奇子(文庫版)(上) の商品レビュー
田舎の閉塞感・戦後の混沌とした日本・近親相姦などなど。 果てしなく暗い。えぐい。えろい。 人間の「負」の部分を余すことなく描ききっています。 そんな中で外の世界も知らずに閉じ込められて育った奇子は、 傷ひとつなく美しく育つのだけどその常識・概念はひどく歪んでいた。 もちろん周りの...
田舎の閉塞感・戦後の混沌とした日本・近親相姦などなど。 果てしなく暗い。えぐい。えろい。 人間の「負」の部分を余すことなく描ききっています。 そんな中で外の世界も知らずに閉じ込められて育った奇子は、 傷ひとつなく美しく育つのだけどその常識・概念はひどく歪んでいた。 もちろん周りの人間も。 ・・・みたいなおはなし。 手塚のこーいう暗いおはなしが大好きなわたしにはスマッシュヒットな作品でした。 無知だからこその淫婦。奇子えろすぎる。
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初手塚作品。 絵が恐いけど、おもしろい。 田舎にいけばいくほど犯罪は隠ぺいされ潜在化する、というホームズの言葉が聞こえてくる。 出生を表沙汰にできない奇子を地下に閉じ込めるのだが、
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内容は重いですが、読んでいて楽しいです。 当時のことを考えると、「こんなこともあるかもしれないな」と思えます。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ちょっとアダルトな手塚センセイのマンガ。戦後の日本を背景に地方の旧家、天外家の人々を中心とした話。 復員後、天外家の次男、仁朗が天外家に帰って来る。長男は財産目当てに自分の女房を父親に差し出し、父親は長男の嫁を妊娠させ、子を産ませる(その子が奇子)。仁朗は「この家は尋常じゃない。狂ってる」と思うが...。 「...自分だけは例外だと思っているのか?...お前はスパイだったことを認めるか?マニラの収容所キャンプでお前は所長にこびを売るために何人日本人を裏切った?おまえは偽善者だ!....お前に一族を非難する権利があるのか?おまえはおやじよりあにきよりもっと愚劣で人間のクズだということを認めるか?」(一部省略)という心の声が聞こえる。おそらくこれがテーマのひとつでしょう。 そして仁朗はGHQの秘密工作員として働く。ある日それを弟・伺朗に密告されるが兄・市朗に天外家の家名を守るため逃してもらう。そして秘密を知った奇子は地下牢に幽閉される。奇子は地下牢の中で美しく成長し、そして地下牢を出ていく。 この作品といい、未完になった「ネオ・ファウスト」といい、戦後の事件を題材にしているのがけっこう多いですね。仁朗が関わった秘密工作はおそらく下山事件か松川事件(どっちがどんな事件か忘れたけれど^^;)をモデルにしているものだろうと思います。 戦後史を見るという視点、「自分は偽善者でないといいきれるのか否か」ということを考えながら読む視点、奇子を中心としてみるなら、閉ざされた世界で成長するとどういう人間になるのかを見る視点、家制度の崩壊を見る(仁朗の母・いばが家に縛られた女性とすれば、奇子は家を捨てた---家から解放された女性と見ることもできそうだ)など、いろいろな視点から考えさせられるマンガだと思います。
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この本は、人間の奥底に沈む陰湿な側面やどろどろモノが描かれた作品ということは、インターネットで情報を得ていた。調度、MWを読んだ後、子供向けの漫画とは別の手塚治虫作品を探しているときに知った作品だった。 いつも行く近所のブックオフのほかに教習所へ行く途中にあるブックオフなど全部...
この本は、人間の奥底に沈む陰湿な側面やどろどろモノが描かれた作品ということは、インターネットで情報を得ていた。調度、MWを読んだ後、子供向けの漫画とは別の手塚治虫作品を探しているときに知った作品だった。 いつも行く近所のブックオフのほかに教習所へ行く途中にあるブックオフなど全部で6箇所のブックオフを毎週ハシゴをしたが、一冊も置いていなかった。普通2~3店ハシゴすれば見つかるはずなのに奇子(あやこ)に限っては一冊も見つからなかった。結局、痺れを切らし池袋のリブロで新品を購入してしまった。 ストーリーは、以前に聞いていた通り、人間の側面を表現した内容だった。戦後の欧米の文化が入り、日本人の意識を変わり始め、高度成長期となり、日本事態がどんどん変わっていく中、ある田舎の村の閉鎖的家族の中で起こる、陰湿な行いが悲劇をもたらす話である。結局のところ一番被害を受けるのは題名にもなっている奇子ではないだろうか。しかし本人は、どれだけ悲劇なのかは理解していない。 この作品は、手塚文芸の代表作であることは間違いないと思う。
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スゴい。めくるめくタブーの世界。読み終わると、心身ともに疲弊します。 当時の時代の雰囲気の描写もあいまって、独特の不穏な気配が終始ハナ先に匂う気がしました。
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人間の負の部分をこれまでかというほど抽出した作品だと思う。おそらく手塚氏だからこそかけた作品であったと思うし、今後これほど傑出した作品は生まれない気がする。何も悪くない警部の息子が死んでしまったのが残念だったなあ・・ 地味に婆ちゃんが好きだ。婆ちゃんが一番いいやつ。
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残酷で恐ろしい・・閉鎖された「村」の密につながっている人々。閉ざされた環境での歪んだ正義が何とも言いようのない描写で描かれている。
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★手塚治虫が描くタブー漫画のひとつ『奇子』 ★MWに並ぶ異色漫画といってもいいでしょう。ものすごくどろどろです^^;
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(内容) 復員後、天外仁朗が久しぶりに帰る天外家は人間関係が汚れきっていた。 そしてGHQの秘密工作員として働く仁朗にある指示が・・・。 弟に密告され、警察に追われる身となった仁朗。 だが、兄・市朗は天外の家名を守るため仁朗を逃がし、奇子の死亡届を出し地下牢に幽閉してしまった。 ...
(内容) 復員後、天外仁朗が久しぶりに帰る天外家は人間関係が汚れきっていた。 そしてGHQの秘密工作員として働く仁朗にある指示が・・・。 弟に密告され、警察に追われる身となった仁朗。 だが、兄・市朗は天外の家名を守るため仁朗を逃がし、奇子の死亡届を出し地下牢に幽閉してしまった。 村人の記憶から消し去られ、呪われた出生を背負った奇子は、地下牢で少女へと成長していく。 地方旧家、天外家の人々と、戦後史の裏側を描く問題作! (上巻・ブック・カヴァーより) 罪のために罪をかさねつつ歴史のうねりにもてあそばれる天外一族。 一方、警察の手から逃れた仁朗は、朝鮮戦争の混乱に乗じて暗黒街にその地位を築いていた。 そして、地価牢の中で少女から女へと成長していた奇子は、天外家から逃げのび、仁朗のもとへ身を寄せる。 だが、暗殺者と警察が仁朗を追いつめていく。 故郷の淀山へ逃げる仁朗。 あとを追う奇子--。 運命の意図にあやつられ、天外一族がいま一堂に会する! (下巻・ブック・カヴァーより) (感想) 作品の重苦しさでいけば、"きりひと讃歌"か、"奇子"か・・・ってぐらいに、ドロドロしていて重苦しいです。 ムラという閉ざされた空間の、更に閉ざされた空間である土蔵の中に、少女(奇子)が閉じ込められる(しかも、最初は出して欲しいと言っていた奇子も、途中から、逆に暗闇以外の場所に怯えるようになる)というあたり、壮絶です。 "村八分"って言葉は、村から締め出す感じを受けるんですが、逆に、村の更に内部に閉じ込めることで、俗世間から遮断してるんだから、こりゃ怖ろしい制裁ですぜ。 で、その奇子は、後に土蔵の外に出るわけですが、健康に成長してるっていうのは、やっぱり、普通に考えればおかしいですね。 いくらなんでも、光が殆ど入らない土蔵の中で、すくすく育つっちゅ〜のは、有り得ないと思う。(病気にもなるだろうに) それに、万が一、それが可能だとしても、1日に食料等を供給してくれる三男とわずかに言葉を交わす程度なのに、言葉を覚えている(というか、一応、会話が普通に出来る)というのもおかしい。 ただ、その有り得なさが、奇子をより不気味に、かつ、より清らかにしている気がしてならない。 清らかっていうと、語弊があるかな、天外家の財産を巡る欲望に巻き込まれてないっちゅ〜か、後半、次男のところに身を寄せた奇子が、子供に金をばら撒くシーンがあるじゃないですか。 ああいう、世間との価値観のズレというか。 奇子は、全くの狂人になったわけじゃない・・というところが、怖いですね。 価値観といえば、奇子にとって、男性への愛情表現は抱かれることだけで、そうやることでしか、愛の価値を確認出来ない。 そうさせたのは、1つに、奇子を犯し続けた三男の責任はデカい。、 後半、「俺は、天外家の糞を全部引っかぶった」とか、自虐的なことを言って、棚に上げ、「みんな奇子に謝れ!」とか叫んでますが、お前は、じゃあ、ど〜なんだよ!と突っ込みたくなります。 とにかく、登場人物が全員、狂ってますね。 息子の嫁を犯して奇子を産ませた父、財産相続のためなら妻も抱かせる&その妻を殺す長男、自らのために人殺しも厭わない次男、奇子を犯し続ける三男、アカのために勘当された長女(殺された恋人が20数年毎月夢に出る・・っちゅ〜のはやっぱり狂ってる) あ、ここで言う、狂ってるっていうのは、"人間誰しもが狂ってる"とかそういう話じゃなく、ごく一般的な見地から見て・・という次元です。 で、その狂いの大本は、やっぱり奇子。 結局、みんな奇子のことが気がかりで、どこまで逃げたところで、最後は故郷に集結、そして、奇子を取り囲んで、土蔵同様、暗い洞穴の中に埋められてしまう。 しかも、救助が来た時、その閉じ込められた洞穴は、地上と紙一重だった・・というのも、土蔵と同じ。 暗闇の中で、笑っている奇子。 普通ならば、洞穴ん中に閉じ込められたら狂うもんで、現に、奇子以外の人間は狂っている。 でも、奇子は、冷静でいる。 この段階で、初めて、本当の奇子の体験した恐ろしさというか、本当に奇子が狂っているというのを実感させられて怖い。 完全に狂ったわけじゃない(言葉を喋ること等は出来る)けど、間違いなく狂っているところ、そして、以前、ムラの医者が奇子を犯そうとしたこととかも、ちゃんと覚えているところ。この辺が、底知れず不気味です。 でも一番怖いのは、子供達がそんな状況になったり、死んだりしてるにも関わらず、「わしが生きてればいいです」とか言って達観してる、最後の母親かも。この人は、本当に不気味。 ・・・いやいや、一番怖いのは、こんな話を思いついた手塚治虫自身なのかも(笑)
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