ラクダの文化誌 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
言語文化が専門の著者による、ラクダにまつわるアラビア語の言葉や文化について詳細に記されている本。ラクダの種、伝説、体の部位や年齢ごとの呼び方、鳴き声、ラクダで表される距離・価値、鞍など内容はかなり充実している。 アラビア語では雪という単語がなく水と表される、という短歌が有名だが、ラクダについてはオスメスの区別どころか年齢1年ごと、妊娠している場合などに違った呼び方があり、鳴き声や部位もあまりに豊富な語彙があるので圧倒された。アラビア語圏においてどれほどラクダが文化的に重要な存在か分かろうというものである。 昔大学でアラビア語を取った時に文字の読み方の説明に「ラクダを絞め殺す時の鳴き声」と説明があって途方に暮れた事があったが、「ラクダが鳴く」の章によれば鳴き方にも「大声」「低く」「不明瞭に」「明瞭に」「やかましく」「長引かせて」「繰り返して」「うれしく」「不服そうに」などあり、「悲しく」には3種類あり、授乳時や交尾時、年齢別にも…と果てしなく語彙が存在するらしい。そりゃあ、「絞め殺す時の鳴き声」とか出てくるよな、と納得してしまった。 読んでいてわくわくしたのはキャラバンソングを扱う「ラクダが踊る」の章だ。非常に過酷で景色も変わらない無音の砂漠にラクダの踏音だけがタタンタタンとリズミカルに響き、旅人の美声がそれに載って伸びていく…という情景は著者も熱が入ったのか、非常にうつくしい文章で胸に迫るものがあった。ラクダと人間とがリズムと歌とを与え合い長い砂漠を越えていく、そのはかなさと尊さが沁み入ってくる。 うた、うた、うた!先日読んだ「チェロ湖」と響き合って、やはり人間を歌が救うのだ、歌がどうしても必要になるのだ、という思いがする。キャラバンソングを聞いてみたいけど、YouTubeとかで聴けるかな?
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