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静かな基隆港
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静かな基隆港
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商品レビュー
3.5
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台湾の基隆港(キールン)の自殺率が高止まりしている原因を探るため、心理カウンセラーである著者が苦力として働いていた男達から聞き取りをしたエスノグラフィー。基隆のことは知らなくても、私達のように資本主義社会で生きている者の人生をコンパクトにモデル化したような一冊なので読む価値がある...
台湾の基隆港(キールン)の自殺率が高止まりしている原因を探るため、心理カウンセラーである著者が苦力として働いていた男達から聞き取りをしたエスノグラフィー。基隆のことは知らなくても、私達のように資本主義社会で生きている者の人生をコンパクトにモデル化したような一冊なので読む価値があると思う。 基隆は、グローバル市場に接続されて一時は栄華を極めた。いくらでも仕事はあり、稼げた。男達は呼ばれればすぐに出かけられるよう現場近くの待合室におり、仲間たちと茶屋(キャバクラやスナック)に出かけて誰が奢るかで喧嘩になったりした。そこではうまく立ち回り、甲斐性があることが男らしいこととされ、「ガウ」(できるやつ)であることを重視する価値観が根付いていた。 しかし、グローバル市場はより安い労働力を見つけて基隆を切断し、台湾政府も男達を守ることなく民間委託し、労働者はバラバラに切り離され、仕事にありつけなくなった男は経済的社会的にも底辺として扱われ、家族からもお荷物として扱われ、何より原因を自分自身の能力のせい、「ガウ」でないことのせいと考えてしまうため、救いがない。 もともとそこで働いていた男達が観光地化によって排除されること、仕事のために家を空けていたら(確かに調子に乗っていた時期があったにせよ)家に居場所がなくなって定年退職後のお父さんみたいになっていること、外国資本が無責任にお金を投入し、稼げなくなるといなくなること、その渦中にいた男達の人生がめちゃくちゃになること、昔は良かったと笑みがもれてしまうおじさん達のこと、全く他人事とは思えない。明日は我が身である。
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台湾の基隆港はかつて貿易港として栄えたが、荷役がコンテナとクレーンに変わり、さらには近くの港に貨物の取り扱いを奪われ、現在は観光にシフトした。 かつての荷役花盛りだった時代の栄華に取り残された人がいる。宵越しの金は持たないという江戸っ子みたいに稼いだ金をじゃんじゃん使っていた、そ...
台湾の基隆港はかつて貿易港として栄えたが、荷役がコンテナとクレーンに変わり、さらには近くの港に貨物の取り扱いを奪われ、現在は観光にシフトした。 かつての荷役花盛りだった時代の栄華に取り残された人がいる。宵越しの金は持たないという江戸っ子みたいに稼いだ金をじゃんじゃん使っていた、それでも稼ごうと思えばいくらでも稼げた時代… 本書はかつての繁栄と現在のギャップに悩む人に着目しているわけだが、時代の変遷は当たり前だし、急に変わったわけではない、徐々に移行していった。それに無関心だった人がいつの間にか、という感覚で沈んだ気分になっている。というようなことが感じられる本。 読了40分
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