日本文学と死 の商品レビュー
古典の基本知識がないと理解しがたい本だと思う。 要は紋切り型があった、ということではないのか。 男前や力のある者には色恋沙汰がついて回る。 当時のセンセーショナルな恋愛の形の一つとして、近親相姦があった。 神の場所・伊勢という「舞台」もあった。 物語るうえでの典型的な材料・形とい...
古典の基本知識がないと理解しがたい本だと思う。 要は紋切り型があった、ということではないのか。 男前や力のある者には色恋沙汰がついて回る。 当時のセンセーショナルな恋愛の形の一つとして、近親相姦があった。 神の場所・伊勢という「舞台」もあった。 物語るうえでの典型的な材料・形というものがあったから、それぞれの話の類似点が生まれているのだろう。 第二章について、生まれ変わりの物語などは現代人にとっては荒唐無稽かもしれないが、昔の人はそういった物語に親しむことによって死というものの位置づけを自分の中に作って受け入れて行ったのかもしれない、と思った。 現代人は市に対して脆弱すぎる気がするが、それはこうした物語や、実際の死に触れる機会が圧倒的に少ないからではないか。 そんな風に思った。 親鸞や芭蕉、虫めずる姫君がでてきた「捨てる」の章は分かりやすく、共感して読めた。 昔から人は見栄や世間体や欲、その時々の常識に縛られ、縛られていることにすら気づかずに窮屈に生きていたのだ。 「死生を越えること」では、遺書や遺言から、ある意味生々しい思いが読み取れるところが興味深かった。 とても面白かった。
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