読書と暴動 プッシー・ライオットのアクティビズム入門

ナージャ・トロコンニコワ(著者), 野中モモ(訳者)

• 販売会社／発売会社: ソウスウィートパブリッシング
• 発売年月日: 2024/04/30
• JAN: 9784991221149

商品レビュー

2024/10/27

政治的フェミニストパンクバンド、プッシー・ライオットの創立メンバーの1人が著者。彼女の活動の経緯を踏まえた構成になっている。最初の方では歌詞の引用などで、パンクロック特有の汚い言葉が並んでいて、読みにくいなぁと思っていた。なんでパンクロックという手段を選んだのだろう？アートでも、もっと穏便なものがあったのにとも思った。後半になってくると、彼女の思想がはっきり示されて、読みやすくなってきた。最後はフェミニズムについての説明。女性だけのためのものではないという説明はわかりやすく、現在のフェミニズム運動がかかえる問題についての回答になっているんじゃないかとも思う。

2024/08/01

「”プッシー・ライオット”って何の集団？」
この問いから本書の拝読が始まった。先日読んだ『2022年のモスクワで、反戦を訴える』でもプッシー・ライオットが出てきたが、「プーチン政権に仇なすレジスタンス集団」位にしか捉えていなかった。

その見立ては間違いではなかったが、実態はもっと過激だった。
プッシー・ライオットとはバンド名で、ジャンルはパンク。音楽のテーマは政権の批判やフェミニズムなど多岐に渡っており、一言では位置付けが難しい。
人は傷つけず、武器や爆弾の代わりに歌詞・パフォーマンスで政権に楯突く。刑務所の屋根や逮捕される契機となった正教会でのゲリラライブ等、無血とはいえ我々には真似できない行為ばかり。

ミュージックビデオも閲覧してみたがどれもメッセージ性が明快で、何を訴えているのかが一目瞭然である。女性の覆面集団が野原でプーチンの肖像画を焼き払うビデオなんかもあって、「何かに逆らうにはここまでの覚悟がないといけないのか」と戦慄した。
そういうこともあって、バンドを立ち上げたトロコンニコワ(著者)やメンバーは、現在世界中に亡命しており、ロシア国内では「最重要指名手配犯リスト」に掲載されているという。

「私は人の心を乱さないアートには興味がない。すごく正直に言えば、それをアートと呼ぶことすらしないだろう」

これまで読書に沢山心を救われてきたが、今回は格別だった。
国民の意向を無視してあさっての方向に進められる政治や外交、報道すべき内容を報道しないメディア…その全てに苛立っていた。
彼女のプーチン政権への憤りは我がそれとシンクロしていて、非常に胸がすく思いがした。今の体制に不満を持つ人ほど、あの劇薬てんこ盛りのディスりは心地よく、そのまま自身が抱くモヤモヤへと投げつけるに違いない。(大量摂取の刺激過多で、未だ頭がフラフラしている汗)

「この本のなかでも、私は自分の信念に基づいて行動する」

プロフィール写真もさることながら(インパクト大だけど笑)、何てカッコいいの…！「そっちがその気なら、こちらも遠慮なしに行かせてもらう」と言わんばかりの気迫だ。
劣悪な刑務所生活でも自尊心と笑顔をたたえつつ、幾度ものハンガーストライキで看守を屈服させた。「心理的に厳しい状況」の際には、すぐさま本を開いてきた。本書にも、彼女がこれまで読んできて敬愛する人々の言葉が数多く綴られている。
彼女もまた読書に救われてきたのかと思うと、少しは親近感が湧いた…かな？(あそこまで完璧に深掘りできないから、断言はしかねる笑)

「私たちの仕事は、権力者たちを怖がらせることです。［中略］権力者の良心に訴えるのは時間の無駄です。期待できません」

「アートと政治は切り離せない」とトロコンニコワは話す。
アートって才能ある人にしか植ってないものと考えがちだが、要はその人の行動理念そのものなのかなと、本書を読んで思った。芸術活動に限らず、その人にしか起こせないアクション全てがアートと呼べるのではないかと。
彼女たちがブッ放つアート砲を見上げながら、今日も自分の手元を模索する。

2024/07/04

文化労働者としてのアーティスト
アート＝現実をかたちづくるためのハンマー
命を賭する価値のある理想：包摂性・平和・正義・民主主義
戦争は秘密裏に始まるだろう
行動・言葉・ヒーロー
海賊になれ：国境なし　ディオゲネス
DIY：ジャンク・ポリティクス　レディ・シンプリシティ
喜びを取り戻せ：愛と笑い　ダダ　1968年
政府をびびらせろ
アート罪を犯せ
権力の乱用を見逃すな
抵抗性よ・団結せよ
刑務所からの脱出
オルタナティブを創造せよ
ビー・ア・（ウー）マン
希望は絶望から生まれる