子さんがおすすめしていたので読みました。平さんのペンネームもアンタイラーさんから来てるとご存知でしたか? 読み始めはなかなか先が読めないし、こういう男性好まないなあとおもって読んでました。まさにそこがポイントです。 アンタイラーさんも平さんも、読みすすめるうちに自分もその物語の中に入っている感覚になるところが素晴らしい。 最後までどうなるのかわからない結末にわくわくしたり、ちょっとがっかりしたりを繰り返し、あっという間に読み終える感じです。 最初に強く感じた、「こういう人いやだなあ・・・」って感情は一人の人間の良さを違う角度からみるとそうなる。人生には、自分をどんどん引き出してくれる人と出会えるようになっているのだと感じました。 久しぶりにどっぷりとつかった読書でした。映画も見てみたくなりました。
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一人息子を亡くして1年、メイコンとサラのリアリー夫婦の仲は冷え切っていた。 妻サラが出て行き、結婚20年でついに別居となった。 「アクシデンタル・ツーリスト」という旅行案内を書くのが仕事。観光ではなく用事で旅行するサラリーマン向けの本。 几帳面で堅苦しく、感情を表に表さないメイコ...
一人息子を亡くして1年、メイコンとサラのリアリー夫婦の仲は冷え切っていた。 妻サラが出て行き、結婚20年でついに別居となった。 「アクシデンタル・ツーリスト」という旅行案内を書くのが仕事。観光ではなく用事で旅行するサラリーマン向けの本。 几帳面で堅苦しく、感情を表に表さないメイコン。 厳格な祖父母に育てられたことが直接の原因だろうが、父を亡くした後、気まぐれな母に翻弄されたことや、4人も兄弟がいたので、自分たちだけで結束したことも一因? 一人暮らしを楽しもうと工夫するが… ボルティモアの旧市街の住宅地にある大きな家に、猫のヘレンと犬のエドワード(ウェルシュ・コーギー)だけと一緒にいる。 メイコンにとってはサラはただ一人の女性だった。 骨折したことをきっかけに、実家に戻る。 リアリー家の古い建物には、既に離婚して戻ってきた兄二人と、結婚も就職もしないままの妹ローズがいた。 世話焼きのローズは有能なのだが、オールドミスしか着ないような服装。 猫はいいが犬のエドワードは環境の変化に混乱してますます手に負えなくなり、来客には吠え、家を出ようとする家族にまで襲いかかる始末。撃ち殺せとまで言われるが、それだけはメイコンも首を縦に振らない。キャンプ地で強盗に出くわして殺されてしまった12歳の息子イーサンの犬だったのだ。 エドワードを預けるために行った犬猫病院で、ミュリエルという25歳の女性に出会う。 派手な服装で若すぎる彼女に何かと接近され、かわそうとするが、いつしか… メイコンの担当編集者でもある出版社のジュリアンが来訪。 古風で独特な暮らしぶりに興味津々となる。 陽気でお気楽なバツイチ独身のジュリアンの好奇心を煩わしく思うメイコンだが、なんとジュリアンが二つだけ年上のローズと恋に落ちるのだ。 ユニークな一家の堅苦しくも不器用なのが何ともおかしみがあります。 メイコンは最初は本当に冷淡なのかとも思えるのですが、次第に味が出てきます。 若いミュリエルの強烈なキャラクター。 少々とっぴで品はないけど、不屈の精神がいいですね。若くしてできちゃった婚で、未熟児で生まれた息子を一人で育て、アレルギーのある息子に対してはいささか過保護。 ミュリエルの住む界隈は貧しく、メイコン一家とは社会階層が違うのだが。 縁は異な物としみじみ。 荒れていた犬のエドワードが、ミュリエルの躾でしだいにマシになっていき、ミュリエルの家で、少年アレクサンダーの隣で初めて眠るところ…何気なく書いてあるけど、泣けます。 アン・タイラーで一番オススメできます。 映画化されているのもわかりますね。 映画化名は「偶然の旅行者」 アン・タイラーは1941年ミネソタ生まれ。 1964年デビュー。1984年の本書が長篇10作目。
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息子を強盗に殺されたことが原因で、妻とも別居したメイコン。 骨折し実家に戻ったメイコンに、無神経なまでに距離を縮めてくるミュリエル。 二人の関係がもたらす新たな転機。 ありふれた日常を描いているだけなのに、惹きつけられるように読み進めていった。 登場人物たちに寄り添った作者の温か...
息子を強盗に殺されたことが原因で、妻とも別居したメイコン。 骨折し実家に戻ったメイコンに、無神経なまでに距離を縮めてくるミュリエル。 二人の関係がもたらす新たな転機。 ありふれた日常を描いているだけなのに、惹きつけられるように読み進めていった。 登場人物たちに寄り添った作者の温かい語り口が、福音のように感じられるからかもしれない。 「ある一定の年齢を過ぎた者には、失うものを選ぶ選択の余地だけが残されている」の言葉が胸に刺さる。 人生の迷いや痛みを和らげる良薬本でした。
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