雪の花 の商品レビュー
記録文学というジャンルに分類される作品を読んだのは初めてだったかもしれない。 淡々とした文章で出来事だけを客観的に綴っているのに、なぜかとても引き込まれた。 素材の切り取り方が秀逸だからか。 幕末の福井藩の町医、笠原良策は、当時の大多数の町医同様、漢方を何より信奉してきたが、偶然...
記録文学というジャンルに分類される作品を読んだのは初めてだったかもしれない。 淡々とした文章で出来事だけを客観的に綴っているのに、なぜかとても引き込まれた。 素材の切り取り方が秀逸だからか。 幕末の福井藩の町医、笠原良策は、当時の大多数の町医同様、漢方を何より信奉してきたが、偶然の出会いにより蘭方医を志す。 やがて天然痘を予防できるという種痘の接種普及に身を賭して取り組んでいくが、次から次へと困難が待ち受ける…。 感傷を一切排除したような語り口がその厳しい道のりをより際立たせる。
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天然痘の予防のために種痘を広めた町医者の鬼気迫る命を繋ぐ戦いの記録です。 ワクチンの考えがなかった日本にこの予防法が受け入れられるには大変苦心したと思います。自分の職場にもインフルのワクチンでも拒否反応のある人もいますし、気持ちが分からなくもないです。 それにしても電車も車も...
天然痘の予防のために種痘を広めた町医者の鬼気迫る命を繋ぐ戦いの記録です。 ワクチンの考えがなかった日本にこの予防法が受け入れられるには大変苦心したと思います。自分の職場にもインフルのワクチンでも拒否反応のある人もいますし、気持ちが分からなくもないです。 それにしても電車も車もない時代の雪山越えの凄まじさ!命懸けです。かなり後半になってもなかなか種痘法が受け入れられず、やきもきしました。私が車出してあげたい!と何度も思いました。 子供たちが死んで大八車で運ばれていく列を見るのはもう嫌だと自分の命を削っても助けたい思う優しさが本当に泣けます。7日置きに種痘するって大変すぎじゃない!? 自分の先祖たちも自分もこういう方達のおかげで命を繋いでこられたのかもしれないと思うと、頭が下がります。これは映画化されたら観に行きたいです。
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吉村昭さんの作品はどれも生々しくて引き込まれます。 破船とおなじく天然痘を題材にした話で、破滅的な破船に対し雪の花は治療法確立に奮闘した医師の未来ある話。 しかし、順風満帆ではない世間の風が読み手の心を締め付ける、なんとも辛い部分もあり、短いストーリーながら読みごたえはしっかりあ...
吉村昭さんの作品はどれも生々しくて引き込まれます。 破船とおなじく天然痘を題材にした話で、破滅的な破船に対し雪の花は治療法確立に奮闘した医師の未来ある話。 しかし、順風満帆ではない世間の風が読み手の心を締め付ける、なんとも辛い部分もあり、短いストーリーながら読みごたえはしっかりあります。
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職場で薦められた本です。 頁数、文字数は多くないけれど、中身はとても重いものでした。 ワクチン概念のない時代の人たちに、病気の種を身体に入れることを説くのは大変なことだと思う。 私利私欲なしに、「人々を天然痘から救いたい」という熱い思いに、感謝したい。 映画化されるようですが...
職場で薦められた本です。 頁数、文字数は多くないけれど、中身はとても重いものでした。 ワクチン概念のない時代の人たちに、病気の種を身体に入れることを説くのは大変なことだと思う。 私利私欲なしに、「人々を天然痘から救いたい」という熱い思いに、感謝したい。 映画化されるようですが、京都から福井への山越え、豪雪の中での撮影は過酷だな。
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一定年齢以上の人の腕にあるワクチン接種の痕。 これを始めた方の話。 せっかくの薬も信じてもらえなければ打てないのか… 私財を投げ出してまで、周囲に白い目で見られてまで、感染症を無くそうとした医者がいた。今の日本にそんな人いるのか?
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天然痘による死者を減らしたい。その一念で私財を投げ打ち種痘の入手と接種に取り組み、戦い抜いた福井藩の町医、笠原良策、その人生。 予備知識も興味もなくても、ぐんぐん読み進められる吉村昭さんの作品。読後には、読めてよかった、知ることができてよかった、と思わせてくれる。 次の作品もたの...
天然痘による死者を減らしたい。その一念で私財を投げ打ち種痘の入手と接種に取り組み、戦い抜いた福井藩の町医、笠原良策、その人生。 予備知識も興味もなくても、ぐんぐん読み進められる吉村昭さんの作品。読後には、読めてよかった、知ることができてよかった、と思わせてくれる。 次の作品もたのしみ。
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江戸時代末期の福井藩。人々の命を奪う天然痘と闘った一町医の生涯を描いた物語。周りの理解を得られず、詐欺師と石を投げられても人を助けるために人生を捧げられたのは何故なのか。素晴らしい人を襲う苦難の人生。やるせなさに胸が詰まった。
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福井藩町医だった笠原良策が天然痘の治療法である種痘を日野鼎哉と協力して福井で広める話。福井という土地柄異国の治療法を広めるのに苦労するところは陰湿な土地柄が出ているようだった。五臓六腑は心、肺、肝、腎、脾の五臓と大腸、小腸、胃、胆、三焦、膀胱の六腑の事らしい。
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天然痘の予防を広めることに尽力した町医者の話。時代背景を思えば、乗り越える壁が多すぎて「絶対に無理」と思ってしまう。そうした難題に私財を投げ打ってまで取り組んだ人の素晴らしさ、だけで終わっていないのがすごい。短編なのに非常に中身が濃い。 『破船』の後に読むとなお良いかと。
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江戸末期に天然痘の予防に力を尽くした笠原良策医師らを描いた歴史小説。なすすべなく死んでいく人々、なんの根拠もない治療法、祈るしかない厳しい現実。種痘への無理解は、現代のコロナワクチン接種忌避と重なる...(否定も肯定もしませんが)。後世に残したい一冊。
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