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ぼくがしまうま語をしゃべった頃 の商品レビュー

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2021/03/28

文学・詩から映画、音楽、マンガ、アイドルにいたるまで、現代のあらゆる文化的事象を対象にした著者のエッセイや対談などを集めた本です。 一見したところまとまりがなく雑多な内容をあつかっているように思える本書のなかで、ことばに対する著者の考えがところどころで示されているのが目を引きま...

文学・詩から映画、音楽、マンガ、アイドルにいたるまで、現代のあらゆる文化的事象を対象にした著者のエッセイや対談などを集めた本です。 一見したところまとまりがなく雑多な内容をあつかっているように思える本書のなかで、ことばに対する著者の考えがところどころで示されているのが目を引きます。たとえば19歳の「ぼく」の留置所内での体験を記した「言葉に飢えていた」では、かぎられた本しか入手できない環境で、次のような「読み方」の試みをおこなったことが語られています。「まず本を三冊用意する。先刻と同じ要領で全頁を分解し、そして独房一杯にばら撒くのだ。そして目を閉じ、あらかじめ決めた枚数だけ拾い上げ、トランプのように入念にシャッフルしてから、おもむろに読みはじめるもちろん、一つの物語として。」本書において著者は、ここで書かれているような「読み方」で、さまざまな文化的事象を読んでいるといえるのかもしれません。 「失語症患者のリハビリテーション」と題されたエッセイでは、「ぼくがのぞんでいたのは、例えば、目の前にあるティー・カップについて正確にしゃべりたいというようなことだったのです。とは言っても、それは現象学的思考に慣れた哲学者が考えるような厳密さとはちがっています。ティー・カップについて話すことができるなら、「1960年代」についてもぼくもその一部分であるにすぎないこの世界全体について話すことができる筈なのです」と述べられています。これもまた、上記のような著者のスタンスをあらわしているように思います。

Posted byブクログ