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疑り屋のトマス の商品レビュー

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2010/06/01

作者のリーヴズは本作品でひとつの冒険を成し遂げたといってよいでしょう。作者にとって、私立探偵を主人公とするミステリは、リアリティがないし、その知識もない。しかし、そのようなミステリが好きだから、それを書きたい。そういうなかで、大学の助教授が自らの罪悪感のようなものを利用されながら...

作者のリーヴズは本作品でひとつの冒険を成し遂げたといってよいでしょう。作者にとって、私立探偵を主人公とするミステリは、リアリティがないし、その知識もない。しかし、そのようなミステリが好きだから、それを書きたい。そういうなかで、大学の助教授が自らの罪悪感のようなものを利用されながら、ギャングの依頼で殺人を調査するというのはリアリティがあります。そのため、作者の好みの減らず口をたたく主人公がギリギリのラインで成り立っています。 主人公の文学部助教授のトマスとギャングのチウロとの会話などで、チウロはじわじわとユーモアある台詞でトマスを調査するよう追いつめていくのですが、とても粋です。それはリアリティのないことではありますが、設定や書き方でそれを成り立たせています。 おしむらくは、謎解きで、複雑にからみあった人物関係はよいのですが、因数分解をするようにスッキリさせていくと、非常に単純な形しか残らないのことに面白みがありません。ロス・マクだったら複雑な関係は複雑な関係のまま事件が解かれるのですが。それでも、私好みの作品ということで、☆☆☆☆です。

Posted byブクログ