死都ブリュージュ の商品レビュー
世紀末のほの暗い夢の…
世紀末のほの暗い夢のうちに生きたベルギーの詩人・小説家ローデンバック(1855‐98)が、限りない哀惜をこめて描く黄昏の世界。
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陰鬱な都市・ブリュー…
陰鬱な都市・ブリュージュで、主人公は亡き妻とそっくりの女性を見かけるが……。幻想的な作風です。
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実在の都市で繰り広げ…
実在の都市で繰り広げられる幻想的で憂鬱な世界。
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若くて美しい妻と死別した男やもめのユーグが主人公。ユーグは暗くて静かな世界に身を置きたくて陰鬱な雰囲気漂う古都ブリュージュで暮らしているが、ある日死んだ妻と瓜二つのジャーヌと出会う。 ユーグは敬虔なキリスト教信者でありながら、ジャーヌのなかに死んだ妻の面影を求めて関係を持ってしまうが、死んだ妻を求めているだけであると言い訳し続ける。 しかしながら派手なジャーヌとおとなしかった妻とではやはり違っていて、ユーグはその差異に悩まされ始める。悩みながらも、ジャーヌ自身を愛していることにも気付き始め、今度は信仰に反していることとの二重苦に落ちていく。さらに身持ちの悪いジャーヌに夢中になる様子を街の人々に嘲笑われ、長く共に暮らしていた家政婦も出て行ってしまう。 ジャーヌはユーグのことを愛しておらず、ユーグの遺産目当てに家を物色していて死んだ妻の肖像画や遺体から切り取って大切に保管していた髪の毛を取り上げてユーグをからかっていたところ、ユーグははずみでジャーヌを殺めてしまう。 ユーグは疲れ果てて椅子に座り、教会の鐘の音が部屋にこだましているところで物語は終わる。 ユーグの精神世界の描写が最高だった。このどん底感をしっかり書き落とすのはどれほど労力がかかったことか。ユーグとジャーヌのすれ違い、エゴの塊感もたまらなかった。 ユーグ、家政婦、ブリュージュの住民たちに一切の宗教信仰がなくて、ただ単にユーグがジャーヌを好きになったという設定だったら全然違ったかもしれない。それでいいのかは別として信仰とはなんだろうなあと考えてしまう話でもあった。(この話は宗教なしでは語れないしそこが面白いのだが、だからこそその大前提が違ったらどうなるんだろうなあと考えたという感じ。) 過去に栄えた寂しい都ブリュージュの様子もとても魅力的だった。鐘の音や教会が物語に重みを与えていてとてもよかった
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コルンゴルト作曲のオペラ「死の都」を見て、この原作を知りました。本文中のレトロなモノクロ写真が、物語の幻想性を盛り上げています。
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[ 内容 ] 沈黙と憂愁にとざされ、教会の鐘の音が悲しみの霧となって降りそそぐ灰色の都ブリュージュ。 愛する妻をうしなって悲嘆に沈むユーグ・ヴィアーヌがそこで出会ったのは、亡き妻に瓜二つの女ジャーヌだった。 世紀末のほの暗い夢のうちに生きたベルギーの詩人・小説家ローデンバック(1855‐98)が、限りない哀惜をこめて描く黄昏の世界。 [ 目次 ] [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]
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悲嘆した金持ちのオッサンが死別した妻に似た女を見かけて・・という三文オペラな小説。正直、なにが佳いのか分からなかった。 ブリュージュは最も繁栄したのが14世紀から15世紀にかけてであり、静かに衰退している町が、亡き妻と重ね合わさって「死都ブリュージュ」らしい。 ブリュージュ住民にはすこぶる評判が悪いらしいが、それはもっともだ。
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プログレバンド「夢幻」のアルバム『レダと白鳥』で、 タイトルそのままモチーフにされた「死都ブリュージュ」 を聴いて以来、気になっていた本をやっと読んでみた。 そして、バレンタインデーであり 同時に「ふんどしの日」でもある今日、読了。 それはさておき(笑) 愛妻に先立たれて悲嘆にく...
プログレバンド「夢幻」のアルバム『レダと白鳥』で、 タイトルそのままモチーフにされた「死都ブリュージュ」 を聴いて以来、気になっていた本をやっと読んでみた。 そして、バレンタインデーであり 同時に「ふんどしの日」でもある今日、読了。 それはさておき(笑) 愛妻に先立たれて悲嘆にくれ、喪に服す男が、 ベルギーはブリュージュの街角で妻に瓜二つの女を見出す―― という、 19世紀末の作家ローデンバックによる小説。 敬虔なカトリック信者としてのメンタリティが言動を抑制し、 そこから生じるストレスが暴発して……といったところでしょうか。 ともあれ、「男」と「女」と「古い街」の 三角関係とでも呼びたくなる様相。 挿絵代わりに鏤められた、 運河を初めとする当時のブリュージュの風景写真が 寒々とした雰囲気を一層盛り立てている。 尚、20世紀に入って E.W.コルンゴルトによって翻案され、オペラとして上演されたそうな。
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亡き妻への想い、敬虔な宗教心、と息苦しい程の静謐さが支配する作品の中で、ただ一人ジャーヌだけが現状に飽き飽きし侮蔑している。その不協和音が増せば増すほど読者の苛立ちもまさり、主人公との同調を余儀なくされるだけにプツリと音楽が中断されたような終わり方にハッとさせられた。印刷の都合か...
亡き妻への想い、敬虔な宗教心、と息苦しい程の静謐さが支配する作品の中で、ただ一人ジャーヌだけが現状に飽き飽きし侮蔑している。その不協和音が増せば増すほど読者の苛立ちもまさり、主人公との同調を余儀なくされるだけにプツリと音楽が中断されたような終わり方にハッとさせられた。印刷の都合かもしれないがエッチングのような街の挿入写真が良く合っていた。
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過去の幻影にとらわれ、亡き妻に似た女性を追うユーグの物語というよりは、作者のはしがきに生きているとおり、ブリュージュという都の物語と意識して読むほうがひろがりがある。ただ、現実のベルギーの都ブリュージュは作者の生前から、「死都」などと形容されることに異議を唱えるような、美しい観光...
過去の幻影にとらわれ、亡き妻に似た女性を追うユーグの物語というよりは、作者のはしがきに生きているとおり、ブリュージュという都の物語と意識して読むほうがひろがりがある。ただ、現実のベルギーの都ブリュージュは作者の生前から、「死都」などと形容されることに異議を唱えるような、美しい観光都市である。フェルナン・クノップフに深い感慨を持つ画家として、私はこの作品を読んだ。珠玉の名品。
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