スポーツ産業学入門

日本スポーツ産業学会(編者)

• 販売会社／発売会社: 晃洋書房
• 発売年月日: 2025/04/10
• JAN: 9784771039377

商品レビュー

2025/05/05

1. はじめに：スポーツの産業化とその意義
スポーツは人々の心身を豊かにし、生活に潤いと喜びをもたらす。
本書のキーワードは「スポーツの産業化」。
スポーツが産業化することで魅力が増し、スポーツを通じた幸福な人が増えると信じている。
スポーツ産業とは「スポーツ文化を産み出す経済活動」と位置づけ、単なるモノやサービスの「売り買い」だけでなく、スポーツ文化を産み出す経済活動全体を対象とする。
2. スポーツ産業の歴史と構造
プロスポーツリーグは、イギリスやアメリカで起こり、日本にも伝わった。特に野球は日本でプロ化が始まった。
スポーツ用品産業は、企業の技術力、素材開発力、ノウハウが重要。機能的価値だけでなく、ブランドロゴやデザインによる情緒的価値も重要となる。
スポーツ施設産業は、公共施設と民間施設があり、公共施設は税金で整備されることが多い。施設の老朽化や、維持管理費、利用料金の設定など、様々な課題がある。
スポーツ興行における権利ビジネスは、主催権、施設管理権、入場券、商標権、肖像権、スポンサーシップ、映像利用権など多岐にわたる。
3. スポーツの価値測定
スポーツの価値は多様で、定量的なものと定性的なものがある。
経済的価値を測る指標として、スポーツGDPがある。日本のスポーツGDPは増加傾向にあるが、新型コロナウイルスの影響で一時減少した。
スポーツによる地域活性化を測る手法として、地域付加価値創造分析がある。
社会的インパクトを測る手法として、SROI（社会投資収益率）がある。
プロスポーツチームの価値を測る手法として、CVM（仮想市場法）がある。
ボランティア活動の価値を測る手法として、代替費用法や機会費用法がある。しかし、ボランティア活動の価値は金銭だけでは測りきれない側面も大きい。
4. すべてのスポーツは産業化せざるを得ない
学生野球のようなアマチュアスポーツも、様々な資源（ヒト、モノ、カネ、情報）が投入されており、経済活動として展開されている。
中学校の部活動の地域移行は、指導者の負担軽減や新たな雇用の創出といった側面がある一方で、資金の投入や受益者負担といった課題も浮き彫りにしている。
花火大会のようなイベントも、需要増加に伴う運営費の増加や、安全対策、受益者負担といった課題があり、産業化が進んでいる。
スポーツ文化を享受するためには、施設や指導者が必要であり、それらを維持するためには資金が必要となる。受益者負担原則はスポーツにも当てはまる考え方。
5. 本書の目的
本書は、スポーツ産業学会の活動の一環として、「スポーツ産業とは何か」を分かりやすく解説することを目的としている。
大学等での学習や、スポーツビジネスに関心のある人々にとって、本書が役立つことを願っている。
重要なアイデア・事実
スポーツ産業は単なるモノ・サービスの売買だけでなく、スポーツ文化を産み出す経済活動全体を指す。
スポーツ用品産業では機能的価値と情緒的価値の両方が重要。
スポーツ施設の管理運営には様々な方式があり、それぞれに課題がある。
スポーツ興行における権利ビジネスは多岐にわたる。
スポーツの価値は様々な指標で測られるが、金銭だけでは測りきれない側面もある。
アマチュアスポーツや地域イベントも経済活動として展開されており、産業化せざるを得ない状況にある。
受益者負担原則はスポーツ文化の享受にも関連する考え方。
引用箇所
「私たちが皆様にお届けしたいと思っているキーワードは，「スポーツの1造業化」です．」
「スポーツ産業とは何なのか．本内では「スポーツ文化をi蛍...」」
「スポーツは人々の心身を盟かにし，生活に潤いと喜びをもたらします．」
「すべて のスポーツは産業化せざるを得ない」