日米外交三十年 の商品レビュー
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1989年(底本1982年)刊。著者は元外務次官・駐米大使。 岸内閣での安保改定、佐藤内閣下での沖縄返還、日中平和友好条約締結や金大中拉致事件など節目節目での外交で表舞台にたった人物の自叙伝。 勿論、沖縄返還密約すら取りざたされている中で本書を紐解く意味は、 ① 外務省見解の建前はどうなってきたか、 ② 密約成立過程をどのように叙述し隠蔽したか、 ③ 自叙伝は特に不利な内容は隠蔽される傾向に気付けるくらいか。 ② は、前後の叙述の繋ぎが確かに不自然かつ抽象的で、隔靴掻痒の記載と理解できる(普通は読み飛ばすだろうが)。 また本書から滲み出る著者らしい限界に苦笑を禁じえない。 例えば、安保改定交渉でも逐条検討がなされたはずで、その過程での日米間の討論こそが外交交渉の醍醐味だが、全く触れない。 あるいは、憲法9条2項がポツダム宣言を逸脱すると主張するが、その結論は兎も角、それに至る思考過程を開陳しない。最低限必要なポツダム宣言の条項分析すらしないという体たらくぶり。 さらに、日本国憲法成立過程の分析についても、一文芸評論家の著作を孫引きするばかりが、独自に調査・検討したことが伺えない。 かように、著者の思考や、その叙述過程に?をつけざるを得なかった。書ける力があるのに書かないのは果たしていかなる理由によるものだろうか。
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