再現！世界の軍隊グルメ 戦士の食卓(2)

水梨由佳, 白石光

• 販売会社／発売会社: 大日本絵画
• 発売年月日: 2025/03/11
• JAN: 9784499234221

商品レビュー

2025/04/06

食は文化と歴史を映す鏡:
本書は、各国の軍隊食を紹介することで、その土地の食文化や歴史的背景を浮き彫りにしています。例えば、フィンランド軍の素朴な肉スープとコーヒーは、「冬戦争」における兵士たちの士気を高める「スオミの味」として紹介されています。コーヒーは心身の健康を保つ飲み物として古くから習慣として根付いており、労働者の権利としてコーヒー休憩が法的に定められていることにも触れられています。
フランスのチーズは、多様な国土と自然環境が育んだ1000種以上が存在し、「一つの村に一つのチーズ」と言われるほど地域に根付いた食文化であることが紹介されています。チーズの製法がローマ軍の駐留によってヨーロッパ各地に伝わったという歴史的背景も解説されています。
戦時下の食の重要性:
戦時下においては、食は単なる栄養補給の手段ではなく、兵士の士気維持、故郷への想いを繋ぐもの、そして生きる希望となる重要な要素として描かれています。
ペリリュー島で戦うアメリカ兵にLSTから届けられたハムサンドは、「その味のなんと爽やかで新鮮なこと」と描写されており、厳しい戦況の中での束の間の安らぎを与えたことが伺えます。
ロシア戦線に出征する兵士のために恋人が焼くフリッタータは、二人の幸せなひとときを象徴する食事として描かれています。「アントニオが焼いたフリッタータは、いわばイタリア風オムレツとも呼ばれることが多い」とあり、シンプルな料理ながらも深い愛情が込められています。
軍隊食の変遷と工夫:
本書では、各国の軍隊が、戦況や補給状況に応じて様々な工夫を凝らした食事を提供していたことが紹介されています。
ドイツ海軍のUボートでは、長期の哨戒航海に備え、新鮮な食材、保存食、缶詰などが積み込まれました。しかし、長期化により食糧不足に陥ることもあり、限られた食材を有効活用するための工夫が見られます。
第二次世界大戦末期の日本においては、食糧不足が深刻化し、配給制が導入されました。都市部では家庭菜園や野草の食用が奨励され、「食べ方にはいろいろあります」としてスベリヒユ、シロツメクサ、ツユクサなどの野草の調理法が紹介されています。
食を通して描かれる人間ドラマ:
本書は、単に料理のレシピや歴史を紹介するだけでなく、食にまつわる人々の感情や物語を描き出しています。
映画「サハラ戦車隊」に登場するフランス兵“フレンチー”・ルルーが故郷のチーズを懐かしむシーンを通して、戦時下における故郷への強い想いが伝わってきます。「俺の村のチーズは世界一だ」。
日本軍の捕虜となったアメリカ兵が切望したニューイングランド・クラムチャウダーは、「まさにアメリカの食文化史に刻まれる、アメリカを代表する料理といえる」と評されており、故郷の味への渇望が描かれています。
レシピの紹介と再現へのこだわり:
本書では、紹介された料理のレシピが詳細に記載されており、読者が実際に調理して軍隊食を体験できるようになっています。
著者は、再現にあたり、可能な限り当時の食材や調理法を忠実に守ろうとしていますが、時代や地域によって詳細が不明な場合や、現代では入手困難な食材もあるため、その点については理解を求めています。「残念ながら、時を経た料理の100%再現というのはあり得ません。この点については、なにとぞご容赦くださいますようお願い申し上げます。」

特筆すべき点:
本書は、単なる軍隊の食事の紹介に留まらず、食文化、歴史、人々の感情といった多角的な視点から「食」を描いている点が魅力です。
豊富な映画作品や文献からの引用を通して、当時の状況や人々の想いが生き生きと伝わってきます。
詳細なレシピが付されており、歴史的な料理を実際に作って体験できるという点で、読者にとって Engaging な内容となっています。