幕末女性の生活 日記に見るリアルな日常 史料で読む庶民の暮らし

村上紀夫(著者)

• 販売会社／発売会社: 創元社
• 発売年月日: 2025/03/17
• JAN: 9784422201849

商品レビュー

2025/07/14

著者が述べているように、男性の日記の「業務日記」とは違い「女性の日記には、しばしば日用雑貨の貸し借りや小さな贈答まで詳しく書かれているのが面白い」。そして驚かされるのが、その内容だ。様々な食べ物、近所付き合い(隣の奥さんの嫌がらせも！)、金融相場、社会面(坂本龍馬暗殺まで書き留められている！)。情報網の発達にも驚くが、政治や経済のトピックにまで当時の女性が興味を持っていたとは。日記を書くということができる人たちだということもあるが、すごく身近に感じられた。日記の記述だけではなく、もっと話を縦横に広げてほしかった。

2025/05/30

江戸時代、幕末を生きた、庶民といえる女性４人の日記を取り上げ、当時の日常生活に迫る。
教科書等における男性中心の政治や事件中心の｢歴史｣とはまた違った、地に足の着いた歴史の断片が明らかにされていて、とても面白かった。
数え年による年齢計算だった江戸時代でも誕生日を祝っていたなどの知られざる事実もあって興味深かったし、著者が強調する、史料を読み込む面白さも感じた。
親類・近所も交え年中行事をとても丁寧にこなすといった今とは異なることや、親としての子どもに対する思いといった今とも共通することの両方があるなと感じながら、取り上げられた４人の女性の人生に思いを馳せた。

2025/04/12

年中行事と季節の風習

正月や節分などの行事は家族・近所との重要な交流機会
「年越しの準備は家族に任せて、のんびり火鉢にあたり、『何事も知らず』」
雛祭りや端午の節句など子どもの成長を祝う行事の詳細な記録
金魚飼育ブームや七夕など当時特有の風習

近所付き合いと人間関係

贈り物の交換や祭りを通じた密接な交流
「隣のご隠居様へも赤飯をさし上げた」
隣人とのいさかいや噂話のトラブルも記録
日常的な貸し借りや金銭のやり取り

女性の役割と日常生活

家事・育児が中心だが裁縫などの内職も
「伏見氏から頼まれたさらし木綿の絞りを、今日から絞り始めた」
出産や子育ての喜びと苦労の記録
女性の病気と治療法

社会情勢と歴史的事件

大塩平八郎の乱やペリー来航など歴史的出来事の影響
「公方様（将軍）が六月二十二日に御逝去されたとのことだ。しかしまだ正式な発表はない」
飢饉や物価高騰による生活苦
地震や火事などの災害体験

病気と医療事情

天然痘などの感染症への恐れと対処
「疱瘡神は赤色が苦手で…」という民間信仰
さまざまな民間療法の記録
「小便が出ない時には、ナメクジを酢で溶いてヘソの下に貼れば良い」

死と弔い、家族の変化

家族の死と悲しみ、弔いの儀式
「太郎は激しく苦しみ、それもむなしく、ついに午前九時頃にこの世を去った」
婿養子の迎え入れなど家族形成の記録
結納や婚礼の様子